未来を見る力 人口減少に負けない思考法 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569846866

作品紹介・あらすじ

必ず訪れる超人口減・高齢社会。ビジネスも自治体も、考え方を変えなければゆき詰まること必至。人口問題の専門家が打開の道を示す。

感想・レビュー・書評

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  • 少子高齢社会で人口減少に陥ってる日本にたいして、どういう社会にしていくべきかを語った本。
    現時点でも、地域によっては人口減少による影響をもろに受けている場所も多いということがよく分かった。例えば、富山県でショッピングモールを増床して飲食店を増やしたところ、アルバイト店員がなかなか集まらないのだとか。それこそ、時給1500円という銀座の時給より高い額を提示しても集まらなかったのだとか。今後は、こういう状況が日本全国に広がっていくとのこと。
    ただそれは、日本だけの問題ではなく、東南アジアや南米といった発展途上国でも出生率が下落傾向にあるので、世界的な問題になってくるのだとか。といっても、日本は世界と比べて急速に少子高齢の人口減少社会にあるということは変わらないわけだから、世界的にみてみると日本の動向は注目されてるのかもなと思う。
    何もしないと人口減少の日本は貧しくなっていくだけなので、この豊かさを維持するためにはこれまで以上に技術力を高めていく必要があるとのこと。日本では研究費は削減傾向にあると聞くけど、本当将来大丈夫なのかと思う。
    個人的には、少子高齢化というのはマクロな問題であって、ミクロ視点でみると案外解決できる場所もあるんじゃないかと思っている。例えば、この本にもあるように兵庫県の明石市なんかは少子化対策を試みて人口を増やすことに成功している。けど、これもこの本によれば短期的にはうまくいっても、長続きはしないとのこと。それこそ、子どもが成長して手を離れたらその土地に住むメリットは無くなるのだとか。そういわれてみたらそりゃそうだろうなとは思うけど、うまいこと解決できないものかなと思う。地方で働くデメリットとして通勤時間の長さに問題があるなら、テレワークを普及していくというのは一つだろうけど、そう簡単でもないだろうしなぁ…。
    なんだかんだで、この本にあるようなコンパクトシティ化というのは一番いい解決策なんだろうなと思った。点々と離れた場所に暮らすようになるよりは、ある程度まとまって暮らすようになるほうが、賑わいもあるだろうし。まあ、東京一極集中というのはそれはそれで問題がありそうだけど。

  • 日本の未来が不安だと思う若者に読んで欲しい。現状を把握するのによき本。これからどう生きよう?

  • ベストセラー「未来の年表」シリーズで、少子高齢化・人口減少に警鐘を鳴らし続けた著者が、人口減少に負けないための思考法という切り口による一冊。
    これまでのシリーズはすべて読んできましたが、これまでの著書とは違い、データ的な部分はおさえ、この避けられない人口減少に対する考え方を著者なりの視点で述べています。
    これまでの著書で、「戦略的に縮む」ことで豊かさを維持すると提言してきましたが、実際どのように手を付けていけばいいのか、分からないことも多かったという印象でした。著者は、本書の冒頭で、『皮肉な話ではあるが、コロナ禍は「人口減少を前提とした社会へのつくり替え」のためのラストチャンスとなるかもしれない。コロナ禍で露呈した課題の解決策の多くは、人口減少対策としても有効だからだ。』と述べており、コロナ禍の経験を活かすことが、これまで著者が指摘してきた内容と重なって読むことができます。
    人口減少を高齢者・女性・外国人・AIの活用で乗り切るという楽観論を否定し、真の「未来を見る力」を身に付けるために、本書の提言を心に留めておく必要があると感じます。


    ▼皮肉な話ではあるが、コロナ禍は「人口減少を前提とした社会へのつくり替え」のためのラストチャンスとなるかもしれない。コロナ禍で露呈した課題の解決策の多くは、人口減少対策としても有効だからだ。
    ▼人口減少に負けない思考法からすれば。高齢社会にとって価格が安いということだけがセールスポイントになるとは限らないということになる。むしろ、値段としては大型量販店やネット通販で買うより高くついても、融通が利き、分かりやすく説明し丁寧に接客してくれる街の個人商店などのほうが、長くその製品を使い、アフターケアまでトータルして考えると「安い買い物」になるということだ。そして何よりも、近くに専門家がいることが大きな安心感であり、アドバンテージなのである。
    ▼国土交通省「国土のグランドデザイン2050」で三大都市圏を除く地方において大学が立地する自治体の人口規模を調査
     17万5000人規模の自治体:80%の確率で大学が存在
     12万5000人規模の自治体:その半数にはがない
    →周辺自治体の人口が12万5000人を割り込むと、学生を集めきれなくなり大学が存続し得なくなるということ
    ▼「ガラパゴス化」の例は、「良いモノをつくれば売れる」という真摯な姿勢が、オーバースペックや高コスト構造を助長し空回りした典型例でもあった。独自性にこだわればこだわるほど、自己変革をも難しくするという副作用も抱え込むことになる。もっとマーケットに耳を傾けてベストプラクティスを目指し、世界標準への意識を高めることの必要性をわれわれに教えてくれている。
    ▼多くの日本企業は国内マーケットを取り込めば十分に成長できていた
     同質的な社会では価値観に大きな差がつきにくい。つくり手が良いと考えるものは、たいていは買い手にとっても良いものであった
    ▼ひたすら欧米企業のまねをし、コストを落としてさえいれば日本製品はそのまま世界で売れていた
    ▼自治体間の人口の綱引きは、次回の選挙戦に向けて成果をアピールしたい政治家たちにとっては重要なことかもしれないが、日本社会全体で捉えたならば“勝者”なき、不毛の戦いなのである。産業面を含めて日本中が相互補完関係にある。一つの自治体だけが拡大発展していくということはあり得ない。
    ▼日本全体の人口が減少していく「国難」を前にして、個々の自治体が勝利なき戦いを繰り返すときではない。人口減少に負けない思考法からすると、定住人口の増加を追いかけるのではなく、それに使うエネルギーをコンパクトでスマートな街づくりへと振り分けるべきだ。そのほうが、中長期的に考えれば地域の存続可能性を高めることになる。
    ▼子供の数が少なくなればなるほど、個々の適性や希望を踏まえて国を挙げてバックアップしていくという視点が重要である。もっと分かりやすい言葉を使うならば、エリート教育だ。日本の将来を背負って立つ優秀な人材を見出し、育成していくのである。
    ▼私は人口減少がもたらす変化に対応するための「しなやかさ」を身に付けるためにはエンパシー(empathy)と呼ばれる力が極めて重要になると考える。エンパシーには日本語にピタリとはまる訳語がなく、聞きなれない言葉だが、シンパシー(sympathy)と似ている。ただその意味は少々異なっていて、シンパシーが「自分は違う立ち位置にいて、相手に同情する」ことを指すのに対し、エンパシーは「自分も相手の立場に立って、気持ちを分かち合う」ことを意味する。
    ▼「未来を見る力なんて、誰にも身に付くようなものではない」と思う人も少なくないだろう。だが、そう難しく捉えることはない。ポイントを二つに絞るならば、一つは“常識”を疑うことだ。いままで“常識”と思い込んできたことが、普遍的で絶対のことなのか、そうとは言い切れないことなのかを考える癖をつけることである。もう一つ、小さな変化を見つけ出し、その要因を少子高齢化や人口減少にあてはめて説明してみることだ。こうした発想をトレーニングのように積み重ねているうちに、自ずと「人口減少に負けない思考法」が定着するだろう。



    <目次>
    はじめに
    第1章 令和の時代はどうなるかーイオンやアマゾンが使えなくなる日
    第2章 こんな考え方はもはや通用しない
    第3章 マーケットの未来を見る力
    第4章 地域の未来を見る力
    第5章 コロナ後を見る力ー「変化の時代」というチャンス
    むすびにかえて-自分の手で未来を変えよう

  • 超人口減少社会が加速していくのは確実な未来なのだ。本当に時間がない。戦略的に対処しないと不幸を生む。
    こんな日本に誰がしたと犯人探しをしてもしょうがない。
    我々世代にも責任はあると自覚している。当然に責任を放棄するつもりはない。
    それよりも、この状況を捉えて今後どうするかを検討する方が確実に前向きだということだ。
    ポジティブなマインドになれればよいが、本当にそこは一旦ここで立ち止まって考えたいところだ。
    本書では改めて数字を示し、警鐘を鳴らしている。
    さらに著者なりの対処方法の提案も示してくれている。
    私はすべての提案に賛成という訳ではないが、やはり数字という事実を見ながら多面的に検討し議論することこそが必要なのだろうと思った。
    同じように「戦略的な縮小」を謳っているもので、最近「資本主義の見直し」もテーマになっている。
    資本主義とは言わずもながだが、資本が投資され、利潤を生むことでさらに再投資され、永遠に拡大し続ける中で、格差はドンドンと開いていくというもの。
    何十年も前から「いつか限界が来る」を言われているにも関わらず、未だに代替できる案が出ずにそのままになっているという課題だ。
    ここに来て「新しい資本主義の形を目指す必要があるのではないか?」という話が出てきた。
    文脈的には「持続可能な社会にならないと意味がないだろう」という、価値観の転換を促す話である。
    結果的にたまたま「行き過ぎた拡大路線を見直し、戦略的に小さくいく」という話も含むことになっている。
    日本がこれから拡大路線でなく、戦略的な縮小を目指すことは、行き過ぎた資本主義を見直す点でも合致していると思う。
    そもそも人口数千万人しかいなかった江戸時代の日本は、優れたリサイクル社会で持続可能な社会だったはずだ。
    江戸時代の生活に戻れとは言わないが、もっと自然に優しく、人間同士も優しくなれる社会を目指すことは間違っていないと思う。
    日本の人口は減少し、1億人を切るのが2050年頃と言われている。
    その頃は相当に高齢者ばかりだと思うし、その時に自分自身も80歳という高齢者になっている。
    (迷惑かけずに元気でいたいものだ)
    それでも人口は1億人いる。
    ヨーロッパのそれぞれの国だって、今はドイツが最も多くて8千万人超という状況。
    2050年までには東南アジアとアフリカが人口爆発しているので、日本の人口は確かに相対的順位が下がる。
    しかし、それでも人口は1億人いるのだ。
    その時の世界情勢を考えながら、単純な縮小ということではなく、国内をどうやって効率化していくのかということだろう。
    「拡大」については、やっぱりこれだけの人口増がアジアとアフリカであるのだから、やっぱりそこは取り込んでいきたい。
    単純な縮小だけでなく、世界の中でのポジションをどう獲るかは真剣に考えていきたいところだ。
    (本書では世界的ポジショニングについてはほとんど言及していない)
    日本の生き残る道はあると思うのだ。
    そうでなければ座して死を待つのみとなるが、そんなことは考えられない。
    我々の世代が責任を持って次の世代にバトンを渡していかなければならない。
    その為には大胆な発想で生き残りを図るということだ。
    今までのやり方を否定することもあるかもしれない。
    そういう意味で大きな血が流れるような改革が必要なのかもしれない。
    緩やかなソフトランディングをしている余裕はないと思っている。
    我々世代がどれだけの覚悟を持って実行できるかが大事だと思う。
    素敵な日本という国を後世に残していきたいと思っている。
    (2022/8/24)

  • 上司から貸してもらって読みました。
    ハウスメーカー社員としての立場から読むと、安易に郊外の分譲地を売るのってどうなんだろうな…と感じました。

  • AIが労働人口減少の解決策として見込めない事について書かれた章では、正直デジタル領域のビジネスについての知識があまりに不足してると思う。

    また全体的に「人口減少」に対する問題意識が肥大化しすぎてて、全ての事象に対して、考え方にバイアスが掛かっているように感じた。

  • 人口減少により起きる社会変化を書きながら、
    企業はどのような対応が求められるかという話をしていたが、
    中盤で話されているー少量生産少量消費による高付加価値な製品づくりの考えは、
    一部の業界では当てはまるが、日本のすべての業界で目指しましょうーというのは違和感を感じた。

    また、前作の未来の年表と比べては新しい情報も少なかった印象。

  • <目次>
    第1章  令和の時代はどうなるか~イオンやアマゾンが仕えなくなる日
    第2章  こんな考え方はもはや通用しない
    第3章  マーケットの未来を見る力
    第4章  地域の未来を見る力
    第5章  コロナ後を見る力

    <内容>
    『未来の年表』を著者の、データ分析から得られた知見を基に、「未来への立ち向かう思考」を示した本。著者も言うとおり、「人口減少に負けない思考法」をいかに持つか。過去に頼らず、過去にすがらず、年寄りの成功体験ではなく、柔らかい頭で、自分中心ではなく、高齢者・若者・各地域・それぞれを視野に入れながら、「縮小する日本」を正しくランディングさせるプランニングの例が多く載せられている。
    自分も高齢者に足を踏み入れつつある。しっかりと考えていきたい。

  • スマートなコンパクトシティ

  • 高度経済成長を遂げ、経済大国と呼ばれた日本は過去の話。現代の日本人の多くは、その余韻に未だに浸っており、今後急落する崖っぷちに立っていることに気づいていない。日本の人口減少幅は年々確実に大きくなり、2050年には1億人を下回ることは間違いない。将来に危機感を覚え、これまでの考え方をアップデートし、これから確実に訪れる状況に対し、柔軟なアイデアを持ち、自分に何ができるのかを真剣に考える時が来ている。

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著者プロフィール

1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚労省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。2014年の「ファイザー医学記事賞」大賞をはじめ受賞多数。主な著書にはベストセラーの『未来の年表』『未来の年表2』『未来の地図帳』『未来のドリル』(いずれも講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。


「2022年 『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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