書店員と二つの罪

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569848600

感想・レビュー・書評

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  • これはなかなかに読むのがつらかったけど、作者の碧野さんも苦しみながら書いたんじゃないのかな、と。
    書店を舞台にした小説にこんなにえぐられるとは。

    中学生が起こした猟奇的殺人事件。罪を償って出所したあと加害者が書いた告白本が出版され…って、実際のあの事件がモチーフなのだけど、その扱いについて各書店で対応が分かれたことを思い出す。どんな本であっても買いたい人がいる限り店に置くべきだ、それを書店が決めるのは間違いだ、という考えもある。それを決めるのは書店ではない、という。
    でも、置きたくない本というのは、実際に、ある。じゃぁ、置くべきではないと思われる本、を誰がどう決めるのか。置いておけば売れる本を、「正義」の名のもとに下げてしまっていいものなのか、読者の「読む権利」を奪っていいのか。
    書店を知り尽くしている碧野圭は様々な問いと、そして現実を突きつける。

    ストーリーとしては、かつて共犯といううわさをたてられた書店員の苦悩と、告白本をめぐる謎…というミステリ。

    ヘイト本の取り扱い方、書店員が投票で選ぶ文学賞など、本屋好きには興味深い話題盛りだくさんの一冊。

  • 17年前に起こった「名古屋東部女子中学生殺人事件」
    その犯人「死我羅鬼潔」が告白本を出版した。 
    書店契約社員である主人公は、その犯人が中学時代の同級生で隣人であったことから、『共犯者』の疑いをかけられた過去がある。
    17年間封印していた記憶が甦る。どうして、彼は、彼女を標的にし死に至らしめたのか? 
    結局のところ、登場人物で幸せになるひとは一人もいない。いわゆる「イヤミス」
    「イヤミス」好きにはおススメ

  • 内容は、凄惨な少年犯罪を題材としたストーリーだけど、とても面白い真面目な社会派ミステリーだった。主人公の正和さんの人柄が自然体だけど丁寧できちんとした人だからかな。書店員さんの苦悩とか書店で働く面白さとかも垣間見えて興味深かった。私も高校生の時に書店でアルバイトした経験があるけど、その時は気付かなかった書店員からの目線とか面白かった。
    ラストは、必ずしも正しいとは言えない終わり方だったけど、母親の立場からみたら私もこの選択に心動かされるかもしれないと思った。

  • 現実の、特定の事件をだれでもわかるってくらいおもいっきり題材にしてて、あの結末。

    これは、本の中で書店員であり事件の関係者でもある主人公が嫌悪したやりくちとは違うんだろうか。
    少年が犯人の猟奇的な殺人事件、といえば同じ事件を連想するだろうけど、あそこまで寄せる意味ってあるのかな。

    本屋とか図書館が舞台になる話ってすきなのでその一環。てかんじに手にとってしまったんだけど、読まなくてもよかったな。
    ある特定の事件をだれでもわかるように題材にした上で、犯人がその弟と幼馴染、更には過去の殺人事件のきっかけになったのも幼馴染、被害者が被害者になった遠因に“女子間のマウンティング”、お金目当てで(そのお金が必要な理由はべつにあそぶ金欲しさじゃないのよ、というのが用意はされてるけど)事件の関係者の消息を雑誌記者に売るのは被害者の親友とされていた女性。
    とか、なにそれどうなのよ、という要素が満載なだけでなく、お話の都合上発覚しない犯罪が発覚しなさ過ぎるだろ、とか、取材ノートが主人公の手に渡るいきさつがそんなわけあるか、とか、そういうのもある。

  • かつて起こった未成年による猟奇殺人事件
    遺体発見時の状況
    長い時を経て出版された犯人による告白本

    実際に起こった事件を想起させる設定に、事件当時の報道やその後の経緯を思い出しながら読んだ。

    プロローグに登場した2人は誰なのか。
    主人公が覚えていないと言う事件当時の記憶。
    元少年の現在。
    タイトルにある「2つの罪」とは。

    間延びすることなくスピード感をもって展開していき、真相はすべて明らかにされる。

    それを踏まえてあの結末をどう捉えるのか。
    罰とは何か、贖罪とは何か。

    書店は世相を映す鏡。
    書店の使命と現実、本への愛情も感じられた。

  • なんとなく、誰が関わってくるのかの予想はついたけど、どんなふうに関わり、どう着地するのか気になって、一気に読んだ。
    現実の事件をモチーフにしていることは明らかだったので、この結末はこれでよいの?というモヤモヤはある。
    書店員だったり、司書だったりが登場するのは、本好きは惹かれるポイント。

  • どうしても書店ガールの印象が強いから、猟奇的な殺人シーンに違和感だった。
    途中からは書店の表裏の色々な事情のあたりはいつもの感じでホッとした。
    最終的にちゃんと明らかにされて、スッキリした読後だった。

  • 書店員の正和は、いつもの通り書店のバックヤードで、発送された段ボールの中から本を取り出していた。その中に異様な本が。真っ黒の表紙に赤文字という本は、17年前に起きた凄惨な事件の告白本だった。正和は、その事件の被害者の同級生でもあり、加害者の友人だった。
    なぜ、今になって?さらにその事件を追っていた雑誌記者が再び現れた。事件に隠された真実や告白本の違和感など和すかけていた記憶がまた呼び起こされます。

    凶悪な事件によって、人生が狂わされていく登場人物たちの心理描写が重めで濃厚でした。現実でも起きた似たような事件がありましたが、衝撃的だったことを記憶しています。
    事件は終わったとしても、人々の記憶はいまだに衝撃的であればあるほど焼きついて離れません。事件の関係者なら、なおさらであり、その登場人物たちの苦悩が印象深かったです。普段とは見せない「顔」を曝け出しているので、その事件の凄まじさを感じました。

    ミステリーも楽しめましたが、書店員ならではの裏事情や本の情報を散りばめられてました。「書店ガール」という作品を手がけているということもあり、「本」に関する情報が詳細に書かれていて、その辺も面白かったです。

    告白本を書いたことから、更なる悲劇が待ち受けるのですが、辛い現実だなと思わずにはいられませんでした。感情がむき出しになる場面では、特に辛かったですが、物語に引き込まれました。

    最後は賛否両論なのでは?と思うくらい、複雑な気持ちになりました。一つの事件が招く多くの代償。改めて犯罪の恐ろしさを感じました。

    碧野さんというと、他の作品からイメージするに比較的明るいのかなと思ったのですが、この作品は暗めでしたが、その点でも衝撃でした。

  • 神戸連続児童殺傷事件を下敷きに、書店員である主人公・正和が、幼馴染の起こした凶悪殺人事件に17年ぶりに個人としても書店員としても振り回される話。
    面白かったけど途中急に右翼左翼のヘイト本がクローズアップされたのはなんだったんだ…
    職場が新大久保に近いから嫌韓本を見て傷つく在日韓国人がって話も、正和結局最後は名古屋に帰ってるから投げっぱなしだし…

    本屋大賞の牧野といい、事件のせいで筆を置かざるを得なくなった天神我聞といい、登場する作家はふたりとも矜持があってかっこよかった。
    バイトの本橋の「本屋は文化の最前線」って話も本屋好きとしては深くうなずけて、わかるよ本橋ー!と語り合いたい気分。書店員要素はこのへんかな…

    で、本題の事件は…うーん…
    正和が一生気に病むのも仕方ないけど罪に問われるようなことではなくて、当時適切なカウンセリングにかかれていたらよかったのかなあ。
    それにしても、共犯扱いされたせいで(事実知らないうちに事件に協力させられていた)地元にいられなくなった息子に対して「東京に逃げた」はなくない!?  そりゃ一家全員大変だっただろうけど、加害者被害者両方と接点があって事件関係者扱いされたら地元にはいられないでしょ…
    とんでもない事件に巻き込まれてみんな正常な判断能力を失ってるのもわかるから、弟や母親の最後の選択については何も言わんけど、東京に逃げた発言だけは「そりゃないだろ!」になってしまった。

  • 私が知っている名古屋弁だ。中山七里の要介護探偵は、どうも名古屋弁というより岐阜弁ぽくてモヤモヤしたから、少しほっとしたというか。内容には関係無いけれど、地元の方言って気になっちゃうよね。
    十数年前実際に起こったあの事件は、世間が大騒ぎになったからよく覚えている。本が出たときも話題になったし(本屋さんに行って、その本が並んでいるとガッカリしたものだ)、最近では、裁判記録が廃棄されたことでまた少し話題になった。
    小説なので、遺体の扱いがよりエグくなっている。結局、何故事件を起こしたのか、本質が語られる事もないまま終わってしまっていたこと、主人公がこの先救われる、というか幸せになる予感がイマイチないことで、モヤモヤが残った。取材ノートを入手するくだりは、そんなことある? いくらなんでも偶然が重なり過ぎてない? とは思ったけれど、これがないと話が進まないので致し方なし。
    書店員さんの話は面白いな。作家のフィクション論も興味深かった。(2023-05-10)(2023-06-03L)

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著者プロフィール

愛知県生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。フリーライター、出版社勤務を経て、2006年『辞めない理由』で作家デビュー。大人気シリーズ作品「書店ガール」は2014年度の静岡書店大賞「映像化したい文庫部門」を受賞し、翌年「戦う!書店ガール」としてテレビドラマ化され、2016年度吉川英治文庫賞にもノミネートされた。他の著作に「銀盤のトレース」シリーズ、「菜の花食堂のささやかな事件簿」シリーズ、『スケートボーイズ』『1939年のアロハシャツ』『書店員と二つの罪』『駒子さんは出世なんてしたくなかった』『跳べ、栄光のクワド』などがある。

碧野圭の作品

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