- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569854038
作品紹介・あらすじ
長崎で日本初の洋食屋を始めた草野丈吉と妻ゆきは大阪へ進出し「自由亭」を開店する。夫婦で夢を?み取っていく姿を描く感動の物語。
感想・レビュー・書評
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日本初の洋食屋「自由亭」の誕生物語。
料理人である草野丈吉の妻ユキの目線で描かれているところが、より物語に入りやすくさせているように感じた。
明治時代の長崎、土佐、大阪の著名人もたくさん登場して、激動の時代の歴史がリアルに感じられる。
しかし、この時代のユキのような生き方は、とてもじゃないけど出来そうにないなと思った。
色んな意味でとても強い女性!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読書備忘録764号。
★★★。
幕末から維新、明治にかけて、鎖国状態から一気に世界との外交に晒された日本。不平等条約のオンパレード。その外交を食で支えた男がいた。草野丈吉。
日本初の洋食屋「自由亭」を長崎で開き、大阪に拠点を移し、レストラン、ホテルを開業し大きくしていった男。
それを支えた偉人達。陸奥宗光、五代友厚、後藤象二郎、岩崎弥太郎。
特にうちの企業グループの礎を作った弥太郎さま。
土佐藩出身。国に期待し、裏切られ、だったら企業で世の中を動かしてやろう。どんだけ凄いの!あなた様は!息遣いが聞こえてくるような弥太郎さんを感じられたのは凄く嬉しかった。
なので、どんだけワクワク感満点で、どんな壮大な大河ドラマを楽しませてくれるのか、と思いきや・・・。
物語は丈吉の妻ゆきの視点で描かれる。
やはりまかてさんはそっちに行ってしまうか。
丈吉の強い意志を感じたかった。ゆきはすごいですよ。でもやはり、どこまでも受け身の世界での凄さ。「夫婦で挑んだ」と書かれているが挑んだのは丈吉。全然面白いです。ただ、500pの大作。山崎豊子を期待してしまった。
例えば、ゆきの視点では丈吉は一度外出すると何ヶ月も帰ってこない・・・。
丈吉がその何ヶ月なにをしているのか?日本国の文明開化の為に。命を削って。それが知りたい!その物語が!まあ、個人的にはそっちを読みたかったです。
はい。繰り返します。間違いなく面白かったです。 -
幕末に西洋料理屋を開いた夫婦の物語。
結婚から始まり、開店、出産、子育て、義両親との死別、様々な人どの出会い等、時代に翻弄されながら力強く生きていく女性ゆきの一生。
長崎出身のわたしには馴染み深い言葉遣いが楽しかった。
また、聞き覚えのある錚々たる登場人物との出会い、別れもぐっとくるものがありました。
妾三人とのやりとりも面白かった。
なんといっても、ゆきがいいキャラで応援したくなる。 -
本格的な西洋料理店を起こした夫婦のお話。
貧しい家に生まれたふたり。
妻は幼い頃に女中奉公に出され。
夫は酒に溺れた父親の代わりに少年の頃より、家計を支えた。
外国船にのったり、下働きから文字も読めなかったが蘭語、英語、支那語を使えるようになり、料理を覚える。
働き者で工夫をたやさない丈吉は、美味しい料理人となる。
激動の幕末から明治の時代を、歴史の教科書に登場するような人々が客となり、友人となる。
一代期。どちらかというと丈吉の妻である「おおおんな」のゆきが主人公。 -
<浪>
ひょんなことから日経電子版に載っていた本書紹介記事ののっけ部分だけ読んだ。そこには この本発刊にあたってニッケイからのインタビューに応える朝井まかての「一般に近い人の目で激動の明治時代をとらえたかった」という一言が載っていた。
のっけの部分でこの物語の中心をなした西洋料理店の名は『良林亭』という。「りょうりんてい」と読む。 僕は りょうけんです。あ関係ないな。すまぬ。
それで 実は僕の大好きな音楽デュオGr.に『林亭』というのがあるんだ。こっちは「はやしてい」と読む。いやなに こちらは料理屋ではなくプロ(いやセミプロかな?)の音楽デュオである。主にアングラ系の楽曲を演奏するが フォークだ という意見もある。メンバーは軽音楽系評論家の大江田信さんと,南こうせつや『青葉城恋歌』で有名な仙台在住 さとう宗幸はん のバックミュージシャン:佐久間順平さんである。
『林亭』のお二人はもうすぐ70歳。 そしてこの二人の演奏する楽曲が これがまたいいんだ。 僕はもう手放しで大好き。で,その話 この本と何の関係があるんだ!と今思った そこのお方。はい,全く関係ありません。『良林亭』と『林亭』が偶然似た言葉だったというだけです。僕の感想文はいつもこんなんもんなんです。すまんね,すまぬ。
さて本編。歴史上有名な史実を踏まえた時代感を描きながら物語を展開しているが故に,あまりに沢山の舞台設定が設けられている。 よって時に読者は(僕だけかも だが )混乱気味になる。 一気に読めてしまえばまあ大丈夫なのだろうが,これだけの長編大作となるとなかなかそうも行かず やにわにページを戻って確かめる頻度も増えてゆく。戻って読み返すのは今度は読むリズム感が損なわれてしまったり とこれまた悩ましい。
などと,ぶつぶつ虚弱読者の僕はモンクを言っているが,この本がとても為になる面白い作品である事は間違いない。 出来れば余裕を持った時間をこの本の為に特別に取って,なにも全部一気でなくても良いから まあ3~4回位にて読了したいものだったなぁ,と読み終わってから思った。あ,身の程わきまえぬ贅沢発言で すまぬ。 -
実在した日本最古の洋食屋・自由亭の主人・草野丈吉が主人公。
長崎の貧農に生まれ、子供時代に異人のボーイとなり、 洗濯係、コック見習いを経て若くしてオランダ総領事の専属料理人に昇進、その後、自由亭を起こした草野丈吉。維新後は自由亭を大阪に移し、外国人を中心にしたホテル経営に拡張し、京都・神戸などの各所に支店を展開するなど実業家としての才も発揮し、儲けだけでなく社会的貢献も果たして行く。その生涯を妻のゆきの視点で追いかけます。このゆきがなかなかです。鈍、叩いてもカンと響かず、一旦振動を吸収し、すこし遅れて思わぬ方向に吐き出す。そこが妙に可笑しい。
自由亭を訪れる多彩な人々、後藤象二郎・坂本龍馬・岩崎弥太郎・五代友厚・陸奥宗光。幕末の長崎、明治の大阪を舞台にするだけに、官よりも在野の偉人たちが多く登場します。そうした人物像や時代の流れも面白い。これを丈吉視点で描けば明治の時代そのものが主体の物語になったと思いますが、朝井さんが取ったのは妻の視点。この為に、時代はすりガラス越しに見る様な背景となり、あくまで主人公とその家族の姿を生き生きと描いた物語になっています。それはそれで良いと思います。
510頁、最初はやや冗長感を感じましたが(ちょっと無理に柔らかな笑いをとろうとする感じもある)途中からはグイグイと引っ張られました。そして最後に清々しいエンディング。良い作品でした。 -
幕末の長崎、明治の大阪を日本初の洋食屋を開いた夫婦目線(妻のゆき目線)で描いた時代小説。
幕末の長崎が舞台なだけあって、有名人が盛りだくさん。陸奥宗光、五代友厚、後藤象二郎、岩崎弥太郎、少しだけですが坂本竜馬。
この辺の歴史が好きならたまりません。
そして、明治になり?長崎から大阪に出てきて、五代友厚と関わったり、岩崎弥太郎であったり、陸奥宗光が利用する自由亭の明治の大阪の歴史が詰まっています。
M-1グランプリなどの漫才に「あれは漫才なのか?」と思うくらい、お決まりのボケとツッコミが好きで、新しいものをなかなか受け付けないように、大阪は保守的な人が多く、自由亭の苦労もそうですが、自由亭の女将さんである語り手のゆきからみても、大阪は大変そうで、五代友厚さんは苦労したんだなぁと思いました。
日本のためなら稼いだ以上に借金してまで大阪の礎を築きあげた五代友厚の凄さ、その五代友厚に感化されていたのか商人は利益だけを追求してはダメという考えのもと自由亭を運営していたゆきの亭主の草野丈吉、その他の歴史的な人物達。
幕末を乗り越えた志士達も皆、今では考えられないくらい早死していくのですが、皆濃い人生だなと改めて思いました。
想像の中での世界ですが、皆老後の不安とかそういう感じではなくて、貧しい人も裕福な人もただその日を一生懸命生きていたという感じが伝わってきました。
また、幕末からまだ150年くらいしか経過していない日本ですが、その150年くらい前は皆家を守ることばかりを考えて必死ですし、娘は家を守るための物扱い。親が決めた相手と結婚なんて当たり前みたいな世界で、今でも女性の地位がどうこう言ってるのに、なぜかその扱いがダメとか思わず、寧ろ皆生きるのに大変だったんだなぁと思うくらいこの時代の世界にどっぷりつかれました。
洋食屋の話なのでお腹が空く話かといえばそこまでご飯が美味しそうにみえる作品ではないと個人的には思いますが、もう今は存在しない自由亭に当時の大阪がどんなところなのか想像しながら、大阪のため、日本のために生きる日本人の姿に尊敬と憧れを抱きつつ、五代友厚という人物に興味を持った作品となりました。 -
江戸時代末期から明治時代、西洋食を提供し続けた自由亭の成り立ちから終わりまで。
草野丈吉という実在した料理人兼経営者とその妻の奮闘記。
有名な政治家なども登場して、大エンタテイメントを味わった感じ。
新時代を築くという意気込みが心地良かった。 -
流石朝井氏の作品は素晴らしい。江戸末期から明治大正へと生きた女性の生涯に感動する。それにしても当時の人々は短命であることよ、一歩間違えれば悲劇の物語になるところを淡々と語る技量は流石だ。余計な事だが最後に小生の祖父はこの時代にピッタリ重なる。