帝国ホテル建築物語 (PHP文芸文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569902685

作品紹介・あらすじ

帝国ホテル・ライト館開業100周年! 世界的建築家と現場との対立、難航する作業、天災……男たちの熱き闘いを描いた感動作。

感想・レビュー・書評

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  • 『帝国ホテル建築物語』
    帝国ホテル2代目本館の建築前、建築中、そして取り壊し、移設の物語です。また、同時に、それを支えた多くの人たちの物語でもあります。
    ーーーーーーーー
    【建築費】
    設計・施工費は当初130万円でした。しかし、最終的な設計・施工費は900万円となりました。 調達は、増資および銀行からの借り入れでした。いかに資金繰りが大変であったのか?がわかります。
    ーーーーーーーー
    【施工年月】
    1916年に帝国ホテルと設計者;フランク・ロイド・ライト氏で契約が締結されます。着工は1919年です。3年の月日が経過したのは、周辺用地の買収に時間を要したためです。そして、オープニングは1923年9月1日です。着工から4年もの月日が経過したのでした。オープニング当日には、関東大震災に見舞われるなどの災難も重なりました。
    ーーーーーーーー
    【竣工までの壁】
    1;用地買収
    まず、用地買収に時間を要します。施工した年代は大正です。したがって、江戸・明治時代から長く住み続ける政治家らとの調整に時間を要したのです。
    2;基礎工事
    日比谷界隈は江戸時代に埋め立てをした土地です。したがって地盤が弱いです。掘れば地下水が湧き出るという具合です。セメントの流し込みも困難な厳しい工事となりました。
    3;煉瓦
    設計者ライト氏は、デザインに加えて素材にもこだわります。その一つが煉瓦でした。煉瓦づくりを委託した職人が、技術はあるが、お金癖が悪い性質の人物でした。そのため、資金を提供してもなかなか「もの」が納品されない日々が続きました。
    4;設計と現場の軋轢
    当時の日本の建築技術は欧米と比較すると決して水準が高いとはいえませんでした。そのため、ライト氏の高い技術的要求に対して、現場の職人が疲弊してしまうことが重なりました。
    ーーーーーーーー
    【読み終えて】
    この小説は、帝国ホテル二代目本館の建築に関わった多くの人々の苦労や努力、思いや夢を描いています。ライト氏はもちろんのこと、帝国ホテルの支配人であった林愛作や、ライトの弟子であった遠藤新などの人物が印象的です。
    彼らは、理想と現実、経営陣と現場、政治と民間などの対立や葛藤に直面しながらも、自分の信念や使命感を貫きました。
    その結果、帝国ホテル二代目本館は、日本の近代化や文化の象徴として、長く人々に愛される建物となりました。
    しかし、時代の変化や経済の事情により、1976年に取り壊されることになりました。その後、一部が明治村に移設され、現在も見ることができます。この小説は、建築の物語とともに、人間の物語でもありました。

  • またもや素敵な作品に出会ってしまった。
    「帝国ホテル」にまつわる知られざる熱く壮大な物語。

    ホテル支配人、建築家、石工や瓦職人たち、焼き物師など、この建物に一体どれだけの人の想いが詰まっているんだろう…。
    長い年月をかけて完成した建築なので、去る者もいれば、意志を受け継ぐ者もいる。
    完成までの苦難の道のりを知ると、その重みを感じるし、奇跡にも思える偉業に心を動かされずにいられない。

    世界の多くの人を魅了したこれまでにない美しいホテル、感動をもたらした名建築。
    ついに完成したときは、もう感無量!!
    濃い読書時間を堪能しました。

    現在は、愛知県の博物館「明治村」に「帝国ホテル中央玄関」のみ様式保存されているようです。
    作品を思い出しながらスダレ煉瓦や彫刻などの細部まで、いつかこの目で是非見てみたいなぁ。

  • 植松三十里の帝国ホテル建築物語を読みました。
    帝国ホテルは建築界の3大巨匠のコルビュジェ、ミース、ライトのライトの作品です。
    建築家を目指す学生なら誰でも知っています。
    私も3大巨匠の中でもフランクロイドライトが好きです。
    その代表作の一つが帝国ホテルです。
    保存の話から始まり、建築の過程がどれほど大変だったかが描かれており面白かったです。
    大学の建築学科を卒業するとき、フランクロイドライトの事務所のタリアセンに行く話もあったので、余計親近感があります。
    一気に読んでしまいました。

  • 建物にはそれぞれの熱い想いや苦労がそこにある。

    帝国ホテルのライト館が建つまでの話。

    読んでいて、大正、昭和初期の話ですから物凄く大変だなというのが容易につく世界で、外国人に称賛されるため、国のためにこだわりにこだわり、工夫に工夫を重ねたホテルは物凄く大変だったんだろうなと思いました。


    そういう熱い想いで苦労して建てた建物もいつかは古くなって形が変わったり、壊されたりする。

    苦労を知らない私は建物の取り壊しやリニューアルのニュースを古くなったから当たり前のように聞いてますが、こういうのを読んでしまうと、あまり軽はずみなことも言えないなと思いました。

    古いものを新しく変えていくというのは当然といえば当然なのですが…

    と、帝国ホテルのライト館の建築過程を通じていつも何気なく見ている景色にある建物の見方も変わってしまう、そんな情熱と苦労に溢れた作品でした。

  • ライト館の建築から明治村へ移築されるまでに、これほど多くの人が関わり、長い年月を要したことに驚きました。
    日本人の技術の高さ、ライトの強い拘り、凄まじい労力の結晶を是非私もこの目で見てみたいし、諦めずに明治村への移築を実現してくれた方々に感謝をせずにいられません。
    もし最後までライトが指揮をとり完全なるライト館ができていたらと思うと悔しいですが、膨れ上がった総工費がとんでもなく莫大で、むしろよくもっと早くに解雇されなかったなと、、、。
    いくつもの困難を乗り越えながらもライト館が建築されたことも、それを明治村に移築されたことも、長い年月の中で途方に暮れて誰がいつ投げ出してもおかしくないのに実現に至ったのは、ひとえに日本人の心意気だと感じました。


  • ホテルや家の作り方、建築家、それぞれの職人たちについて初めて知る事ができた実話。これを読めば実際に帝国ホテルを見た時、感じられる事が大幅に変わると思う。
    初めて見に行きたいと思った。
    フランクロイドライト。

  • 帝国ホテルが百年以上に渡って果たしてきた役割。それに関わってきた大勢の人たちの思いが詰まっている一冊。その歴史は順風満帆とは言えず数々の苦渋だらけだったが、諦めないで支え続けた人たちにより今に至る。
    世界的建築家フランクロイドライトの設計で建てられたライト館の中央玄関だけが愛知県にある明治村に再建移築されている。
    今から彼此35年以上前に明治村に行っているので目にしているとは思うが、この本を読んだあとでまた行ってみたくなった。

  • 表紙とタイトルが素敵だったので一目惚れ購入しただけだったのに、想像を絶する内容だった。

    タイトルそのまま、帝国ホテルの建築物語でしたが、ライト館の完成までの様々な困難を乗り越えていく過程に、何度ももらい泣きする場面もありました。

    東京の地盤の悪さや、こだわりとクセのある建築家、各分野の職人さんも初めて尽くしの仕事で、読者のこちら側でさえ何年経っても完成しないホテルのことが心配になった。
    最後のほうは駆け足ぎみでしたが、その後のホテル存続問題もあり、とにかくお金のかかった魔物のような建物で、現在の価格だといくらになるんだろう?

    100年前にこのホテル建設に関わった人たちの熱い想いをたっぷりと感じました。

    良い本に出会えました。

  • ジャンルとしてはノンフィクション…なのかな。
    私は古い帝国ホテルを知らないのですが、是非一度は明治村に行ってその光の柱とやらを見てみたいなとおもいました。
    明治村の存在もつい最近知ったばかりなんですけれどもね…

    建築家の意向で総工事費がどんどん跳ね上がる、というくだりは痛々しいなぁと思いながら読みました。今も建材とか値段上がってますしね…

  • フランク・ロイド・ライトのこと、日本の建築の素晴らしさがよくわかった。
    建築に関心があるひとにはおすすめ

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著者プロフィール

静岡県生まれ。東京女子大学卒業。2003年『桑港にて』で歴史文学賞、09年『群青 日本海軍の礎を築いた男』で新田次郎文学賞、『彫残二人』で中山義秀賞。著書に『帝国ホテル建築物語』『万事オーライ』等。

「2023年 『羊子と玲 鴨居姉弟の光と影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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