夜行観覧車 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社 (2013年1月4日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575515527

感想・レビュー・書評

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  • 隣の芝生は・・・まさにそんな話。

  • みんながみんな、ギリギリのところで踏ん張って立っていて、だからきっかけがあれば一瞬で転がり落ちてしまう。どこの家庭で起こってもおかしくないんだろうな、と思うほどリアルだった。

    家こそが幸せの象徴ですべてだと思っている真弓。家は安らげる場所であってほしい事なかれ主義の啓介。子どもの失敗の責任はすべて親がとるものと思っている彩花。今でこそ落ち着いているが、根本的な解決には至っていないのだから、いつまた彩花と真弓が口論になるか分からない。

    彩花は、自分とは格が違うと思っていた高橋家の人たちも、こうして見ると同じ人間であると気づいた。でも、高橋家と自分を比べなくなってもまた他の人と比べてしまうのではないか。
    隣の芝は青く見えるのだろうけれど、まずは自分を認めないと先には進めない。彩花が、上手くいかなくなった責任を母親に求めず、きちんと何が問題だったのか自省できるようにならないと遠藤家は変わらない気がする。


    『どんなに強い殺意を抱いても、殺すと殺さないのあいだには大きな境界線がある。それを踏み越えるのと思いとどまるのとには、意思が大きく左右するものだと思っていた。倫理観、理性、忍耐力。だが、それだけなら、自分は今頃人殺しになっていた。止めてくれる人がいるかいないか、それに左右される場合の方が多いのではないだろうか。犯罪を起こさない人間が決してえらいわけではない。』

    『許す、なんて、親やきょうだいで使う言葉じゃないよ、きっと。どんな感情を持っていても、家族であり続けなきゃいけないんだから。』

  • 人の心の描写が素晴らしい。内容はまったりとドロドロした感じ。結局事件の真相は何が本当なのか私にはよくわからなかった。本書に書かれている通りなのか、それともそれは報道発表向けなのか。

  • さくっと読める、だのに続きが気になって仕方ない。
    どのように着地するのか、それが気がかりでしたが、そうくるか、と。
    結局残されたもの達にはこれからの生活を考えなければならないんだね。
    淳子の真意は淳子にしか分からない。
    「母の気持ちを勝手に想像するのはやめて」みたいな、お兄ちゃんの台詞がとても良かったです。
    あの場面で言えるのはすごく勇気のいることだと思うから。

  • ひばりが丘の高級住宅街で医師で夫が殺害された高橋家、娘が癇癪持ちで手を焼いている遠藤家、息子夫婦と同居したくてもできない小島さとこのそれぞれの家庭が語られている作品。個々の家庭で色々な事情があるけれど時間とともに解決されて良かったなと思った。

  • よそさまの家庭の内情はそこに住んでいる家族の者にしか分からない。まさに隣の芝生は青く見えるだけでそれぞれの家庭には様々な問題を抱えているんだなと思った。

  • 高級住宅地での殺人事件。そこに住む人達の物語。高い生活水準を維持したり、自分の限界超えて頑張らないといけないとか、しんどいよね。自分の好きな事出来ないのに、良い家に住んでいたら幸せとは思えない。周りと比べたり、比べられたりの世界じゃ息つまりそう。最後のビラを剥がしながらの歩美のセリフが印象的です。

  • 高級住宅街「ひばりが丘」に住む3家族の中で起きた殺人事件。どこにでもありそうな家族間のすれ違い、揉めごとが、ある時事件へ落ちてしまう。
    そのきっかけは、些細なことかもしれない。誰にでも起こりうる可能性がある。そういう現代の家族の危険性が書かれているなと思った。

    最後はハッピーエンドとは程遠くても、ほっとする、希望が持てる終わり方だったところが良かった。

  • ドラマの第一回目を見たら、先が気になってしょうがないので
    原作を読んでみることにしました。

    読みやすく、お話に引き込まれて
    あっと言う間に読み終えました。

    が、
    章ごとに日付や時間が書いてあるのですが、
    それがわかりにくく、
    何度もページを戻して確認。
    (これはいつの出来事?と、頭がこんがらがる)

    終盤までそれぞれの人物の、どろどろぐちゃぐちゃした感じが
    「いやだな~」と思いつつもおもしろかったのですが、
    最後急になんかみんないい人みたいになってしまう。。
    その「急」な感じについていけず、
    あれ、終わった?という感じ。

    これはもしかしたらドラマの方がおもしろいかも、、、
    と期待して、
    やっぱり先を急がず毎週見てみようと思います。

  • 前半、話の重さと登場人物たちへの嫌悪感がすごかった。人間の暗部を描くのがうますぎて、ほんとにゲンナリしてくる。
    うちの近所にいるオバサンとか、子供の頃近所にいた女の子に、小島さと子や彩花を重ねてみたりしながら、この人らはもうこのままなんだろうなあと、突き放した気持ちで読んでいた。

    後半、良幸が帰ってきて兄弟の会話を始めた辺りから、様子が変わってきた。自分の思う正しさや普通さの価値観を揺さぶってくる。
    お節介で自己中心的な小島さと子のマトモな部分が見えてきたり。子供に対して分け隔てなく接し、子供の未来は子供の意思で選べば良いと思っていた弘幸の言葉に、冷たさを感じたり。

    最後の週刊誌の記事は、小島さと子のインタビューから書いたのか。
    記者が勝手に書いたのか。
    まさか、子供達がそう証言したのか。

著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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