優しい音楽<新装版> (双葉文庫)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575522327

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと変わった不思議な出会いから始まる人と人との結びつき。どの話もその出会いを前向きにとらえて進んでいく姿勢がとても潔くて良かった。

  • この短編集は瀬尾さん好きの方にお借りして、あっと言う間に読んでしまった。

    一番好きなのは表題作の「優しい音楽」
    ちょっと変わった出会いをして恋人同士になった千波ちゃんとタケルくん。彼女の両親も暖かく迎えてくれる。その訳は、タケルくんが亡くなったお兄さんにそっくりだったから…。
    現実にあったら、ぞっとするほど怖い。

    後半、タケルくんがお兄さんの役割をして千波ちゃん一家を喜ばせようとする場面。私は正直「何でそこまでするの?」とモヤモヤしていたけど…
    tears in heavenを合奏する様子、本当に優しくて陽が差して霧が晴れるようだった。
    千波ちゃん一家とタケルくんがこの先もずっと仲良く続いていく予感が湧いて来てモヤモヤから一変して幸せな気分になった。本当に不思議。

    瀬尾さんの世界は現実にはあり得ないビックリする事が多い。なのに不思議と受け入れてしまう、そして幸せな気持ちになれる。出会えてよかった作家さん、他も読んでみたい。
     

  • 物語の始まりは、ちょっと風変わりなんだけど、終わり方がほんとに素敵で、ふんわりと優しさに包まれたような感じがする。
    「優しい音楽」「タイムラグ」「がらくた効果」
    三編とも、出会いから少しずつ心を開いていく過程の描写がいいなと思う。
    本当の優しさって、身内にだけ向けるものじゃない。
    かたちや世間体ではなく、人と繋がることの意味を教えてくれる温かい本だった。

  • 3つのお話からなる短編集

    一言で表すなら、「瀬尾ワールド全開」な作品ですね。
    この世界観が大好き過ぎる

    3編どれも、本当の家族じゃないんですよね
    他人との関わりが軸になるお話し
    ・恋人の亡くなった兄と似てるが故に繋がる家族との関係
    ・不倫相手の子供との交流
    ・恋人と同棲してる家に知らないおじさんが拾われてくる話し

    どれも中々あり得ない設定ですよね笑
    ただ、どれもホッコリと心温まるストーリーに仕上がってる。
    主人公自体が、あり得ない設定に身を置いていると自覚しているからこそ、読み手も感情移入できるのかもですね。だから、最初に他者という異物をザラザラした気持ちで捉えてる。
    だけど、今を受け入れてみると心が前よりも動いていて、違う世界が見えてくる。
    そこに温かみを感じるんですよね。

    心がザラついた時に、また読みたくなる一冊でした

  • 【優しい音楽】
    恋するきっかけはなんだっていいんだと思う。

    一目惚れでも、友達の紹介でも、お見合いでも、マッチングアプリでも、そう、誰かに似ていたからでも。

    ある日タケルは駅で突然かわいい女の子に声を掛けられる。タケルの仕草や行動に目を離そうとしないその子は、後々タケルの彼女となる。
    何度もデートをし、タケルの家でご飯を食べることもある。
    なぜ彼女は実家暮らしなのに両親を紹介しないのか。タケル君は来ない方がいい、と頑なに家へ入れようとしない。
    そこには千波がタケルに声を掛けた悲しい理由があった。

    タケルの優しい勘違いに千波と千波の両親の心は穏やかになったに違いない。それもこれも千波はタケルが好きで、タケルも千波が好きだから成り立つこと。それでいい、それだけでいい。
    思い出の人を誰かに重ねることは珍しくない。どちらも大切だけれど、芯にはその人個人を尊重して接したい。
    そんな表題作。

    【タイムラグ】
    みなさんは不倫相手に自分の子供を預ける人間をどう思いますか。

    作中にもある、他国のベビーシッターが子供にいたずらをしている問題だったり、最近の日本だと保育士の虐待が発覚したりと、他人に預けるのが安全と言えなくなってしまった世の中。しかし不景気で共働きせざるを得ない状況。私が通った保育園は、今後私に子供ができたら通わせたいと思えるほど素敵な保育園だった。それが当たり前じゃない世の中になってしまったのがすごく悲しい。

    小学3年生8歳の佐菜ちゃん。この度お父さん、平太の不倫相手、深雪さん宅へ預けられる。
    平太の財布からキャッシュカードを抜いていた深雪は、30万円を抜き出す。そのお金を使って豪遊しようと佐菜へ持ちかける。盗んだのではなく、預かるための必要経費だと。
    しかし佐菜はお父さんがかわいそうだとお金を使うことを躊躇する。
    どこへ行きたいかと聞かれ、8歳ならば遊園地や水族館、動物園と答えそうだが、会ったことのないおじいちゃんの家へ行きたいという。
    不倫相手の深雪は絶対に行けない。でももう佐菜は目を輝かせている。
    仕方なく向かうタクシーの中で、佐菜の家族の在り方を知る。深雪の知らない平太の姿、そして奥さんの存在。佐菜の優しさ。
    深雪の行動は逆差別に触れないかと考えてしまったが、祖父への言葉で違うと分かる。
    佐菜が家族と祖父の架け橋になっていくんだろう。

    【がらくた効果】
    あなたは家族や同棲相手が、知らない大の大人を拾ってきたらどうしますか。

    彼女であるはな子が、公園にいたホームレスのおじさん、佐々木さんを拾ってきた。
    その日から文句を言いつつも追い出すこともなく奇妙な生活が始まった。
    章太郎は佐々木さんから様々な知識を得る。佐々木さんはそんな章太郎から刺激を受ける。そんな2人をおおらかな気持ちで見守るはな子。

    人によって知っていることは違う。常識だと思っていたことが、ちょっとずつずれていたりする。
    知らない大人を家にあげて生活するというのはちょっとありえない世界だけれど、章太郎とはな子も、佐々木さんの知識によって視野が広がったのではないか。
    寂しくも希望に満ち溢れたラスト。

  • とても瀬尾まいこ調だった。めちゃくちゃなシチュエーションの中で、ぽろりと出てくる本質的なこころの動きとか、揺れとか。

  • 優しさの結晶を集めたみたいな短編集

    「優しい」も「音楽」もよく出てくる単語だし、イメージがふわっとしてて、わかるような、わかんないような。よくあるよね、という風なタイトルだと思ってた。

    読み終えたいま、なんて、やさしい、音楽なの!と「優しい」と「音楽」という単語の評価が上がってる。

    駅で僕の顔を見つめてくる女の子がいる。毎朝会ううちに話すようになる。やがてお付き合いするようになり、お家にご挨拶に行きたいと言っても、なかなか連れていってもらえない。なぜ、彼女が僕の顔を見つめてたのかが。

    不倫相手の子供を預かることになった。なんだかんだで彼のわがままを聞いてしまう。子供は女の子で、とても素直な子。パパのお金を使って豪遊しようよ!と、行きたいところを尋ねて、行った先は。

    ある日、同棲してる彼女が、おじさんを拾ってきた。

    という3編。どれもこれも、とても優しくて、どの人のことも好きになる。

  • どうして好きになったのかを
    忘れてしまうことが嬉しいなんて、
    思ってもみなかった。
    家族になるって、そういうことなのか。

  • 瀬尾さんじゃないと書けない物語だなと思いました。
    常識的に考えたら普通はないことだけど、どこか受け入れられて温かい気持ちになる、そんな短編物語三作でした。
    特に、最後の『がらくた効果』が好きでした。

  • 瀬尾ワールド初体験しました!

    読みやすく、冒頭から物語に惹きつけられ、あっという間に読んでしまいました。

    短編3遍とも、読んでて理不尽な状況なのに、すごく悪い人が出てこない…いや、悪い人に思えなくなっちゃう。

    終わりもハッピーエンドではなくても、問題が解決しなくてももやもやしない。なぜか心がほんわかになる。
    そんなだから普段、些細なことでイライラしたり悲しい気持ちになってる自分が馬鹿らしくなる。
    世の中、そんなに嫌な人や悪い人はいないんじゃないかとさえ思えてくる。

    物事の見方が優しくなるかもしれないな。

    瀬尾ワールドの魔法にかかった気分です。

    この先も瀬尾さんの作品を読んでみたくなりました。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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