ドライブインまほろば (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575525304

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから、勝手にほっこり系かと思って読み始めたら、出だしから衝撃的で最後まで重めだった。つくづく、親は選べないもんなぁ…と思わずにはいられない作品。憂が幸せになれるといいなぁ…。十年池、私も見てみたい。

  • 幼い子供が店に転がり込んでそれを手伝うところに「アンチェルの蝶」を、酷い環境で育った兄弟というところに「オブリヴィオン」を想起させられます。

    ただ、それらの作品以上に暗くて重い内容。憂の境遇はもとより、他の人物たちも何かしら過去に “傷” を負っていて、彼らには憐憫の情が芽生えてきます。

    ただ、流星は凄絶な過去があるとはいえ憂への仕打ちがあまりに酷く、後半にその過去が明かされはしましたが同情の余地はないかな、と。

    銀河については流星の過去を知らなかったことを差し引けば、流星に比べれとまだ救いがある方かとは思いますが、やはり過去に数多の女たちを売ってきたことを考えると、感情移入はしにくかった気がします。

    そうした引っかかるところはありつつも、終章に至るまでがかなり辛い内容だったため、比奈子や慶子、憂、来海、光が希望を持てるような結末だったことには心底ほっとしました。過去に傷を負ったもの同士、何かを補い合う形で前向きになれているところがポイントなのかな?

  • 人の心の動きの複雑さを随所に感じました。自分の力ではどうにもできない現実の残酷さの中にあるわずかな救いを求めてもがく様子が苦しかったです。それでも、最期は希望をもって終わったのが良かったです。これからも、苦難は待ち受けているだろうと示唆されているとしててもです。

    誰かに認められたり、必要とされたりした経験が少ない人ほど、反比例して人生に大きく影響してくるというのが、辛いなあと思います。受け取るはずだった幸せに気付かないことが、唯一の幸せになる方法の様で、それがまた、受け取る側の悲しみを深くさせる要因だなと思いました。

    それにしても、児童虐待の絡んだ作品を、意図せず連ちゃんで読んでしまいました。重いです。

  • 救いのない世界が 広がっていた
    けれど どこかあたたかい

  • 本棚に登録するときに気が付いた。
    2019年に読んでいる。
    すでに100ページくらいまで読み進んでいたが全然思い出さないので、そのまま読み終えた。

    子供よりも男が大切と思う母親は確かにいるのだろう。
    新聞などでもたまに報道される。

    虐待から逃れようと、義父を殺害した小学生の男の子が希望を見つけることはできるのか。
    暗い話だが、光が見えるラストシーン。
    決して面白くない小説ではないのに、全く心に残っていなかったのは何故なのだろう。

  • 山深い所にある「ドライブインまほろば」。かつては繁盛していたが、高速道路ができたことにより、客足は激減し、廃業していた。しかし、あることがきっかけで、比奈子は一人で切り盛りすることになった。
    そんな時、突然お店に二人の幼い兄妹が現れた。「夏休みが終わるまで、ここに置いて欲しい」とのこと。その風貌に必死さが伝わったり、かつての亡くなった娘と重なった部分もあって、受け入れることになった。
    時を同じくして、弟の息子が弟を殺害したということで、兄はその息子を見つけようと奔走する。


    負の連鎖によって翻弄されるそれぞれの家族が、読んでいて心苦しい気持ちもなりましたし、怒りや虚しさなどあらゆる感情が渦巻いてきました。

    自分の母によって子供が亡くなった母、弟が殺害された兄、養父を殺した息子。何かしらの暗い過去を抱えていますが、
    絶望の状況からどう這い上がっていくのか。読み進めるたびに何度も誰か救ってくれと思わずにはいられませんでした。

    遠田さんの描く「不幸」な描写は、良い意味で素晴らしく、心を揺さぶられました。不幸から幸福へと導く過程は、クリアではないですが、希望の光が灯されるような明るい方向へと進むので、いつも遠田さんの作品には期待が高まります。

    たしかに一部には犯した罪など許せない部分もあります。それをどうカバーしていくのか。なかなか一人では答えを出せません。周囲の人たちがいることで、再生していくんだなと改めて感じました。

    一度崩壊したら、完全に元には戻れません。読み進めるたびに心苦しい場面はありましたが、暗い気持ちだった分、最後は清々しく読めました。
    それにしても、大人の身勝手さに子供を巻き込むなと何度思ったことか。読んでいて腹立たしさが何度もありました。
    自分も気をつけなければいけないなと肝に銘じました。

    そしれ最後に登場する「十年池」。描写は美しく描かれていて、心が浄化したような感覚もあって、一度で良いから、見てみたくなりました。

    人々との温かみ充分に味わえた作品でした。

  • 辛くで不幸で悲しい人達の集まった物語でした。最後の最後で少しホッと!しました。

  • 虐待、、育児放棄、売春…読んでいて辛い描写がしばらく続く。それなのに何故か先まで読み進めてしまった。憂と比奈子は間違いなく生まれ変わった人生を生きられそうだ。

  • 虐待を受けていた義理の父親を殺害し、妹を連れて逃げた小6男子。母親の起こした事故で娘を亡くした女性。殺された義理の父親の双子の兄。それぞれが山奥のドライブインに引き寄せられ、そこで人生感を変える十年池に集い、それまでの苦難に満ちた人生に決別する話。色んな負の連鎖もあって、抱えているものが重く辛い人生で決して幸せとは思えないけれど、違和感レベルであった生きる意味を手繰り寄せて、最後には救われた感じで、読後感は良かった。

  • いろんな家族の形があるけれど、今回の話の人間たちは最低で自分勝手な人間と真っ直ぐ生きようとする人間とが描かれており、共感というか、子供たちがまっすぐ生きて欲しいなと、感じました。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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