悪党的思考 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 142
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582760798

作品紹介・あらすじ

13-14世紀、日本の歴史はひとつの根本的切断を体験した。「日本的近世」なるものを準備したこの切断の意味を、自然=ピュシスの力と直接わたりあう「悪党」的人々を座標軸として解き明かす、歴史のボヘミアン理論。

感想・レビュー・書評

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  • この本の、特に巻頭の「歴史のボヘミアン理論へ」は、著者の叔父である網野善彦から決定的な影響を受けている。後醍醐天皇が活躍し、南北朝時代の動乱を経て日本社会の構造が変貌した、という網野さんの指摘から中沢新一氏は出発し、そこにジョルジュ・デュメジル、ジル・ドゥルーズらのキーワードや、お得意の「ピュシス」といった要素を付加して、中沢氏特有の「自然」論を展開している。
    しかし、つい先日網野善彦さんの「異形の王権」等を読んだばかりの私から見て、あまりにも影響が露骨すぎるのではないかという気がした。
    思想家としての中沢さんには若い頃から興味があったが、どうもある時期から考え方が固まってしまっていて、読んでいて退屈を感じるようになった。
    ちなみに「悪党」という語が書名に入っているが、これは鎌倉時代、鎌倉幕府=東国武士団に対し反抗的で、いくさの作法もぶしつけ、名乗りをあげているところに投石したりするような野蛮な西国の武士たちを指す。その筆頭は楠木正成。・・・と本書には書いてあるのだが、「悪党」の定義、果たしてそうだったかな? と疑問を感じた。こないだ鎌倉時代に関する歴史書を読んだ際は、そうは書いていなかったような・・・。が、よくわからない。

    最後の「黄色い狐の王」が一番面白かった。著者がチベットで修行した際の体験が記してあり、ストゥパが空中に浮かび上がる光景を目撃したという「奇跡」が記されている。こういう事例を人に言うと、まことしやかに「科学的な」解説をしたがる人が多いのだが、どうもこれは、本当に見たのではなかったかと思う。そういうこともあっていい。
    このような体験が土台となって、いまの中沢さんの思想があるわけだが、個人的にはさほど深い感銘を受けなくなってきている・・・。

  • 人界と自然界の話。自然界の向こうから来る「富」と人界のみで完結する「貨幣」。人界と自然界の境界(膜)に触れて「富」を人界に現出させる、様々な職人的人々。富と王権。富の変化と王権の変質。

    個人的には私が「かみさま」だと思ってきたものに裏付けができた感じ。富と貨幣価値の問題とか、目に見えたり数えられたりしないものの価値について、とか。

    職人的、悪党的、というのは倉坂鬼一郎が「活字狂想曲」で書いてた「サラリーマンと商売往来」にかかってくるのかも、とも思ったり。

  • 『異形の王権』を継承しつつ、より明快に時代の移り変わりの背景を論ずる。

  • 8月21日読了。なんとなく手に取った本だけれどうーむ相変わらず話があっちゃこっちゃ飛んでよく分からない・・・。後半は全然別の話じゃない!?語られている内容は魅力的だとは思うのだが、どうも私と合わないのだろうか。日本という国を読み解くのには「天皇制」というものについてもっと理解しなければならない、のだろうか。

  • \105

  • 「つぶて」 んな事おもいつかねーよ!

  • ?「歴史のボヘミアン的理論へ」と?「江戸の王権」だけ通読。
    ドゥルーズ・ガタリ風味のパラフレーズを駆使して日本の「超越」を分析していく手腕は見事だが、あまりにも「出来すぎ」の気がしてならない。
    ドゥルーズ・ガタリを応用したものの中ではお手本にしたいくらい転用が巧い。

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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