イザベラ・バードの日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582764536

作品紹介・あらすじ

五十余年の歳月と十六万キロの旅程。日本列島の白地図にその足跡を、赤いインクで印していけば、列島はまっ赤になるといわれた、その人。西の大旅行家の名紀行をその人、宮本常一が、読む。日本民族と日本文化の基層を成す岩盤を、深く鋭く穿ちながら-。

感想・レビュー・書評

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  • まず、原著の翻訳を読もうと思ったのですが、宮本常一氏のこの本が私にはやっぱりしっくりきました。お寺で講話を聞いているような感じです。

  • 「日本奥地紀行」を読み終わったときは、イザベラ・バードがやたらと蚤に閉口したことを書いていたのが印象に残っていて、明治の初めの世相がうまく表れているとは思えなかったのだが、宮本氏の解説の深さは原作以上に面白かった。

  • 「非常に冷静に、しかも愛情を以って日本の文化を観てくれた一人の女性の日記」「彼女がこの時期(明治11年、1878年)に東京から北海道まで歩いてくれたことは、日本人にとってこの上ない幸せだった」。
    庶民の生活を記録し続けた20世紀最大の旅人・宮本常一氏による講読会の貴重な記録。宮本常一氏が日本を旅し、各地で暮らす庶民の姿を人々に語り続けてくれたことは、日本にとってこの上ない幸せと思います。
    宮本さんは言う。日本の"店"は、そもそも"見せる"ことから始まったのだと。それは品物を見せるだけではなく、仕事を、作っているところを見せた。ところが、戦後ショーウィンドウが一世を風靡すると、物はウィンドウに並べられて、人が奥へ入り込んでしまう。その時に日本の伝統工芸が滅びはじめたのだと思う。しかし、近頃レストランで料理するところを見せるようになり、物を売る場合も同じようになるのではないか、と。

  • 蚤とねぶた     -2007.10.13記

    明治11-1878年の6月から9月にかけて、東京から日光経由で新潟へと日本海に抜けて北上、北海道へと渡る旅をしたイギリス人女性イザベラ.バードが書き残した紀行文が「日本奥地紀行」だが、これを引用紹介しつつ我が国の古俗習慣を考証した宮本常一の「『日本奥池紀行』を読む」を繙いてみるといろいろな発見があってなかなか興味つきないものがある。

    芭蕉の連句集「猿蓑」の「夏の月」巻中に「蚤をふるいに起きし初秋」と芭蕉の詠んだ付句が出てくるが、この旅の間、彼女をずいぶんと悩ませたのが、この蚤の多さであったという。
    「日本旅行で大きな障害となるのは、蚤の大群と乗る馬の貧弱なことだ」と彼女が冒頭に記すように、行く先々で、蚤の群れに襲われたとか、蚤の所為でまんじりとも出来なかったとか、たえず蚤の襲来に悩まされたことを書きつけているらしい。
    そういえば幼い頃、子どもたちが順々に並んでDDTを頭からかけられたりしている光景を思い出すが、蚤や虱の類は、戦後の進駐軍によるDDT散布が広まるまで、どこにでもものすごく繁殖していた訳だ。蚤はどこにでもいるのがあたりまえで、あたりまえだから特段古文書などに出てくることもなく、いつしかそんな日常の暮らしぶりもわれわれの記憶の彼方に忘れ去られてしまっているのだ。
    芭蕉には「蚤しらみ馬の尿する枕元」という発句も「奥の細道」にあり、「造化にしたがひ四時を友とす」俳諧であったればこそ「蚤.虱」もたまさか登場するが、こういうのはごく稀だから、そんなに蚤の多かった暮しぶりなど今ではなかなか想像することもむずかしい。

    本書で宮本常一は青森や秋田の「ねぶた」を「蚤」と関連づけて簡潔に考証している。
    「ねぶた」は「ねぶたい」であり、津軽では「ねぶた流し」といい、また秋田あたりでは「ねむり流し」といい、富山あたりまでこういう言葉があるという。夏になると一晩中蚤に悩まされて誰もみな眠い、その眠気を流してしまおうという訳でそんな謂いとなったと。七夕の日にするからむろん厄流し、災い流しの意味も込められている行事である訳だが、「ねぶた」というその眠い原因は「蚤」にあり、「ねぶた流し」は「蚤流し」と元来は結びついていたというのだ。
    現在の派手々々しく絢爛豪華な「ねぶた祭」を支え興じる人々からはとんでもないと礫も飛んでこようが、存外こういった素朴な発想からの名付けとみるほうが実情に即しており、よほど真相に迫っていると言えるのではないかと思われる。

  • 宮本常一による日本奥地紀行の解説本。日本観光文化研究所の講読会の書き起こしのため、口語文ですらすら読める。
    宮本常一の目にかかると日本奥地紀行の一文一文がこのように読み解けるのかと、様々な対比をする博識と実地の裏付けに感嘆するばかり。

  • アイヌと日本人との比較で、人間として美徳とされる性質が必ずしも文化的な発展に結びつかない、むしろ逆に阻害する原因にさえなるという観察が興味深かった。

  • 2014/6/17購入
    2018/8/1読了

  • 面白い。昔の日本の情景が目に浮かびます。

  • 本編より先にこちらを読了。面白い。
    本編を知らなくても、充分楽しめると思う。
    かつて日本がどうであったか、教科書で教えていない
    内容満載。目からウロコがたくさんあった。

  • 古川古松軒の東遊雑記のほうも読みたい。

  • あまり記憶に残ってない。

  • 正確にはイザベラバードの日本奥地紀行を読んでいます。おそらく絶版になった古い本なので、検索出来なかったのかと。
    決してスラスラ読める本ではないが、なかなか興味深い。読む程に明治初期の北日本の暮らし振りや日本人の性質のような物が分かってくる。
    これから北海道に舞台が移るが、どんな展開になるか楽しみ。

  • 現在懐かしみを持って語られる昭和30年代の日本は、ある種の幻想を持って語られるが、明治初期の日本を旅行したイギリス人旅行家 イザベラ・バードの『日本奥地紀行』は、幻想ではない、ありのままの「日本人」と「日本文化」を記述したと思います。
    その記述を、形而上学的な偏見ではなく日本全国津々浦々を行脚して知見を構築した民俗学の巨人、宮本常一が解説するのだから、面白くない訳がない、と思って購入しました。
    まだまだ前半。これからもっともっと面白くなってくだろうと思ってます。

  • 明治初期に来日し東北から北海道にかけて踏破した英国人女性イザベラ・バードの「日本奥地紀行」(http://bit.ly/LmCfJd)を題材に1977年に行った講義録。日本人にとっては当たり前だったことは日本人の著書には残らないが、英国人であるバードならではの視点から見た日本の事情を抽出。蚤の多さ、子どもの栄養状態の悪さ、人々の保健衛生知識の欠如、馬のサイズ、馬具の種類、などに関するバードの記述について、江戸時代からの社会情勢の移り変わりを加味した解説を加えている。アイヌに関する説明も興味深い。

  • ほんの130年くらい前まで、着たきり雀で蚤に悩まされ、風呂も混浴で家の中では裸でプライバシーもない生活を送っていたという日本の庶民の現実。
    イギリス人旅行家イザベラ・バードの視点だからこそ記録されたエピソードの数々に、16万キロの行程を千軒もの民家に泊まって旅してきた宮本常一の視点から見えてきたもの。
    日本がどれだけ急速に先進国化していったかがよくわかり、ひずみがたくさん出ていることに気付かされます。
    示唆に富んでいて原著以上に楽しめました。

  • 120104BSにっぽん微笑の国の物語  他原著イラスト入りまで読可シ

    滋賀県北内貴=甲賀・水口町か?    拾人集:完全年齢序列ボランティアも含め年間25行事こなす    川田神社神撰田花返り   全村完全協同組合生産    しあわせ→最長老97歳:「ぜいたくなし。そこそこ暮らせてもうたでな」

    どんなに貧しくても人々は暮らしを楽しんでいます・・・

  • (欲しい!)

  • 「日本奥地紀行」を読む前に読む本 2009/02/08 民俗学者・宮本常一による解説。
    イザベラ・バードの「日本奥地紀行」を読む時間が無い人には、こちらのダイジェストと宮本常一の解説を読むと良い。
    彼女の書簡にある雑多な内容が、民俗学の視点でよく整理されていてとても判りやすい。時代は違っていても同じように日本中を歩き回った宮本常一にとって、民族学研究における彼女の存在はとても大きかったのかもしれない

  • (2005.05.28読了)(2005.01.29購入)
    ●イザベラ・バードの略歴
    1831年10月31日、英国ヨークシャーのバラブリッジに生まれる。父エドワード、母ドーラ。23歳(1854年)の時に、医師の薦めで、アメリカ、カナダを訪れる。これを契機に、72歳(1904年)まで、通算30年に亙る世界各地への旅行を行う。女史が旅行した地は、ロッキー山脈、サンドウィッチ島、日本、マレー諸島、カミュールとチベット、ペルシャ、朝鮮 (韓国)、中国等。明治11年(1878年)の6月から9月にかけて、47歳の時に、東北、北海道を旅行し、この時の記録を1880年10月に「日本奥地紀行」(原題「日本の未踏の土地」)(2巻)として出版する。世界各地の辺地旅行記の出版などの功績が認められ、62歳(1893年)の時に、英国地理学会の特別会員に選ばれる。

    民俗学者、宮本常一が「日本奥地紀行」を元に、明治初年の日本を読み解いてくれる。日本中を調査して歩いた経験が十分に活かされ、原文のわずか数行が、一つの物語になってしまうほどの凄さだ。
    ●人力車
    「発明されたのはたった7年前なのに(明治4,5年)、今では一都市(東京)に2万3千台近くもある。」「しかし、車夫稼業の入ってからの平均寿命は、たった5年であるという。車夫の大部分のものは、重い心臓病や肺病にかかって倒れるといわれている。」
    日本には馬車が無かったし、馬車の通る道が無かったため、結局人力車がこのように発達していった。
    ●下駄
    外国の文化人が日本へ来た文章を読んでいると、昭和の始め頃までのものには、この下駄の音がしきりにかかれています。
    ●中国人
    その当時までは、日本人よりも中国人のほうを日本人自体が高く評価していた。
    ところが日清戦争で中国が負けると、途端に日本のほうが偉くなってしまって、中国人のことを蔑んで言うようになる。
    ●蚤
    当時の日本には凄いほど蚤がいたことがわかる。
    ねぶた流しというのは、夏になると蚤に悩まされてみなねむいので、そのねむ気を流してしまおうというのです。
    ●好奇心
    「何百人となく群衆が門のところに押しかけてきた。後にいるものは、私の姿を見ることができないので、梯子を持ってきて隣の屋根に登った。やがて、屋根の一つが大きな音を立てて崩れ落ち、男や女、子供50人ばかり下の部屋に投げ出された。」

    (「BOOK」データベースより)amazon
    五十余年の歳月と十六万キロの旅程。日本列島の白地図にその足跡を、赤いインクで印していけば、列島はまっ赤になるといわれた、その人。西の大旅行家の名紀行をその人、宮本常一が、読む。日本民族と日本文化の基層を成す岩盤を、深く鋭く穿ちながら―。

  • バードという人はたしか、「英語でしゃべらナイト」で初めて知った。そして、浪人してから、意外と入試によく出て、大学でもバードを研究している人がけっこういることを知った。そんな感じでバードのことは気になっていて、たまたま「平凡社ライブラリー創刊15周年」といって大学生協で20%引きだったときにこの本を見つけた。宮本常一という人は、名前だけ微妙に知っていたときに、銀座線の浅草駅に置いてあったフリーペーパーの歩くことについての特集で、一人圧倒的な歩数を誇っていたのが印象に残っている。この二人を同時に楽しむことができる!と思って買った。そして全く期待を裏切られることがなかった。バード的見方、宮本的見方を存分に楽しむことができました。解説は、佐野眞一。

  • 宮本だからこそここまで読み深められたのだ!

  • (2006年6月)。

  • 『日本奥地紀行』って,読んでみたいけど未読なんだよな…ということでひとまず解説書の方を先に.なんて言うとモッタイナイ.というのは解説者が凄いのだ.
    宮本 常一である.自分なら絶対に読み流してしまうようなところから,思わず瞠目してしまうような時代の断面を切り取って来るこの目の確かさ,鋭さ.読み終わった時は思わず,自分の目が丸っきりフシ穴だったような気がしてガッカリさえしてしまった.あと,扉写真の宮本が実に良い.オリンパスペンEEがこんなに似合う人は初めてだ.

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著者プロフィール

1907年(明治40)~1981年(昭和56)。山口県周防大島に生まれる。柳田國男の「旅と伝説」を手にしたことがきっかけとなり、柳田國男、澁澤敬三という生涯の師に出会い、民俗学者への道を歩み始める。1939年(昭和14)、澁澤の主宰するアチック・ミューゼアムの所員となり、五七歳で武蔵野美術大学に奉職するまで、在野の民俗学者として日本の津々浦々を歩き、離島や地方の農山漁村の生活を記録に残すと共に村々の生活向上に尽力した。1953年(昭和28)、全国離島振興協議会結成とともに無給事務局長に就任して以降、1981年1月に73歳で没するまで、全国の離島振興運動の指導者として運動の先頭に立ちつづけた。また、1966年(昭和41)に日本観光文化研究所を設立、後進の育成にも努めた。「忘れられた日本人」(岩波文庫)、「宮本常一著作集」(未來社)、「宮本常一離島論集」(みずのわ出版)他、多数の著作を遺した。宮本の遺品、著作・蔵書、写真類は遺族から山口県東和町(現周防大島町)に寄贈され、宮本常一記念館(周防大島文化交流センター)が所蔵している。

「2022年 『ふるさとを憶う 宮本常一ふるさと選書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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