松本清張と昭和史 (平凡社新書 320)

著者 :
  • 平凡社
3.26
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本棚登録 : 89
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582853209

感想・レビュー・書評

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  • 社会派のミステリ作家として知られる松本清張ですが、本書は二・二六事件を中心とする『昭和史発掘』と、占領期の歴史の謎に迫った『日本の黒い霧』の、清張の2つのノンフィクション作品の意義を論じた本です。

    『昭和史発掘』については、昭和前期の軍事的テーマと非軍事的テーマを密接につながったものとして扱うとともに、マルクス主義的な枠組みを前提とすることなく、どこまでも実証的な方法で史実に迫ったものとして、高い評価が与えられています。

    一方、『日本の黒い霧』については、清張の勇み足が散見されることを指摘しつつも、いわゆる陰謀史観とは一線を画して、占領期の闇をどこまでも追及しようとした清張の、執念ともいうべき強い意志を見ようとしています。

    清張と同じく人気作家だった司馬遼太郎は、「司馬史観」と呼ばれるような独自の歴史観がありますが、本書を読んでも清張独自の歴史観というものはあまり見えてこないように感じました。「底辺からの視点」といった表現もなされていますが、それが清張の実証的な手法と具体的にはどのように関係しているのかというところを、もう少し詳しく知りたかったように思います。

  • 松本にとって、昭和前期は日々の生活に不安を感じながら地に足をつけて生きることを余儀なくされた時代といっていいだろう 格段の隔たりのある職業、身分、地位者間の親交あるは、その間何らかの企画あるものとして常に査察を行うを要す 

  • 松本清張の時代背景が理解できる

  • 古本で購入。
    松本清張のノンフィクションが好きなので、タイトルに惹かれて読んでみた。
    著者の保阪正康はあまり好きじゃないんだけど。

    著者によると、清張は昭和史を「同時代を生きた庶民として」丹念に「記録」し、その底流には「怒り」があったという。
    そういった松本清張の「史観」の分析や、取り上げられた『昭和史発掘』『日本の黒い霧』の粗筋はなかなかおもしろい。

    だけど個々の事件を清張がどう見たかについての分析は少し甘いような…?
    「清張の見方には大きな誤りがあるが、書いた当時を考えれば充分に評価できるし見習うべき点はある」というのは間違いないんだろうけど、どこか薄い。
    「清張史観」に対する著者のスタンスが曖昧と言うかなぁ。

    なので星2つ。

  • 感想未記入

  • 清張作品をまったく読んでいないと少々辛いかも知れぬ。清張史観の評価が今ひとつはっきりしないところで消化不良。

  • 後半に違和感。『日本の黒い霧』で扱われた事件の背後にあるはずの、米軍の陰謀の存在をどこか曖昧にしたがるというか、できれば否定したがる様子が妙だと感じた。米西戦争に代表されるように米国が国家的な陰謀を常用するのは常識の範囲ではないのか。

  • [ 内容 ]
    社会派推理小説の分野を開拓し、歴史小説、社会評論、古代史研究など、多彩な執筆活動を展開して、「国民作家」の名にふさわしい存在感を示した松本清張。
    なかでも、現代史の謎に切り込んだノンフィクションは重要な柱である。
    清張は、軍部をはじめとする国家権力、二・二六事件で蹶起した将校たちにどのような眼差しをむけていたのか?
    占領期の闇をいかに切り裂いたか?
    「昭和」という時代にどう取り組み、何を見たのか?
    松本清張から、「時代の記録者」としてバトンを受けた著者が、『昭和史発掘』『日本の黒い霧』を通し、その史観の本質に迫る意欲作。

    [ 目次 ]
    第1章 昭和前期と『昭和史発掘』(自らの同時代史に取り組む 清張にとっての昭和前期 「底辺からの視線」はどこから生まれたか ほか)
    第2章 「二・二六事件」に収斂された昭和前期(昭和前期の日本を形造ったものの正体 事件をめぐる因果 同時代としての「二・二六」 ほか)
    第3章 昭和中期を暴いた『日本の黒い霧』(占領期という時代 GSとG2の対立 占領期の闇 ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「昭和史発掘」「日本の黒い霧」を再検証し、清張史観の意味を問い直す。「日本の黒い霧」は昔、読んだ覚えがあります。ちょうど「ゼロの焦点」「球形の荒野」などと同時期でした。そういえば、テレビでもセミ・ドキュメンタリー番組を見た覚えがあります。

  • ちょっとおもしろくない

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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