顔の読み方: 漢方医秘伝の観相術 (平凡社新書 910)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582859102

作品紹介・あらすじ

顔にはその人の健康、人格、運命などすべてが現れる。漢方医学の名医が観相について歴史や文化などさまざまな角度からアプローチを試み、人にとって顔が持つ意味を探る。

感想・レビュー・書評

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    丁宗鐵(てい むねてつ)
    1947年東京生まれ。横浜市立大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科修了。医学博士。79年から81年まで米国スローン・ケタリングがん研究所に客員研究員として留学。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。現在、日本薬科大学学長

    千利休は来客を茶でもてなしつつ、その表情、所作から相手が何を考えているのかを読み取り、時の武将たちにさまざまな助言をしていたのではないか。私はそう考えています。 ただ単にお茶を飲むだけの場であるのなら、茶道が日本を代表する文化として現代まで脈々と受け継がれることはなかったはずです。 茶の湯はその静寂の中に人間対人間の真剣なやりとりや駆け引きがあり、戦国時代は茶室こそ腹の探り合いの場でもあった。そして千利休は数多いる茶人の中でも相手の心を正確に読み取り、未来を予測する術に長けていた。だからこそ、織田信長や豊臣秀吉といった武将たちに重宝がられたのではないでしょうか。

    【娶ってはいけない女性】
    ・黄髪(黄味を帯びた白髪)で歯が黒く、息の匂いが臭く、まっすぐに歩かず、 く座らない者
    ・虎のようないかつい顔や蛇のような日、白日がちで黒目が小さく、淫らで邪な者は夫を欺く
    ・口の上にホクロがあれば他人の夫を愛するようになるから娶ってはいけない
    ・爪の幅が狭くて乳房が小さく、手足がみにくい者は必ず夫を貧窮にするから娶っ てはならない
    ・皮膚が厚く、骨格が頑丈で、肌の色が真っ赤な者は、夫を早死にさせるから娶っ てはいけない
    ・蛇のように歩いたり、雀のように走ったりする者を娶ると金儲けができない

    【女性の吉相について】
    ・歯が白く、日は黒日と白日がはっきりと分かれていること
    ・物を見るときには正しくまっすぐに仰ぎ見て、邪なものがなく、日もとが涼しい こと
    ・声は大きく、鼻は小さくて篇(竹簡――竹でできた札で荷札などに広く使われた。 凸が少ないことを表現している)のように正しく、人中(鼻の下から上唇にかけての じんちゅう 縦のくぼみ)は深くて長く、息はかぐわしい。そして眉は八の字のような形で、顔 は端正で左右の釣り合いがとれ、平らかでふっくらとしたよい形であること
    ・口の下にホクロがあり、肩の高さがひとしく胸が薄くないこと
    ・舌は広くて薄くないのがよく、色は真紅できめがあること ・体の皮膚は薄く滑らかでしっとりと潤い、肉づきが豊かであること
    ・体は常に温かく、骨格はかぼそくたおやかで、関節はごつごつせず、ゆるやかで あること ・頭や手足は長くないのがよく、掌はふっくりと柔らかであること
    ・また、もつれた糸のように歩き、心が正直で、口は柔順で和やかであり、頭や足 が素直に均衡がとれていること。これらの条件に当てはまるのは、みな、貴人の 相である
    ・また、肩から肘にかけてほっそりし、陰部が杯を伏せたようにこんもりと高くて、陰毛は長くて細くて滑らかに素直に生えている者、陰部にホクロがある者 は、二千石の妻である
    ・乳房が大きくて口が小さく、正しい形をしており、その4本の指を乳房の上下左 右に当てて見たとき、その中にホクロがあれば富に恵まれる相である
    ・手の中にホクロがある者や歯が32本以上あるのは、最も貴い相である
    ・ここに挙げたような者は大吉祥であり、福徳の持ち主であるから、必ず娶るべき である。ゆめゆめこの女性を放棄してはならない

    18歳頃、彼は酒代欲しさに叔父の金を盗むなどして天満の牢屋に投獄されるのです が、その牢内には彼と同様に罪を犯した人間が多数投獄されていました。 そこで彼はこんなことに気づくのです。 「罪人はみんな顔つき(人相)が似ている」 彼は自身の人相も含め、罪を犯す人間とそうでない人間の人相が異なっていることに気づき、観相に興味を持つようになります。

    また、先進国では細身の女性が「スタイルがいい」とされますが、ポリネシアのように太めの女性が美しいとされる地域もあります。 太めの体型はポリネシアの人々にとっては豊かさの象徴であり、痩せている人よりも太っている人のほうがバイタリティにあふれ、子孫を残しやすいと考えられていまそんないろいろな要素が組み合わさり、太めの女性が支持されるようになったのでしょう。

    一方、観相の発祥の地である中国や韓国では、いまだに「顔つきそのもので運命が決まる」と考えています。韓国や中国の観相の考え方は、基本的に発祥期から大きくは変わっていないのです。 本来の観相では「顔は生まれ持ってのものだから運命は変えようがない」と考えら れたため、不幸な顔つきで生まれた人は一生不幸だというわけです。 日本のように「内面から変えることができる」と考えられればまだ救いがありますが、「変わりようがない」と決めつけられたら救いはどこにもありません。 さらに子が不幸な顔立ちをしていたら、親は当然「この子が不幸なのは親の責任 だ」と考えます。 では、どうしたら子が幸せになれるのか? 不幸から抜け出すにはどうしたらいいのか? その救いを求める人たちに支持されて、韓国に広まっていったのが、"美容整形" でした。韓国人が美容整形に瞬躇しないのは、「変えられないはずの人生を自分でよりよく変える」ためのひとつの方法であり、彼らにとっては実に,未来志向の前向き さ"なのです。 それまで「変わらない」と思っていた顔と運勢が、美容整形によって「変えられ る」と知った韓国人たちは、美容整形に飛びつきました。 今ではみなさんご存じのように、韓国では美容整形が大ブームとなり、街中には 「美容整形手術をしてないのはあなただけですよ」というようなキャッチフレーズの 広告があふれています。

    「子の顔は親が責任を持たなければならない」と多くの人が思っています。そのため、子どもの美容整形にかかる費用は親が負担することが当然と考え、それが常態化しているのです。 子どもが大学受験に成功したら、そのご褒美として美容整形を受けさせる。それは、韓国ではもはや当たり前のことなのです。 大学に合格したらすぐに美容整形を受けるので、高校の卒業式で友人に話しかけても、整形前の顔しか知らない友人に「あなた誰?」と言われてしまうという笑い話もあるほどです。

    整形しない人を見れば「あなたはその鼻さえ変えれば人生がバラ色になるのに、何 で整形をしないのか」と思う。整形している人から見れば、整形していない人は自分 の人生に無頓着な人か、あるいは手術を受けられない貧乏人という認識なのです。

    一方、激動の時代を多く経験してきた韓国では、企業の歴史も長くてせいぜ50-60年がいいところ。韓国の社会はすべてのスパンが短く、すぐに結果を出さなければ社会の中で生きていけません。そんな社会事情もあり、韓国では長期的に物事を考える習慣があまりないのです。 自分の運命に関しても、日本人は食事に気をつけたり、生活習慣に気を配ったりしながら徳を積んで生きていけば、40歳を過ぎるころには,いい顔"になると考えまところが、すぐに結果を求める韓国人は、いい顔を手にするために「40歳になるまで待つ」ということがまず理解できません。美容整形というものがあるのに、何でわざわざ40歳まで待たなければならないのだ、というわけです。

    「顔を変えて、人生をよりよいものにしよう」と考えるのは、一見ポジティブな感じを受けますが、日本では「顔(外見)も大切だけど、内面(心、精神)も大切だ」というバランスを貴ぶ考え方が主流のため、どうしても受け入れがたい部分があるので日本と韓国ではそのような文化の違いがありますから、日本人なら美容整形するにしてもせいぜい一重のまぶたを二重にするとか、鼻筋を通してちょっとだけ鼻を高くする程度ですが、韓国人は輪郭を変えてしまうような大手術をも厭わないのです。

    観相の未来予測ではありませんが、漢方でも体質を見極めていくことで、その人が将来どういう病気に気をつけるべきか、病気を予防したり長生きするためにどういう生活をしたらよいかがわかってくるのです。

    西洋医学では患者さんの表面に現れている病気や症状を緩和し、改善するように治療を進めます。 これを"標治"というのですが、表に現れている症状のみを治しても、症状の原因となっている病気の根本的な治療はされませんので、再発することも少なくありませこれに対して漢方医学では、表に現れている症状の治療を行うだけでなく、その症状の根本原因をその人の体質とともに考え、治療し、再発しないように体質の改善も行っていきます。漢方ではこれを"本治"といいます。

    話がちょっと逸れますが、極意を公にせず、"秘伝"にしてしまうと、その分野のことはあまり広まらず、廃れていくことになってしまいます。 江戸時代頃の漢方医学がまさにそのパターンに当てはまり、当時の漢方は衰退の一 途をたどっていました。しかし江戸時代末期に蘭方医学が隆盛してきたことで、漢方医学を専攻していた人々が「このままではいけない」と気づきます。 その結果、江戸末期から明治初期にかけて、それまで直弟子にしか教えてこなかっ たような秘伝の類のことを"口訣集"(学問や技術の奥義を師匠から弟子へと口で伝えて いたのを書物にしたもの)として各流派が公開しました。 そのお陰で、漢方医学は日本で廃れることなく、今では多くの人に馴染みのある医 学として広まりました。

    服装の色から得られる性格などを例としていくつか挙げましたが、茶色やモスグリーン系統を好む人よりもさらにつらい過去を持っている人(両親の離婚や死別など、トラウマともいえるような大きな傷を心に負っている人)は、"紫"を好む傾向がありま 私の臨床経験からいうと、紫の衣服をまとい、そこに黄色のアクセサリーや小物を身につけている人はまず問違いなく、幼少期に大変つらい思いをし、大きなトラウマを抱えています。

    「紫と黄色」の組み合わせは、とても人目を引きます。展覧会で入選するような絵画には、得てして紫と黄色の配色を交えたものが多かったりもします。逆にいえば、紫や黄色を配していない絵では入選できない。それくらい、紫と黄色はまわりから注目を集める組み合わせといえます。

    私が専門としている漢方は占いではなく医学ですが、患者さんの顔や全身を診て治療方針を決めていきますので、やっていることは観相ととてもよく似ています。古代中国では医療と観相がとても密接な繋がりを持っていたのもうなずけます。

  • 読みやすさ★★★★★
    学べる★★★★
    紹介したい★★★
    一気読み★★★★
    読み返したい★★★★

    観相学に興味があったので手に取った。漢方治療の専門家である医師が、顔に隠された沢山の情報を医学的なデータとして取り扱っているところが信用度も高く興味深い。
    「顔の読み方」については三章にざざーっと書いてあるのみで、やはりモノにするにはそれなりの経験値が必要そうなことがわかる。身近な人物を思い浮かべながら、当たってるな~とか、まさかこのホクロが!とか、占い感覚で楽しめた。
    一方で、東洋医学とはなんぞや的なことも紹介されている。
    東洋医学での「診る」ことの基本姿勢を、現代の電子カルテばかりを見ている医師達は見直すべきではないか、と本気で思った。
    また、「食べ物が顔に表れる」と伝えた水野南北の言葉にドキっとさせられた。
    単なる人相についての本かと思いきや、意外にも幅広い知見を得られた一冊。

  • 著者の趣味の世界と思えない事もないが…

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著者プロフィール

日本薬科大学学長

「2022年 『長生きショウガ新健康法大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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