「八月十五日」は終戦記念日ではなかった (ベスト新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584122938

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  • チェック項目18箇所。昭和28年8月15日以前の軍部の記録では「三國声明」と記されている。8月3日の傍受通信では、「米国は8月6日、広島に原爆を投下する」と一日3回の警告をしていた。長崎が被爆した日、米軍はLST(上陸用輸送艦)で長崎に上陸していた、爆心地から1、5キロにあった収容所へ米軍のLSTで侵入し、捕虜を救出していた米軍の部隊があったのである。実は8月10日午前2時30分、天皇は御前会議で「ポツダム宣言を受諾する」との聖断を下し、日本の敗戦は決定していた。8月14日の夜、焼け残った家を次々と買い占めに訪れた、「焼けなかった健在のお宅を売ってくれ」業者から言われた市民は、どうせ本土決戦となり、灰燼に帰してしまう家だと思うと、「よかとです」と次々と売り払った、翌日正午の玉音放送で、福岡市内の家を売り払った人々は、あぜんとして我が身を後悔し、不運を呪ったのはいうまでもない。長崎では憲兵隊員がトラックに分乗して、「本日のラジオ放送はデマ放送なり。敵の策略に乗せられるな。軍はますます戦備を堅めつつあり」と報じて走り回った、これを聞いた市民は、万歳を連呼したり、拍手して喜び合った、その一方で、ラジオの玉音放送と憲兵隊の宣伝と、どちらが正しいのか疑心暗鬼の状態になる者も多かった。「私はちょっと英語ができたから、上官から『君のような人間が日本を救うのだ』と説得されて、米軍との折衝に当たったら、待遇はいいし、給料も日本の軍人の倍だし」これも日本人の戦後の生き方の形でもある。米軍は8月30日の上陸早々、横須賀市内で婦女暴行を頻発させていた、この日、婦女暴行を含み神奈川県下で起きた事件は、315件にのぼる、これは警察に通報された数なので、占領軍に怯えた市民の泣き寝入りは含まれない。日本の占領が巧妙だったのは、日本研究の賜物である、そのため、日本に占領期があり、間接統治されていたことも忘れられがちになった。昭和20年度の「終戦処理費」は123億円となった、すべて日銀仮払いの国民の借金である。昭和20年の秋は、明治時代以来の凶作だった、戦争で使用された大量の爆弾の煙が成層圏まで舞い上がり、日射しを減らして凶作となる、海上での艦船の沈没は海面を油膜で覆い、海水の蒸発を遅らせ、ゆっくり蒸発した海水は、たっぷりたまってから巨大な台風となる、まさに終戦の秋がそうだった。「LALA(ララ)」とはアジアの生活困窮者を救済しようとする「アジア救済連盟」の略称である、しかも、日本への救援物資は、終戦の翌年、日系1世のアメリカ人が提唱して、民間団体の寄付で送ってきた。日本国内で空襲を経験しなかった県が3つある、奈良県と鳥取県、石川県である、それ以上に絶対に句集を受ける心配のなかった場所もある。箱根に滞在していた外交人、1360名……箱根が「非戦闘地区」であることを駐日大使館あたりから耳にしていたにちがいない、一方で、その事実を知っていた日本人は、政府と陸海軍と警察の関係者だけである。RAA(リクレーション・アンド・アミューズメント・アソシエーション)……「慰安と娯楽協会」、「新生社会事業観光部」の看板をつけていたが、騙された女学生たちは、RAAの慰安所で、人道愛に肉体を燃え尽きるまで働かされた。昭和13年に「防空法」が制定されて、空襲があった時は老若男女を問わず、消火活動をしなければならなくなった、空襲から逃げると犯罪で、罰金500円である、この金額は将官の年俸に近い。学童疎開とは「都民の防空義務の足手まといを去ること」と「次世代の戦力培養」が真相であった。各学童の疎開費用200円と毎月20円以上の生活費は、親の負担だった、家庭には深刻な出費だった。終戦後3ヶ月で警視庁管内のスリは、713件あった、検挙された者のなかには、中央官庁の役人、中堅サラリーマン、初老の職工も主婦も含まれており、逮捕者のほとんどは大人だった。

  • 広島で被災した軍関係者がやたら少ないとか
    アメリカ軍が長崎から捕虜を避難させてたとか

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著者プロフィール

古川愛哲(ふるかわ・あいてつ)

 1949年、神奈川県に生まれる。歴史資料収集家。日本大学芸術学部映画学科で映画理論を専攻したあと放送作家として活躍。同時に、東西の歴史や民俗学をはじめ「人間とは何か」を追求。また、世界の映画大学ともいえる「国際学生映画祭」の創設に加わり、新しい視点から芸術をバックアップする。
 著書にはベストセラーになった『江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた』『九代将軍は女だった!』『江戸の歴史は隠れキリシタンによって作られた』『坂本龍馬を英雄にした男 大久保一翁』『悪代官は実はヒーローだった江戸の歴史』『原爆投下は予告されていた』(以上、講談社)などがある。

「2017年 『西郷隆盛の冤罪 明治維新の大誤解』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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