- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784584123379
感想・レビュー・書評
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■人は認知エネルギーのコストを「直観的な判断」でカットする。これを「ヒューリスティック・モデル」と呼ぶ。
・人間が経験を通じて獲得してきたもので便宜的で常識的
・エネルギー節約上,判断に至る時間は早いが大雑把であるため精度には限界があり,また判断結果に一定のバイアスを含むことが多い
・バイアスは避けられない
■人間は得になることはすぐに決めたがり,損になることや面倒なことを先延ばしにしたがる傾向がある。これは「損失回避バイアス」(先延ばしバイアス)と呼ばれる。
・損失が関係する意思決定は先延ばしにする
■避難する側の本音は「なるべく避難したくない」
・特にお年寄りは「避難するくらいなら死んだほうがまし」とさえ考える
■人の不安や恐怖を利用することで行動を起こさせ,それによって不安や恐怖心を解消させる方法がある。これを「恐怖喚起の行動変容」と呼ぶ。
■人は災害を恐れる半面,災害が起こることを期待してしまう傾向がある。この感情を「ウェイティング・ディザスター」と呼ぶ。
■最後は自分の身は自分で守らなければならない,誰が何と言おうと最後は自分で判断し行動するということは常日頃からしっかり自覚しておくべき。
■日本の組織や集団は等質性を重視して構成されることが多い。このような等質性の高い集団では全員一致が求められ,そのために適切な意思決定ができないことが少なくない。
・「和を以て尊しとなす」という日本社会では緊迫した危機的な場面で合理的かつ迅速な意思決定が求められる場合にますます優柔不断に陥り行動のタイミングを失ってしまう。
・強力なリーダーシップが必要
■災害心理学の立場からパニックが起こるための条件として挙げられる4つの事項
①その場にいる殆どの人々に切迫した脅威があるという認識が共有されていること
②危険からの逃げ道・脱出のルートがあると集団が信じていること
③逃げ道・脱出ルートには制約があり集団全員が逃げることは難しいという不安が共有されていること
④人々の間で正常なコミュニケーションが成り立たなくなってしまうこと
■PTSDの3つの症状
①過覚醒:再び起こるかもしれないと危険に備える
②侵入:フラッシュバック
③狭窄:経験を無意識のうちに思い出さないようにするためにおこる症状詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の広瀬氏は災害・リスク心理学の専門家。本書は、災害に直面した際の人間のさまざまな行動について、心理学的側面から解説したものです。
著者の思考の根底には、「災害は極めて人間的な現象」だという認識があります。物理的な災害の影響に加え、人間の特殊な心理に基づく行動が被害を倍加させるのです。逆にいえば、そういう心理的バイアスをコントロールすることができれば、災害の被害を極小化することが可能になります。
ただ、本書で提示されている心理的バイアスを抑える具体的手法はどうも表層的で物足りないですね。興味深いテーマなだけにちょっと残念です。 -
■災害
1.災害時に避難勧告や避難指示が出されても、それに従う人の割合が5割を超えることはほとんどないという。
2.イメージしやすいリスクは起こりやすいと判断する。
3.行動を先延ばしにするだけで気が軽くなる、まやかしの心理。
4.ウェイティング・ディザスター。
5.災害社会学者:エンリコ・クワランテリ。