ユダヤ女ハンナ・アーレント: 経験・政治・歴史 (叢書・ウニベルシタス 883)
- 法政大学出版局 (2008年3月1日発売)
本棚登録 : 12人
感想 : 3件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
- Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
- / ISBN・EAN: 9784588008832
作品紹介・あらすじ
「私はひとりのユダヤ女です」と自らを位置づけるアーレントにとって「ユダヤ性」は紛れもないひとつの「経験」であり、己の思考を政治や歴史に導く重要な要素だった。亡命時に練り上げた歴史観を再構築し、『全体主義の起源』を読み直し、パーリアと成り上がり者、シオニズム運動、《最終解決》のユダヤ人評議会等への分析を引き出し、その思想形成の側面を照射する出色のアーレント論。
感想・レビュー・書評
-
アーレントによれば、ユダヤ民族は、その途方もない脆弱さ、その絶対的無力状態ゆえに野蛮の言うがままになるのだが、こうした脆弱さや無力状態は何よりも数彼らが政治組織を有していないことに由来していた。自分たちを犠牲者とする攻撃に対抗するにしても、ユダヤ人には国家も軍隊も他の国にとっては当たり前の政治もなかった。無国籍者であるがゆえに、彼らは難民になることが最も多く、非ユダヤ人権威者たちや慈善的組織の善意に依存していた。ナチの襲撃によって解体された国民―国家の市民であった彼らは、対独協力諸国家によって殺されかねない状態にあった。しかしながら、まさに個人の逃げ道がもはやない限りで、アーレントはユダヤ人たちが政治的責任を負うかどうかという問題は死活問題であると考えるに至った。ユダヤ人の政治と取り組んでいた時期、この時期彼女はシオニズムに批判的なテクストを書くと同様に、ユダヤ人軍隊の設立を促進しようとしていた 。
詳細をみるコメント0件をすべて表示
全3件中 1 - 3件を表示