([た]1-3)感傷旅行 Tanabe Seiko Col (ポプラ文庫 た 1-3 Tanabe Seiko Collection)
- ポプラ社 (2009年2月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591108352
感想・レビュー・書評
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1963年下半期芥川賞受賞作。田辺聖子は初読だが、この人に対するステレオタイプ的なイメージは持っていた。それからすれば、芥川賞作家だというのは意外だった。オオサカの放送界の男女が主人公だが、それに対置されているのが、線路工夫で共産党員のケイだ。ただし、ここで語られる「党」は時の世相を反映してはいるものの、きわめて図式的だ。倉橋由美子の「パルタイ」(1960年。芥川賞の候補にはなるが落選)が直ちに連想されるのだが、その後も含めてこの両者の階梯は大きい。世界や世間に対する向かい方が決定的に違うのだろう。
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☆芥川賞
この文庫のために再録された4編からなる短編集。
表題作の「感傷旅行」は芥川賞受賞作だが、作者自身が“内容とのギャップの効果を狙った”(あとがきより)と言うだけあって、かなり意外だ。
変な男とばかり付き合っている有以子が次に熱を上げたのは共産党員のケイ。親友のヒロシから見ても今までになく朴訥な青年に思え、うまくいくかに見えたが…。
有以子は田辺作品の中によくあるおきゃんな(!)キャラだが、中でも群を抜いてぷっつんである。党員がどうの、というよりその性格にちょっと辟易してしまった。本当はそこがこの作品の味なんだろうが。
個人的には「田舎の薔薇」のほうが好きだ。多忙な女医(と言っても中年)とうだつの上がらない夫とのお話。 -
芥川賞受賞の表題作のほか、『恋の棺』、『いま何時?』、『田舎の薔薇』を収録した短編集。
一筋縄ではゆかない恋愛の苦さやしょっぱさが取り上げられてはいるが、「〇〇だナー」といった田辺さん独特の軽妙なノリは健在だ。
表紙に惹かれて買ったが、読んだことのある話が入っていたり堅苦しい話があったりで、私にとってはあまり楽しめないハズレな一冊となってしまった、残念。 -
乃里子シリーズから田辺聖子に入っていろいろ読んできたが
とくに「感傷旅行」は
たしかに田辺聖子の色をしっかりもっているけど
いままでのというか他のものとはちがった。いいショックだった。
共産党員をもってきたのが要因のひとつかもしれないけど
それは人物像が面白いだけで
クライマックスの面白さはまた別にあって・・・。 -
田辺さんの本はこの歳になってから読むほうが沁みる…。
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これはあんまり好きじゃなかった。
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体温のある心の動きが感じられ、ちょっとほっこりしたり風が吹いたり(笑)また田辺先生読むかもしれません。
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浦野所有
→11/03/27 竹谷レンタル →11/06/11返却
浦野レビュー - - - - - - - - - - - - - -
田辺聖子、おもしろいですね~。
この文庫には4編の恋愛小説が収められていますが、どれもいいです。
とくに、「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)」の有以子の生き様がいいですね。まあ、現実にあんな女がいたら関わりたくはないけど。で、この有以子が、共産党員のケイを「最後の男=結婚相手」と選び、その一部始終を友人のヒロシに自慢げに話すところから物語が始まるのですが、有以子とヒロシの掛け合いがおもしろい。湿ったまま終わるラストもいいです。
ちなみに「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)」は第50回芥川賞受賞作で、第51回も、同じく共産党員の若者を描いた「されどわれらが日々――」。だけど、何なんでしょう、この鮮度のちがいは!
「されど…」は、もはや化石のような作品で、人の生の営みをコレっぽちも感じられないというのに、「感傷旅行」には古さがありません。これも、作家としての力量のちがいなんでしょうかね。 -
「田舎の薔薇」を読んだところ。
乾いた心に、こおばしい番茶をのんだ気分です。
重荷を背負った週末。
田辺聖子さんの小説を読むとき、たとえ
今がどんなに苦しくても
窓の隙間から、光が差し込むように感じる。
まんまの大阪ことばの羅列は、すこし敬遠だけど。
それ以外のものは、すなおに受け入れられる。 -
お聖さんにハマリ中。
感傷旅行は、時代性があるものの、今に通じる普遍性と爽やかさがあると感じた。
結局、女はあーだこーだと見えていても、純愛だとかたった一つの愛情とか、そういうものを求めていたりする。
主人公の有似子は客観性の低い性格で、支離滅裂だが、そのパワーと明るさが魅力的。こういう振り切った女って面白い。
でも揺れてしまうあたりの女心やイタズラ心もよく表れている。最後は違う道を歩むあたり、
現実でもここまでのパワーのぶつかり合いはなくとも、そういう出会いばかりではないだろうか。
ぬるい刺激を受けつつ、違う方向へ進んでいく。同じ方向へ進んでいく人達は、人生の長い時間を一緒に過ごせる同士も見つかるかもしれんが、
そうはいかないのが現状。やはりその時のエネルギーやタイミングで人と出会い、別れていくことが多い。
乱闘(?w)有似子が部屋に転がりこんで泣くあたりのシーン、爽快であった。ここまでぶつけれる相手がいるということは幸せなことだ。
有似子の表記は大阪弁ではないが、イントネーションが大阪ってあたりも新鮮さを感じ、読爽感がある作品だった。