夜が暗いとはかぎらない

著者 :
  • ポプラ社
3.66
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本棚登録 : 2027
感想 : 189
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591162743

感想・レビュー・書評

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  • 寺地さんの本、すでに4冊目。特徴的なのは静かな内容ながら、相手と自分の関係性、自分の考えが通らない、何故相手はそう考えるのか、などの激しい心の葛藤が「見物」なのだろう。人それぞれ葛藤を持ちながら生きていく。子どもも大人も。その中で相手と妥協し折り合いをつけていく。しかし、その相手に「こころ」を感じることができれば納得できるが、それを感じない時「葛藤」を起こすのだと思う。登場人物が若干分かり辛かった印象は否めないが、時々インパクトがある「あかつきマーケットのゆるキャラ・あかつきん」が明かりを灯してくれた。④

  • 大阪近郊に位置する暁町にある「あかつきマーケット」が物語の舞台…様々な店舗が軒を連ねて営業していたが、時代の波に飲み込まれる形で閉店することとなる…。「あかつきマーケット」のマスコット的存在の「あかつきん」はイベント途中に失踪(!?)するも、その後町の至る所に出没し困った人を助けていた…さらに「あかつきん」のしっぽをお守りにする人も多数現れたが…。

    「あかつきん」だけにしぼったストーリーかと思いきや、実際は「あかつきマーケット」で働く人々やその近隣に住む住民やその家族など、様々な年代の人たちが主人公となる短編集でしたね…。日々の生活の中でどんな人とつながり、どんなことを思い、今後どう生きていくか…を描いているものでした。色んな感情に左右されながらも、生活の中で人と関わることでホッとする、感謝し思いやる心をもてる、張りつめていた心を休ませることができる…そんな日があれば、明日もまた頑張れるっ!

    「グラニュー糖はきらきらひかる」が、特に好きです!頑張っていると甘いもの、すっごく欲するとき、ありますよね!!自分からもう甘いものでも摂らないとやってらんないわ~じゃなくて、それを家族にすすめてもらえると認めてもらえた感ありますよね(^^)

    読み終えて、表紙の「あかつきん」を改めてみると、なんとも愛おしい気持ちになりました(#^^#)

  • ★4.5

    奇跡が起きなくても、人生は続いていくから。

    大阪市近郊にある暁町。
    閉店が決まった「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが突然失踪した。
    かと思いきや、町のあちこちに出没し、人助けをしているという。
    いったいなぜ――?


    「あかつきマーケット」を中心にマスコットの「あかさきくん」や
    マーケットで働く人々やその周りにいる家族・恋人・友人…の、
    13篇からなる連作短編集。

    あかつきマーケットの周辺で暮らす普通の人々、
    子供から老人までの何気ない日常を切り取って、
    一人一人の哀しみや悩みや葛藤・怒り・喜び…色んな感情を
    丁寧に丁寧に描かれていた。
    色んな感情が溢れていた。
    寺地さんはどうしてこんなに人の思い…悩みや苦しみを抱えた人々の
    繊細な心理を描くのが上手いんだろう。
    優しいんだろう…。温かいんだろう…。
    色んな思い出が甦り、想いが溢れ
    何度も何度も涙が零れて仕方がなかった。
    文中にあるのですが、子供に悩みがないなんて言う人は、
    子供の頃を忘れている人だ。という一文。
    私も忘れていた人だった。
    子供の頃、些細な事だか色んな事に悩んだり傷ついたりしてた。
    祖母の事も思い出した…あんなにも愛されていたんだ…。

    登場人物達は、過去の私であったり現在の私だった。
    これから私かもしれない。
    どのお話を読んでも、心に刺さったし、
    心に染入る言葉の数々がありました。

    多くの人が見えない着ぐるみを着て生きているのかもしれない。
    弱さやあさましい気持ちや泣き言や嫉妬を内側に隠して、
    他人には笑顔を見せてる。
    心のバランスが崩れた事がない人なんている?

    沢山泣きましたが、心がじんわり温かくなり
    元気を貰えました。
    明るい日もあれば暗い日もある。
    奇跡は起きなくても一日一日を大切に生きていこう。
    頑張ろうって思えました。

  • 「朝が明るいとは限らない。どんなことがあっても、時間がめぐれば朝はかならずやって来てしまう。ままならぬ思いや不安を抱えて迎える朝はたくさんある。生きていれば、いくたびも」
    やることなすこと何故か空回りしてしまう、ままならない日常を送る人達は世の中にごまんといる。
    そんな、朝が来ることを恐れて夜を安らかに過ごせない人達の背中を、そっと優しく押してくれる言葉が沢山綴られている連作短編集。

    一般的には朝は明るく夜は暗い、と言われる。
    けれど朝が明るいとは限らない、とその日その日をなんとか乗り切ろうと奮闘する人達よ。
    そんなに思い詰めないで。
    肩の力を抜いて。
    大丈夫、頑張り過ぎないで。

    明るい暗いは関係ない。
    朝が来て夜が来る、ただそれだけのことなのだから。
    不安に駆られた人達の気持ちを受け止めそっと励ましてくれる、そんな優しさの連鎖が読んでいて心地好かった。

    困っている人を助けてくれる、しっぽを掴むと幸せになれる、と噂の「あかつきマーケット」のゆるキャラ「あかつきん」。
    私も「あかつきん」のしっぽを掴みに行きたい。

  • フォローしてる方のレビューを読んで、読みたいと思っていた本。初めての作家さん。

    どなたかもレビューに書かれていたけれど、表紙の印象から受けるようなほのぼのとしたお話ではなかった。

    表紙に描かれている「あかつきん」は、閉店が決まっている暁マーケット(戦後の闇市から続く小さな商店が集まった市場)のゆるキャラ。
    ある日、あかつきんがマーケットから失踪してしまうのだが、その後町のあちこちで目撃され、町の住人がその様子をSNSに上げる。「あかつきん」には何か意図があるのだろうか…?

    どこにでもあるような町に住む人々の心模様が、丁寧に描かれている。前章の主人公が次章にもチラリと出てくるリレー形式の短編集。そして、必ずどこかに「あかつきん」も登場する。
    終盤に近づいて、「あ、この名前、前の方に出てきた!だれだっけ?」みたいな感じでページを行ったり来たりして、見つけてスッキリ!てなことも楽しめた。
    それだけ入り組んだ構成を、作者は考えられているんだなぁ…と驚嘆。

    どんなに幸せそうに見える人、恵まれて見える人にも心の中に重石のようなモノはある。その大きさ重さは、人それぞれ、重石で抑えているモノも人それぞれだと思うけれど。
    格差が広がる世界で、人は他の人の重石には目がいかない。自分の重石ばかりが気になって人を羨み、人を軽んじ…大人の世界がそんなだからスクールカーストもうまれるのだろうな…などと考えてしまった。どうも考えが学校に行き着いてしまうこの頃である。

    どなたかも書いていたが、私も「グラニュー糖はキラキラひかる」がとても心に響いた。2019.12.27

  • 『夜が暗いとはかぎらない』うーん、深い!『明けない夜はない』とか『やまない雨はない』とかは言いますが、『夜が暗いとはかぎらない』ですよ。

    この物語を読むとそのタイトルの意味することがよくわかります。ここでその解説を述べるのはちょっと違うと思うので、そこはスルーしておきますが。

    さて、私ごとですが、かなり久しぶりに小説を読みました。久しぶりに読むと、この連作短編集にちょっとビックリしたりします。この人がこうで、えっ!?この人はなんの人だっけ?っていう風に頭がこんがらがったりします。
    でも、新しい発見がありました。連作短編集って、今までは当たり前のように読んでましたが、これって、物語のリレーみたいですね。各章でそれぞれ違う登場人物がいて、それぞれの登場人物がその章では主役になって頑張っています。そして、この寺地さんが描く登場人物はみんなが魅力的で、その各章が終わるたびに凄く寂しい気持ちになります。
    いやぁ、本当にどの章も面白かったし、優しかった。寺地さんが描く物語で共通しているのは、優しさでしょうか。嫌な奴だなと思っていた人も、他の章でその人のいい部分が見えたりします。

    どの章も面白かったんですが、最後は誰が主役になるのかなぁ?と思って読んでいくと、やっぱりこの人ですよね!そして、各章で活躍した人たちもみんな出てきて凄い贅沢な最終章。

    『夜が暗いとはかぎらない』。どの章にもその意味が隠されていると思います。久しぶりに読んだ本がこれで良かった。

  • 気になっていた一冊。
    この表紙のねずみが登場して暗躍するとは思わなかった。
    朝が明るいとはかぎらない、昼の月、夜が暗いとはかぎらない。

    大阪市近郊のどこにでもある小さな街にある、あかつきマーケット。
    そこのゆるキャラであるあかつきんが失踪して…。
    この街に住む人達の群像劇。

    あかつきんの生み出した花屋のおばさん、育児に悩むお母さん、嫁が実家にべったりで帰ってこない男性などなど。こうでなければいけない、こうしなければいけない、という枠に囚われて、くるしんで、それでも進んでいく。

    けむり、赤い魚逃げた、グラニュー糖はきらきらひかる、青いハワイがお気に入りでした。読み終わって、あたたかいスープを煮込みました。

  • あかつきんは 特に活躍しませんが
    あかつきんの中の人も
    この紡がれた物語の一人として
    少し成長してくれます
    連鎖的に何かが影響され 響き 変わっていく
    そんな温かさを感じる話になってます

    • さてさてさん
      musamikaさん、こんにちは。
      私も大好きな物語でした。musamikaさん書かれている通り、あかつきんは直接には何かする存在じゃない...
      musamikaさん、こんにちは。
      私も大好きな物語でした。musamikaさん書かれている通り、あかつきんは直接には何かする存在じゃないんだけど、なんだか存在感が大きくて、また、今度はどんな形で出てくるのかな?という期待感もあって、なんだか存在自体もいじらしく感じました。
      とてもあったかいお話だったと思います。
      ありがとうございます。
      2020/07/29
    • musamikaさん
      心があったかくなるお話って読むと
      みんな頑張ってるんだなぁって元気が出ますよね コメントありがとうございます。
      心があったかくなるお話って読むと
      みんな頑張ってるんだなぁって元気が出ますよね コメントありがとうございます。
      2020/07/29
  • あかつきマーケットという古びた市場と、そのゆるキャラ「あかつきん」を軸に、様々な人たちの物語が紡がれていく。
    登場人物がとても多い。でも、一人一人の上辺を掬い取るのではなく、一点を深く刺すような文章。
    短いお話のなかに、その人が何に悩み、何を求めているのか。心に訴えかけてきた。

    表紙に描かれてるのはまさに「あかつきん」。
    作中で言及されている特徴を完全に再現してる!

    一編一編は短いんだけど、はっとさせられるような、人生の真理とか、ままならなさが書かれていて、読みながら何度か涙を拭いました。
    数珠繋ぎ方式で、ひとつの話が終わると、その話に登場した別の人物を主人公にした次の話が展開していく。
    よくこんなに繋げたな〜!と、途中で感心してしまった。

    この本に登場する人たち、一度会うだけの繋がりの人もいれば、家族や友達同士の長い付き合いの人同士もいるけど、みんな、なんか良いな。
    寺地さんの本には、憎いだけ、嫌悪感だけって人が出てこないんだよな。
    誰が一番印象に残った??と問われれば、わたしは「時枝さん」。
    多分、読了した人の多くが「時枝?誰だっけ?」と思うでしょう。蝶々愛好家の会社員の男性です。
    時枝さん、自分が誰かに影響を及ぼしたって気付いてなさそうなところが、すごく良い。

    星満点じゃないのは、私が寺地さんの小説がとても好きで、勝手にハードル上げてしまっているからです。
    読み物として素晴らしいんだけど、寺地さんの他の作品からもらった感動と比べると、この本は少しライトだったかな。

  • 寺地はるなさんの本を読むと、周りの人たちにも生活があり、悩みがあることを思い出す。当たり前のことだけど、自分から見てどうでもいいとか、かっこ悪いとか思うことも、その人にとっては大切なのかもしれないことを改めて感じる。彼女の本を読んだら、少し優しい人になれる気がする。

著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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