流れる星をつかまえに (一般書)

著者 :
  • ポプラ社
3.60
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本棚登録 : 321
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591174111

作品紹介・あらすじ

本作はエモい。爆エモい。うそ偽りのないエモさだ。
なぜならここには、ちいさくて、だいじな、
わたしたちひとりひとりのこころの断面が、
みっちりと詰め込まれているから。
――少年アヤ氏(「web asta*」2022年8月8日より)

本作の根底にあるのは、やりたいことはやっちまえというエネルギーだ
――ブレイディみかこ氏(「web asta*」2022年8月8日より)


誰もとりこぼすまいとミラーボールで物語を照らす
吉川トリコが、私にとってのプロムクィーンだ
――柚木麻子氏



家族仲がしっくりいかず、生き方に迷う主婦。
16歳になる直前まで自分が在日韓国人だと知らなかった姉妹。
ゲイであることに葛藤する男子高生。
血の繋がった子どもを持てなかった母親。
卒業式の日にプロムを開催すべく奮闘するモーレツ女子高生たち――
ままならない日常に悩み惑う人たちの踏み出す一歩が、
あなたの背中をそっと押してくれる。
『余命一年、男をかう』で大注目の著者が贈る、
明日もがんばる元気をくれる連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で面陳列されてた作品で、名古屋の作家さんだったりでした。ねっとり名古屋色濃い連作短編なんですが、中日新聞にドラゴンズ、鶴舞公園に庄内川とドストライクな名古屋弁もでてきて同病相憐れむって感じで軽いコンプレックスに浸れました。名古屋って保守的な土地柄なんですよね。
    まわりと比較しながら、うじうじ生きてる主婦や高校生の話にミニシアターで上映されるコアな映画の話題とか、歳なのにチアしてみたいとか、在日韓国人3世の姉妹の話とか、性的マイノリティとか、養子縁組の親子の話とか、どことなく触れてはいけない雰囲気を醸し出す自意識過剰が逆に他人と自分を区別する逆差別だったり。偏見と差別とか扱ってるけどヘイトに重いものにならずに恥じらいにも似たライトなものに昇華しているとこもよかったです。
    「ナード」って言葉しらなかったけどそんな感じに社交的スキルが疎くなってる人をいうみたいでした。
    そして、プロムの開催を求める女子高生。
    ちなみに私はアメリカ映画や韓国映画に詳しくないのでいまいち響いてこなかったのですが、ネガテティブに堕ちることなくそれぞれのカミングアウトが適度に明るさを増してシュピレヒコールの渦となってなだれ込んできました。
    アカデミー賞の「ムーンライト」と韓国映画の「子猫をお願い」観てみたくおもいました。

  • 『あわのまにまに』と一緒に本棚登録した作品で、先にこちらを読了。

    初めましての作家さんで、読み始め早々、名古屋弁がバシバシ飛び交い、調べたらやはり名古屋在住の作家さん。私も昨年まで名古屋に住んでいたので、行ったことのある公園や聞き馴染みのある駅名も出てきて懐かしい気持ちになった。

    内容としては、名古屋の高校に通う学生、ママ友、教員など、それぞれのままならない日常にスポットを当てたオムニバス形式と群像劇の間をとった感じの短編集。
    登場人物はリンクしつつ、短編ごとにそれぞれが抱える悩みや葛藤がテーマ分されており、家族仲の問題、国籍問題、LGBT、不妊、養子縁組など、幅広いジャンルに触れることができる。
    どのテーマも掘り下げようと思えばどこまでもネガティブな方向にいけそうだが、どの作品も深刻になりすぎず、むしろポップな感じがして、読後に元気をもらえた。

    個人的に好きなのは『私の名前はキム・スンエ』と『36年目の修学旅行』。前者は姉の初未視点、後者は妹の笑未視点で物語が描かれる。姉妹であれば、同じ在日韓国人としての葛藤や悩みを共有しそうだが、二人は自分達の出自に対しては対照的な捉え方をしている。生まれ持った性格もあるとは思うが、周りから受けた影響やちょっとした環境、経験の違いで、姉妹でもここまで考え方に差が出るんだなと面白くもあり、同時に、絶対に妥協できない何かがあったとしても、折り合いをつけて生きていくという、姉妹としてのカタチが微笑ましく、羨ましくも感じた。いつか二人で仲良く韓国旅行するという姉の願いが叶ったらいいなと思う。

  • 流れる星をつかまえに - WEB asta
    https://www.webasta.jp/series/nagareruhoshi/

    bonbonmemo
    https://bonbonmemo.blogspot.com/

    流れる星をつかまえに 吉川 トリコ(著/文) - ポプラ社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784591174111

  • ものすごくトリコさんらしさがちりばめられた、あらゆる世代を勇気づけてくれる連作短編集。
    舞台は日本(名古屋)だけど、ふんだんに洋画や洋楽が登場するから、どこか海外ドラマのようなノリで楽しめる。一話目「ママはダンシング・クイーン」は、チアダンスを始める中年女性達のストーリー。割りとストレートに熱い展開なので、本書はこういうテイストなのかと思っていたら、肩すかしを食らう。在日、LGBT、不妊、養子縁組…考えさせられるテーマを巧みに折り込み、二話以降も様々な映画作品を小ネタ的に絡ませながらストーリーが進む。シリアスなのに、勢いのある展開。時にはやさぐれたり諦めたりと、ネガティブな感情に支配されることもこともあるが…己の人生のどうにもならなさに落とし前をつけ、昇華させ、それぞれに疾走する登場人物達。端から見れば迷走気味かもしれないけど、それでもいいのだ。
    いつもトリコ作品に感じる…欲張りなほどに情報をぎゅうぎゅう詰めこんで、登場人物達はマシンガンなトークを繰り広げるけど、とっ散らかることなく楽しめるのがすごい。皆それぞれに愛おしく、エールを送りたくなる…そんな素敵な物語。

  • 高校生、その親、その友人、親の友人、先生など、それぞれ関連する人にまつわる映画のような日常から少し離れたエピソードを短編で見ていく感じ。表面上では伺えない秘めた思いがあり、各話主役が違うため視点が変わり、互いに知らない状況で互いを思う。なんかまどろっこしいけど新鮮。
    6冊目読了。

  • 友情というより互助会。納得!
    40代でチアダンスを始めたママチームと、その子供たち、学校の先生の連作短編。
    前向き元気パワーをもらえる1冊。
    映画をたくさん知ってたらもっと楽しめたのかな。

  • 初読みの作家さん。
    とても良かった。
    この前向きさは好み。

  • 小倉の願っただれかに好きになって好きになってもらいたいは切実で、そしてそれはきっと誰かではなく甘利に対してだと思う。
    甘利の章がないのでその想像が広がる。
    目に見えているものが全てじゃない。
    母親と甘利の関係性を見て強くそう感じた。

  • 親世代、子世代それぞれの生が同じ大きな物語の中でつむがれるのが、日本文化の年齢性を超越しようともがく意志を感じさせる。先生と生徒というのもそうかな。
    でもよく考えてみると、子供向けの小説の中で、子どもの姿が大人にはどう見えているかを描いていた古田足日なんかもある意味同じなのかな。今思えば、ああした小説(『宿題ひきうけ株式会社』など)を読んで育ったことが社会学者としての僕の現在につながっている気がする。
    でもこの小説で描かれる親世代、子世代それぞれの世界は子ども向けの小説とは違って、より対等なものになっていて、それは現実の私たちの世界における若い世代がより大人の世界とつながっている部分を映しているように思える。
    そのような中で、プロム開催のために爆走する女子高生たちは、悟りすぎている若い世代への私たちの期待を反映しているようだし、子育てをはじめてから、若いころの夢を実現させようとしている主婦たちの姿は、年齢の壁を乗り越えたいという私たち自身の野望を映しだしているように思える。

    コロナの流行はシンデレラの12時の鐘のようだったけど、それならその現実を乗り越える新たな魔法を私たちは欲しいと切実に思った。

    また全体的に女性視点が強く反映されたストーリーで、男性がそこにどう関わっていいんだろうという課題を課されているようにも感じられた。

  • 家族仲がしっくりいかず、生き方に迷う主婦。
    16歳になる直前まで自分が在日韓国人だと知らなかった姉妹。
    ゲイであることに葛藤する男子高生。
    血の繋がった子どもを持てなかった母親。
    卒業式の日にプロムを開催すべく奮闘するモーレツ女子高生たち――
    ままならない日常に悩み惑う人たちの踏み出す一歩が、
    あなたの背中をそっと押してくれる。



    女子高生のモーレツな勢いがすごかった。高校生ってこういう若さあるよね…って思ったし、大人しく文芸に勤しんでいた生徒たちをある意味洗脳し、文芸部を乗っ取るなんてすごい。私も昔よく言われたが、それを勉強に向ければいいのでは…と思ってしまう。


    「普通」ってなったんだろうと思った作品でもあった。母親業を頑張って、家事にパートにと頑張って自分の身なりを整える余裕のない母親。16歳で自分が日本人ではなく在日韓国人と知った姉妹。自分が同性愛者だということをひた隠しにする男子高校生。血の繋がらない親子。みんな「普通」で「普通じゃない」。


    特に、在日韓国人だった姉妹については、姉妹で全然違う考え方を持っていた。姉は幼い頃の親戚の家で体験した行事や食べ物を「今思えばあれって」と妹と答え合わせをしたいし、自分のルーツについて考え、韓国語を学んだり、映画を見たり観光に行ったりする。だけど、妹の方は全て韓国の話題から自分を遠ざけ、耳を塞ぎ、視界から排除する。昨今の韓国ブームは、妹にとっては複雑なんだろうな。


    男子高校生の話も良かったし、血の繋がらない親子の話も良かった。ママ友たちが笑いながら「子ども産んだんだから分かるでしょ」って言い合う言葉を彼女は、どんな気持ちで聞いていたのか。ママ友たちには子どもいる=出産していると思ってるし、それが普通なんだよね。


    モーレツ女子高生たちの最後は、少しかわいそうだったが、LINEの2019年12月という表示に、うっすら不安を覚えたがまさに的中。あの頃は、こんな未来が来るとは思わなかったし、非日常が日常になるとは思わなかった。


    いやぁ、確かに「普通」ってなんだ。私が思ってる普通は、普通ではないんだな。本当に考えさせられるお話だった。


    2022.11.19 読了

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著者プロフィール

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で<女による女のためのR-18文学賞>第三回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『あわのまにまに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

「2023年 『コンビニエンス・ラブ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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