- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620107578
作品紹介・あらすじ
この街に来てから、私はどんどん素直になっていく。知らない女と心中してしまったお父さん。残された私とお母さんは、新しい人生を始めようと思い立った-下北沢で。どこにでもある、でも、たったひとつの人と街の愛しい物語。ばななワールドからの贈り物。
感想・レビュー・書評
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父親が知らない女性と心中してしまったら、残された家族はどう足掻いて生きていけばいいのか
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無理心中に巻き込まれて死んだ父。残された妻と娘のよっちゃんの悲しみや怒りが生々しい。
関東圏に住んだことがないので下北沢という場所の土地柄みたいなものがさっぱり分からず残念だけど、どん底の2人にとっては下北沢で口にした麦のサラダや甘い茄子カレーが救われるきっかけになった。人間、美味しく食べられるうちはまだ大丈夫だ。
心中って殺人なんだな、と再認識。かの太宰治氏も何度か心中しようとして、女性だけ死なせちゃったりしてたな…自分が死ぬまで他人を巻き込み続ける人は怖いなぁ。自殺にしたって、周りの残された人々はもしもワールドの中で取り返しのつかないことを悔やみ続けるのだし。
新谷くんと慎重に距離を詰めて気持ちも確かめて、でも結局なんか違ったーってなるのは悲しいけど仕方ない。でも山崎さんと…っていうのは正直よく分からないや。 -
BSの本に纏わる番組で鈴木保奈美さんと吉本ばななさんが対談されていた
バブル真っ只中の1980年代末から90年代初め、吉本ばななさんの著書が爆発的に売れ、すごい勢いだったそうな
そういえば吉本ばななさんの本一冊も読んだことないな
一度読んでみようと、図書館で手に取ったのがこの本
ミュージシャンの父親は、ある日突然見知らぬ女と心中しこの世を去ってしまう
残された母娘は平穏な日常を失い、悲嘆や自責、言葉に言い尽くせない感情に苛まれるが、下北沢に引っ越し
再生を図ろうとする
最初から最後まで、父親との思い出を手繰り、悲しみ、悲しみを紛らわせるかのように懸命に働き、考え、考え
一歩進んでは、三歩後戻りしという感じであった
最初はええーっ、ずっとこんな感じで続くの?
よりによって吉本ばななさんとの出会いがこの本とは! と辟易したのが正直な感想
しかし、考え尽くされた選ばれた表現という感じでとても文章が美しい
吉本さんってこんな文章を書かれる方なんだ
自分をこよなく愛してくれた父親を失ったよっちゃんの
言いようのない心理描写をありとあらゆる手を使って巧みに表現されている
セレブリティとして暮らしていた母親が、夫に裏切られ若い女性に寝取られた惨めな女と成り下がってしまった
複雑な心理描写もすごい
今まで着たこともないようなTシャツを着て、下北のお店めぐりをして会話を交わして、まるで新しい地図を不器用に作るように一歩一歩生きている母親
自由業のヤクザな仕事の夫ゆえに、きちんとマダムとして生きてきた母親が、その枠を取っ払い自分の足で生きようとしてきる姿
それはそれで何と自由で素敵な姿だろう
前向きすぎず、後ろ向きすぎないその態度を見て、なんといい女だろうと思う娘よっちゃん
そんな二人をさりげなく包み込み、受け入れる懐の深い街、下北沢
一度ぶらぶらしてみたいなと思った
まるで三角形の底辺だけを彷徨うような展開ではあったけれど、最後に少し未来への展望が見えて救われた -
「あいまいで、気持ち悪くて、ぐずぐずっとしていて、もやもやしていて、みんながみんなちゃんとしていなくって、それでいいのではないだろうか。いいやいいや、別にいいや、なんでもいいや。だって私は生きているし、多分ほんとうに好きな人と今いっしょにいるんだし。」
新聞連載ということも手伝ってか、
スピリチュアル色がかなり薄い物語だった。
にしても、ばななさんの言葉は、
どうしてこんなに、すとんと入ってくるのか不思議で堪らない。
きっと、私だけじゃないのだろうけれど。
「これは、私がいつもおもっているけれど、言葉にしにくいと思っている心情説明だ!」
というのを正に言い得て妙という言葉が次々と。
物語の流れは、そんなに、大きく揺れ動かず、ただふんふん、、と追っていたのだけれど、
この時折入ってくる、あ、これって私のあの時の心の動きじゃん!というのに、いちいち立ち止まってしまう。
だからやっぱり、この人の作品を読むのをやめられないんだろうなぁ。
【3/6読了・初読・大学図書館】 -
よしもとばなな『もしもし下北沢』
2010年 毎日新聞社
最初はエッセイかと思っていたのですが、下北沢を舞台とした素敵な小説でした。
実際の下北沢のお店などの描写もありかなりリアルな感覚で読んでいました。
僕も自由が丘に住んでいて、遊びで下北沢に行っていたので余計に風景や空気、匂い、そして移動の感覚などがとても実感的に読んでいました。
壮絶な体験を乗り越えた主人公だけど、場所にはそういった心を再生させたりする力がある気がします。再生するのは自分自身だけど、それをきっかけというか、理由付けにもしてくれたり。確かに特に下北沢には独特のパワーがありますよね。それはそこにいる人々から発せられるものでもあるけど。
未来はそう先のことだけではなく、明日、1時間後、1秒後でも未来。確かにそれは想像もしないことが起こるかもしれない未来だもんな。だからこそ自分もこれからの時間を心に正直に前を向いて生きたいなと思いました。
#よしもとばなな
#吉本ばなな
#もしもし下北沢
#毎日新聞社
#読了 -
久々のばななさんの作品。下北沢に惹かれて読んだ。知らない女性と心中した父親、残された母娘が過去の呪縛から逃れて再生してゆく様を下北の個人商店、人情を背景に描かれている。心中相手以外は皆んな良い人ばかりで、空気感は分かるがそれだけだった。直ぐに泣いて人の懐に入る主人公に共感できなかった。
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小説の中に自分のよく知る街や人の名前がたくさん出てくると恥ずかしくなってしまうので、この本を敬遠していたけど、
こんなに素敵な本ならもっと早く読めばよかった。
よっちゃんの聡明さ、それによってはっきりしてしまう残酷さはスリリングだった。
父親が知らん女と心中してしまったことへの悲しみや慟哭は一体どこに行き着くんだろうとか、新しい生活へと動き出したお母さんはどうするんだろうとか、
物語に対する興味はもちろんあるんだけど、
それ以上によっちゃんの悲しみそのものが美しかった。
よっちゃんはずっとずっと誠実に悲しみ続けて、ついには悲しみを抱き締める術を得た。
これは小説だけど、よっちゃんなんて本当はどこにもいないのかもしれないんだけど、
本当に感動した。
よっちゃんはすごいし、だいすきだと思った。
あっという間に読んでしまって残念だった。
もっとよっちゃんの言葉を聞きたいと思った。 -
すっげーゆーーーっくりセックスした。みたいな気持ちになった。
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再読。下北沢を舞台に、見知らぬ女に父を心中に引き込まれた娘と母の、生きていくためのまるくて、あたたかい物語。