あなたが消えた夜に (毎日文庫)

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 2010
感想 : 156
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620210230

感想・レビュー・書評

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  • 最悪な恋愛の全てはこの本を理解するためにあったのだと。心からそう思った。
    脳を洗う。本当にそんな作品。現代の神は薬だ。
    神とは救いをもたらしてくれるものだという
    甘い考えがぶち壊される最高の作品。
    人間の弱いところがいっぱいで自分の憂鬱を
    一時的に忘れられて良かった。
    まさに中島刑事のように。
    本当に最高の作品だ。棺桶に入れたい。

  • 今までの文則作品ではなかったような、奇天烈怪奇な難事件をデコボコバディが情熱と執念によって解決に導くみたいな本格刑事ものかな、ちょっと大衆向けにソフトなストーリーにも裾野を広げたのかなという展開でしたが(小橋さんの素っ頓狂なキャラもかわいい)、安定のダークサイドに落ちていっていただき、悶々とすることができました。感謝。


    あとがきでもありますが、無意識の自覚化といった点が随所に表現されているし、物語の一貫したテーマになってる。そこに、神々の戯れ的な人類を超越した価値観も交わり、難解な物語が綴られていく。

    ネタバレになっちゃうので軽く触れますが、「コートの男」事件としては山場が2つあり、どちらも許されざる、でも裁かれることがない悪に対する悲痛の叫びを感じさせる。白か黒の2分では説明できない、グレーな世界に果敢に攻め入っている文則作品を継承している、この流れの中で一部分でも思いの発露を見いだせている、救われているのかもしれない。結構重いのですが、中毒性に侵されている。ははは。

  • 自らの心の内を覗いたところで、自分すら気付いていない悪意が潜んでることはある。誰かの人生を救出しているように見えて自分への利用価値を計ってしまったり、かけがえのない人だと思いながらも憎しみが生まれていたり… 無意識のうちに顔を出し目に映る頃には波紋のようにゆるゆると大きく現実に広がる。事件はセンセーショナルなものだったけど、事件の中身はリアリティがあって面白かった!

  • 僕はそう、ただ状況の違和感を埋めるためだけの言葉を言う。僕がこの偶然に意味を感じることで、自分の行為を正当化しようとしてるのに気づきながら。まるで「運命」という言葉で自分を許すように。

  • タイトルが作中で出てきた時に鳥肌がたった。
    私にとっては大好きな作品。

  • ラスト100ページくらいからずっと涙が止まらなかった。
    様々な想いや葛藤、人間の奥底にある闇をなぜこんなにもうまく表現できるのか。中村文則の作品はどれも堪らない。

  • 市高町で、連続通り魔事件が発生します。犯人は“コートの男”と呼ばれ、テレビで報道されることにより、模倣犯も現れます。
    そんな事件を、市高署の中島と、捜査一課の小橋たちが捜査します。

    しかし、事件は単純な通り魔ではなく、複雑な事情がありました。

    人間は、どうして罪を犯してしまうのでしょうか。なぜ、悲惨な事件が起きてしまうのでしょうか。
    物語の後半では、事件の謎解きとともに、人間の性質や、宗教、神の存在にも話が及んでいきます。

    人間は、悪を持つことも、狂気に誘惑されることもあります。子供時代の暴力性を現実にしてしまったと苦しみ続ける中島は、そんな犯人に「やめさせたい」から事件を追っているように感じます。そして、犯人を、自分を救おうとしています。

    不幸、悲しみ、狂気。
    そんなものも、“あなた”は楽しんで味わうのでしょうか。
    人間はどうすればいいのでしょうか。

    人間は誰しも“誰かの優しさに触れたい“(p485)と望んでいて、それさえあれば生きていけるのかもしれないと思いました。
    中村さんの小説は、真っ暗な闇のなかに一筋の光を投げかけて、救ってくれる気がします。

    警察小説も純文学も好きなので、両方のおもしろさが合わさったこの作品は大好きです。

  • 中村文則作品を読むのは16冊目。

    もうめっっちゃくちゃおもしろかった!!!!
    最初は読みながら「すでに映画化を意識してるんじゃないすか~!?」って思っちゃうくらいキャッチーな感じ。警察ものだし。主演:二宮和也って感じ。
    中村文則、昔は犯人目線が多かったけどついに犯人を追い詰める警察ものか~。なんだか感慨深いな~。主人公は冒頭から怪しい過去持ってるけどまぁこういうのもよくあるよくある……なーんてね、読み進んでたんですよ。中島と小橋の掛け合いもめっちゃおもしろいしね。小橋:吉高由里子って感じで。掛け合いに声出して笑っちゃうくらいでね。

    でもね、読み進むにつれて、視点が、変わるの。犯人のものに。

    あんなに(個人的には)キャッチーで読みやすかった警察もの小説が、“人間”の小説に変わる。思ってもみなかった人間が犯人で、その犯人には壮大なドラマが、いや、ドラマと一括りにするとチープになってしまうから嫌なんだけど、表せる言葉が出てこない。バックグラウンド、激情、大恋愛、どれもしっくりこない。だって人生なんだよ。犯人の人生が、描かれてて。

    さて主人公は誰でしたっけね、と思わされる。これは映画化してしまったら犯人にいいキャストを当てすぎてキャストで犯人がバレてしまう可能性があるのですごく注意してほしい。個人的には忍成修吾くんか、もうちょい若かったら賀来賢人くん。
    この犯人目線になったときがまさに中村文則作品というか。感情の揺れ動き方が本当にリアルで。あとたぶん毒親育ちだからだと思うんだけど、犯人も犯人の恋人も本当に上手く生きられなくて。普通に幸せになれないというか。上手に愛されることができないし、愛すことも出来ない。悲しいよ。「殺してやる、復讐してやる」って思ってから、中々殺せずにいるところもリアル。結局激情型になれないというかさ。ストッパーばかりついてて、誰かに背中押されてやっとやるんだよ。そんで、結局たがが外れるみたいになし崩しになっちゃう。最初の一歩を踏み出したばっかりにね。

    すごくツラいよ。つらいけど悲しいラストじゃない。生きていく人間はいる。立ち向かって、踏み出していく人間がいる。希望がある。人生は続く。それがもう、めちゃくちゃいい。
    教団Xもハッピーエンドだと感じたけど、この作品もハッピーエンドです。
    しかし驚いたのはこの作品が教団Xと同時期に書かれたものだってこと!!すごくない!?すごすぎるよ!!あんな大長編書きながらこんな大長編も書いてたの!?頭ごちゃごちゃにならないのかな……めっちゃすごいと思う……。

    おまけ小説もめちゃめちゃ可愛くて笑えて良いです。やっぱり中島と小橋の掛け合い好き~!!
    また、今回の小説を読んで中村文則に対しての好きが増しました!!大好き!!いつも素敵な小説をありがとう!!

  • 登場人物も多く消化不良だったので、再読したが筋も入ってきてより面白い。今までとは少し味が違う感じ。素晴らしい。

  • コートを纏った男による連続殺人事件の中に含まれた真実。

    人が人を殺すには憎しみだけが根源になるわけではない、ここでコールタールのように黒く澱んだ愛が、人の命を奪っていく。

    一気に読み進んでしまった。
    そうして思った、愛と救いは本当に神から与えられるものなのだろうか。

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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