組織の思考が止まるとき ‐「法令遵守」から「ルールの創造」へ

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620320373

感想・レビュー・書評

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  • 著者は東京地検特捜部、法務省法務総合研究所総括研究官等を経た、日本における組織のコンプライアンスの第一人者(巻末の著者紹介より)。

    コンプライアンスを単に「法令遵守」ではなく、「社会の要請に応える」という観点で取り組むべきと解説する。

    自分は現状「法令順守」を推進する部署に所属しているが、思考を停止して形式的な「法令順守」を振りかざし、クライシスマネジメントにあたらないようにしなければならないという教訓となった。

    <取上げられた事件>
    ・郵便不正事件(証拠改竄)
    ・筋論クレーマーへの対応
    ・年金改竄問題
    ・医療過誤問題
    ・「あるある」の「納豆ダイエット」
    ・「朝ズバ」の「不二家パッシング」
    ・ライブドア事件
    ・村上ファンド事件
    ・不二家:消費期限切れ原料使用問題
    ・トヨタ:プリウスリコール問題
    ・花王:エコナ問題
    <成功例>
    ・キリンHD:プラスアイ商品に関する取組み

  • とかくコンプライアンス=「法令順守」と考えられがちであるが、その考え方が組織を萎縮させ、思考停止を起こし、問題が発生した場合に間違った対処を行って取り返しのつかない結果を引き起こすと説明する。コンプライアンスは、「社会の要請に応えること」であり、組織の目的・存在理由を念頭に置いておくこと、それを感じ取るセンシティビティーが重要であるとする。単に法律を守るということは枝葉末節に過ぎず、そこに拘ってしまい危機管理対応を間違った具体例(年金改竄、医療過誤、マスコミの捏造問題等)を挙げて実証していく。著者の出自である検察の郵政不正事件についても頁を割いて解説する。社会は何を求めているのか・・・。

  • 西欧近代主義の産物である近代的な組織。

    その組織が陥ってしまう組織防衛的な教条主義。

    官民を問わず、重大な不祥事が生じたとき、第三者委員会委員という立場でコンプライアンスをプラス思考で適応してきた著者。

    クライシスマネジメント、ルールの創造へと新たな提案をされている。

    日本国民がしっかりと読んで欲しい著作である。

  • コンプライアンスは「法令遵守」ではない、というのはおっしゃるとおり。。しかし社会の要請を見極め、それに応えていくことは本当に難しい。

  • 著者が関わった第三者委員会での視点が面白い。不二屋、社保庁、「あるある」(関西TV)と「朝ズバ」(TBS)の違いなど(TBSに問題)など。
    単純な善悪二元論ではすまないが、現代マスコミへの対応を含め、どう対外発信するかをかんがえさせられる本

  • コンプライアンス、法令遵守でさえ、所詮は「手段」に過ぎないんだと認識した。どんなことでも大切なのは、やはり「目的」そのもの。「手段」としてのコンプライアンスが「目的」化するから、おかしくなる。
    コンプライアンス、法令遵守の「自己目的化」が、さまざまな弊害を生んでる。確かに、そのとおり!!
    自分たちで作りだしたルールに、盲目的に縛られているばかり。だったらそれを変えればいいのに、そうしようとする力・アクションが湧き出してこない。だから、ますます上意下達は強化され、一方で現場のモチベーションは下がるばかり。
    どうすれば、現場から上を突き動かすことができるようになるのか?それが課題。



    ・法令・規則であれ規範・倫理であれ、上から下にその「遵守」を命令し、何も考えないで盲目的に従えばよいという姿勢が世の中をおかしくしている。
    ・「法令遵守」から「社会的要請への適応」への転換のためには、まず、自分たちを縛っているルールが実態に適合していないとき、それを単純に「遵守」するのではなく、実態に適合していないことの指摘を行うことが必要だ。(略)重要なことは、自分たちの組織としての活動に最も適合したルールを積極的に作っていくこと、つまり、「ルールを創造すること」だ。

  • 著者が某ビジネススクールの社内研修にたったことを読んで、以前から興味を持っていた。検察出身の著者は大阪地検が扱った郵政不正事件を中心にして、検察の組織のあり方を徹底的に追求しながら、世の中の組織のコンプライアンスのあり方を説いている。
    多くの組織の第三者委員会に参加して指導してきた著者は、コンプライアンスは「法律遵守」ではなくて、「社会の要請に応えること」であると言い切る。
    この説明はとても納得が行くもので、盲目的な法律遵守は返って本当のコンプライアンスに適さないとも言っているのは、まさに意を得た感じがする。
    フルセットコンプライアンスの五要素として、・社会要請に応える方針、・組織体制、・組織が実際に機能すること、・治療的コンプライアンス、・環境整備コンプライアンスをあげる。
    また実例として、官公庁、医療、放送メディア、証券市場で起きたコンプライアンス関係の問題を使って説明するので理解しやすい。
    ただ出身母体への思いの強さからか、検察体制改革への提言が何度も繰り返して出てくるので、少し疲れる。
    ただ全体的には、このような問題を実地で扱う方が記した本として、大変示唆に富んだ内容だと感じた。

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著者プロフィール

桐蔭横浜大学法科大学院教授。弁護士。1955年生まれ。1977年東京大学理学部卒業。1983年検事任官。東京地検検事、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2005年桐蔭横浜大学コンプライアンス研究センター長に就任。2006年検事退官、弁護士登録。警察大学校専門講師、防衛省や国土交通省の公正入札調査会議委員なども務める。不二家信頼回復対策会議議長などとして多数の企業の危機管理対応に関与。(株)IHI社外監査役も務める。著書に『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書、2007年)、『入札関連犯罪の理論と実務』(東京法令出版、2006年)などがある。

「2009年 『証券市場の未来を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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