- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620327839
感想・レビュー・書評
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2021年6月~2023年6月までの時事をとりあげた週刊誌連載のコラム集。ウクライナ紛争が最も大きな事件でありこの書籍名なのだが、これだけを深く掘り下げていくものではなく、アフターコロナ、オリンピック談合、敵基地攻撃能力保有、入管法改正、LGBT理解増進法、こども家庭庁、原発再稼働、食糧危機などを切り口に、政府や官庁、財界など、社会の支配層の行いに向けて舌鋒鋭く切り込んでいくものだ。著者はこういった社会時評を途切れることなく著し続けているが、文章を世に送るのは作家だからだとしても、社会の支配層に対して常日頃監視を怠らないのは、それが市民としての責務であるからと考えているからだろう。ともすれば上のものに従うことが美徳という慣習の強い日本人ではあるが、指導者を選ぶと同時に指導者の行いを監視し、誤っていることがあれば批判もする、それこそが民主主義の本質であり、著者はそのことを同じ市民であるわれわれ読者に自ら行動で示しているのだ。しかし初期の頃の時評集と比べると、本作には著者が社会に向けて抱いている無力感のようなものを強く感じてしまう。それは人間の社会の運営が限界にきていること自体による無力感というよりも、国内では安倍元総理以降顕著になった詭弁と強弁がまかりとおり、憲法違反のような事案を閣議決定で決めて押し通すことが可能になった国会の死であり、海外では国連の安全保障理事国の常任理事国当事者が戦争をおっぱじめ誰にも止められないという、議論の死、道理の死という現実にこそあるのではないかと思う。つまり道理が崩壊した世界にあって、物書きが理性に訴えるという行為に対する無力感のようなものを感じるのだ。人間同士が理性で分かり合えないなど世も末であるが、これまでの歴史の中で人類は何度となく「世も末だ」と言ってきたわけだ。いつかは変わることができると信じて、読書などを通じて知見を深め問題意識を持ち、著者と同様に社会へのまっとうな批判精神を持ち続けていきたいと思う。
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日々の目先の忙しさに追われて無関心で済ませてきたあれこれが、高村さんの冷静な視点からクリアーに照射され白日の下に。2024年は、普遍的な原理原則と物事の道理を失わず、日々のニュースに追われず「スマホを閉じて情報を遮断し足下の生活に専念することで理性を磨く時間」を持つことに努めよう。それにしても、ここまで日本も世界も劣化していたのか。毎回のことながら、高村さんのまとめた時事評論、唸らされる。大したものだ。
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2021年6月から2023年6月の2年間で、世界ではウクライナ紛争が、国内では集団的自衛権の行使は可能になるは、あまつさえ原発に回帰までしてしまった。
有権者の無力感を思い知らされる出来事ばかりだ。そんな中で普遍的な原理原則と物事の道理で、世相を見つめる高村先生を倣いたいものだ。 -
その時々の時事問題に対して、高村さん怒り爆発の週刊誌辛口コラムをまとめた本。
ただ、時事ネタなので古い内容のものもある。出版が2023年なのに、ロシアがウクライナに侵攻しそうだとか、眞子さんが結婚することについてや、国民の多数が反対しているのにオリンピックを開催するのか、といったことに怒りを爆発させている。
また新聞やテレビのニュースなどを見たり聞いたりした事に対して、思った事や考えたことを述べたものなので解析や深堀をするものではない。どちらかというと問題提起の立場なのでしょう。
時事問題を対象にしたコラムであるならば、書籍というより新聞や週刊誌でリアルタイムに読む方が受け入れやすいと思う。書籍とするのであればその後の経過や深堀した内容を追記してほしいと思ってしまった。 -
星3つと半分。
高村さんといえば、30年前に「マークスの山」を読んで以来2冊目だ。
日本を含めた国際情勢をわかりやすく書かれている。にもかかわらず、心ここにあらずみたいにして読んでしまった。これは読む側に政治経済にもうひとつふたつと関心が浅いことが起因している。でも、経済政治を関心を持つことの大事さとその面白さももたらせてくれた。この本を契機に今後は経済書を読むことを心掛けたいと思う。