- Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622046745
作品紹介・あらすじ
デブのシャルル・メルランは軽率さのために身を誤った、と友人の語り手はいう。「だがわが身をふり返れば、私自身もまた例の陰気な宿命論によって、ほぼ同じ結末にみちびかれたのだ…」フランスの小さな町に育った男女は思春期を過ごし戦争を生き抜く。切ない思い出、失われた愛と別れ、秋が深まるたびに町に立つサン=マルタンの縁日には「黒いピエロ」の姿があらわれる。作家自身がいちばん気に入っているというこの作品は、移りゆく季節をフーガのように語りながら人生の苦い真実をとらえた、小さな「ロマン」の傑作である。
感想・レビュー・書評
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薄靄のように漂うメランコリーが美しく静謐な情景と共に視覚にうったえかけてくるので、一篇の上質な映画を見終わったような感覚をもたらします。とても読みやすく、感覚器官への刺激だけですらすら読めてしまうので、ちょっと物足りなくはありますが、ノスタルジックな、切なき甘い陶酔に浸れます。
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諸行無常。
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「自分の生活の廃墟」こんな、しっくりきた言葉は初めてかもしれない。
壊れたもの、失ったもの、無いものばかりが積み重なっていく。 -
もう1度静かなところで読みたい
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作者ロジェ・グルニエが一番気に入っている作品、らしい。
舞台はフランスの小さな町、
幼友達、大金持ちの家の子、おデブのシャルル・メルラン。
その両親はちやほやと異常なほどの愛情を注いでいる。
語り手の「私」はシャルル・メルランをおおいに軽蔑しながらも…
人生においての選択、
一生懸命選んだり、打算でえらんだり、
あきらめてこっちにしたり…
でも過ぎてみるとどういう風に選んだとしても
「もしもあの時…」とふと考える。
付き合いながらも馬鹿にしている、
自分のほうが大層立派だと思っている、
こういうことって心当たりあるけれど、
実は相手も…ということは
もちろんあるだろう。
誰よりも通じ合っている、他に何もみえない、
と思えた瞬間があっても
その状況を冷静に判断しているという現実。
巻末の翻訳者山田稔さんとグルニエさん遭遇話も
大変面白い。
ロジェ・グルニエ!、
宝物のように思える作品群、
「出会ったなあ!」と言う嬉しい感慨でいっぱい。
さらに翻訳をしている山田さんのエッセイも
面白いことを知ったぞ。