黒いピエロ (lettres)

  • みすず書房
3.86
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本棚登録 : 59
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622046745

作品紹介・あらすじ

デブのシャルル・メルランは軽率さのために身を誤った、と友人の語り手はいう。「だがわが身をふり返れば、私自身もまた例の陰気な宿命論によって、ほぼ同じ結末にみちびかれたのだ…」フランスの小さな町に育った男女は思春期を過ごし戦争を生き抜く。切ない思い出、失われた愛と別れ、秋が深まるたびに町に立つサン=マルタンの縁日には「黒いピエロ」の姿があらわれる。作家自身がいちばん気に入っているというこの作品は、移りゆく季節をフーガのように語りながら人生の苦い真実をとらえた、小さな「ロマン」の傑作である。

感想・レビュー・書評

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  • 薄靄のように漂うメランコリーが美しく静謐な情景と共に視覚にうったえかけてくるので、一篇の上質な映画を見終わったような感覚をもたらします。とても読みやすく、感覚器官への刺激だけですらすら読めてしまうので、ちょっと物足りなくはありますが、ノスタルジックな、切なき甘い陶酔に浸れます。

  • 諸行無常。

  • 「自分の生活の廃墟」こんな、しっくりきた言葉は初めてかもしれない。

    壊れたもの、失ったもの、無いものばかりが積み重なっていく。

  • もう1度静かなところで読みたい

  • 作者ロジェ・グルニエが一番気に入っている作品、らしい。

    舞台はフランスの小さな町、
    幼友達、大金持ちの家の子、おデブのシャルル・メルラン。
    その両親はちやほやと異常なほどの愛情を注いでいる。

    語り手の「私」はシャルル・メルランをおおいに軽蔑しながらも…

    人生においての選択、
    一生懸命選んだり、打算でえらんだり、
    あきらめてこっちにしたり…

    でも過ぎてみるとどういう風に選んだとしても
    「もしもあの時…」とふと考える。

    付き合いながらも馬鹿にしている、
    自分のほうが大層立派だと思っている、
    こういうことって心当たりあるけれど、
    実は相手も…ということは
    もちろんあるだろう。

    誰よりも通じ合っている、他に何もみえない、
    と思えた瞬間があっても
    その状況を冷静に判断しているという現実。

    巻末の翻訳者山田稔さんとグルニエさん遭遇話も
    大変面白い。

    ロジェ・グルニエ!、
    宝物のように思える作品群、
    「出会ったなあ!」と言う嬉しい感慨でいっぱい。
    さらに翻訳をしている山田さんのエッセイも
    面白いことを知ったぞ。

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著者プロフィール

Roger Grenier(1919-2017)
フランスの小説家、ジャーナリスト、放送作家、編集者。
ノルマンディ地方のカーンに生まれ、フランス南西部のポーで育つ。大戦中はレジスタンス活動に関わり、戦後アルベール・カミュに誘われて「コンバ」紙の記者としてジャーナリストのキャリアをスタート。その後、ラジオの放送作家などを経て、1963年よりパリの老舗出版社ガリマールの編集委員を半世紀以上務めた。1972年、長篇『シネロマン』でフェミナ賞受賞。1985年にはそれまでの作品全体に対してアカデミー・フランセーズ文学大賞が授与された。刊行したタイトルは50以上あり、とりわけ短篇の名手として定評がある。邦訳は『編集室』『別離のとき』(ともに短篇集)、『黒いピエロ』(長篇)、『ユリシーズの涙』『写真の秘密』(ともにエッセイ)など。亡くなる直前までほぼ毎日ガリマール社内のオフィスで原稿に向かっていたが、2017年、98歳でこの世を去る。本書は生前最後の短篇集。

「2023年 『長い物語のためのいくつかの短いお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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