測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622087939

感想・レビュー・書評

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  • 仕事などで様々なものを測定する測定執着に警鐘を鳴らす図書。簡単な測定で人事評価やペナルティを設けると必ず不正が起こり、測定された人の仕事のパフォーマンスは落ちる。何を測定したいのか、測定には現場の人間も関わっているのか、測定できないものを評価できているかどうか、常に測定を検証することが大事と知った。仕事で報告、会議が増え、上層部は部下を信用せず、行政的に突然、異動してきたトップが測定値のみ信用し、様々な人間のパフォーマンスが落ちていく…という負の連鎖もありうるので常に測定は注意したい。

  • ●測定されるものは、実際に知りたいこととは何の関係もないかもしれない。測りすぎる事で起こる悪影響。


  • 世界中の経営者、管理者の必読本にすべき名著。「測れるものは改竄できる」といった原理原則が、昨今の不祥事につながっていることをもっと危惧すべきだ。

  • 測定することは数字の改竄などの様々な弊害を産み、必ずしも有効ではないという話。それはごもっともで納得感ある話なのですが、あれもそうこれもそうという列挙が長く、またそれ事態有意義な話でもないので冗長な印象を受けました。あるあるネタでなくもう少し構造的な話が読みたかったですね。
    序章と結論だけはみんなに読んで欲しいですが、序章と結論だけ読めばいい気がします。

  • データをもとに国の政策や企業経営、従業員の報酬体系がが決められていくというのは、当然のことだし、科学的で良いことと思われている。しかし筆者は、測定に執着しすぎることには多くの悪い側面があるという。本書では、「測りすぎた結果かえって悪くなった」例がいくつか紹介されているが、ここではアメリカの学校の事例を取りあげたい。

    2001年にアメリカで、通称「落ちこぼれ防止法」が施行された。これは、成績に関して民族間の根強い格差が存在していたため、その解消を狙って作られた法律だ。
    この法律ものとで、毎年3年生〜8年生に算数、読解、科学のテストが受けさせられた。テストの結果、特定の生徒のグループの進歩が見られない場合、学校には罰則が与えられる。これにより成績の悪い学校や教師は頑張るはずだから、成績は改善されるはず。

    しかし、10年以上経ったいま、成績の改善効果は証明されなかった。

    何が起こったのか?まず、教師は、テストの対象の科目しか教えなくなった。つまり、歴史や音楽、体育といった科目がおざなりにされたのだ。また、テスト対象の教科でも、幅広い認知力の育成よりも、テスト対策が重要視された。そして、学力の低い生徒を「障害者」として対象から除外して平均点を上げようとしたり、さらには、教師が生徒の回答に手を加えたり、点数の悪そうな生徒の答案用紙を捨ててしまうといったあからさまな不正も行われた。

    測定は役に立つ。テストをすれば、教師は生徒のつまづきポイントが分かるので次の指導にフィードバックできる。でも役に立つのは、測定が「重要性を持たない」ときだ。測定結果が重要になると測定自体が捻じ曲げられてしまう。

    アメリカ人社会心理学者の名前をとったキャンベルの法則というものがある。「定量的な社会指標が社会的意思決定に使われれば使われるほど、汚職の圧力にさらされやすくなり、本来監視するはずの社会プロセスをねじまげ、腐敗させやすくなる」

    この本ではほかにも医療現場や軍、ビジネスにおける測りすぎの事例が紹介されている。測定基準を使用する場合に気をつけるべき点をまとめたチェックリストも載っており、読者が職場などで測定を利用するときにも参考になるはずだ。

  • レビューはブログにて
    https://ameblo.jp/w92-3/entry-12517610934.html

  •  組織や事業の資源や成果の「測定」が、誤った評価や活動につながることについて事例を中心に述べた本。実際には測定そのものというより、「説明責任」を果たすため測定基準を定めることで生じる悪影響についてわかりやすく論じた本といえる。
     繰り返す活動や継続する事業、組織をの良し悪しを評価するために、数値を用いた客観的基準を定めることは珍しいことではない。私は仕事の経験上、新しい事業の立ち上げや機器や消耗品の更改の必要性を訴えるため、これまでの問題点や課題を整理した証というか、説得力を与えるため、新たな数値指標を持ち出すという場面を多く見かける。
     本書では、主に前者の評価基準について考えている。活動そのものがルーチンなのに、組織はそれ自体継続しているのに、成果を「説明」するために測定をし、評価を受けるという管理仕事がついて回るという弊害がある。さらに、測定数値の改善を目標として設定したがために、活動や組織の目的や貢献に関係ない、むしろ相反することに重点を置くようなことが生じてしまうという不本意を検討しており、最後にそのようなことが起きないようにするチェックリストと、「特効薬はない」という金言でまとめられている。
     読んだ当初から私がひっかかたのは、「説明責任」の意義と必要性である。説明責任を真っ当に果たすのであれば、まず、説明する相手に前提を理解させる必要があるのではないか。説明する対象が相手が何を求めているのかわからない、または不特定多数に説明することを前提にするから、端的に、あるいは口当たりも耳当たりもいい数字に執着するのではないだろうか。特定の立場に絞り、自由な発言を妨げられた説明者が、自由な立場で評論する相手の好評を得る、あるいは素通りさせるためには、数字に頼るしかないだろう。しかし、そんなものは必要なのだろうか。日本語との齟齬かもしれないが、accountability という言葉の語感は正しいのか考え直したい次第である。
     さて、私がより多く見受ける、資源の新規投入に必要な説明材料としての測定基準は本書ではほとんど触れられていない。こちらの方は、創造的であるがあまり意味はなく、評価が継続され、費用対効果を検討する材料に使われることは少ない。なぜなら、資源の投入という目的に特化したものであり、場当たり的なものだからだ。だからといって害がないわけではないだろう。これについては改めて調べ考える価値のある問題として提起したい。
     リーマンショックの背景で挙げられた、「神は、破滅させたい人間にまず数学を教える」という言葉は衝撃的だった。

  • 「測りすぎ」ジェリー・Z・ミュラー著 松本裕訳|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/257191

    みすず書房のPR
    多くの人が漠然と感じているのは、業績評価が問題の本質を外れ、文脈を奪い、人間による判断の微妙さを軽視して、システムのメカニズムを知っている者だけの利益になっている、ということだ。本書は、この傾向がどこから来るのか、なぜこの傾向が非生産的なのか、なぜわれわれがそれを学ばないのか、をはっきりと説明している。…あらゆる管理職が読むべき本。
    ティム・ハーフォード(エコノミスト。『まっとうな経済学』)

    「測定基準の改竄はあらゆる分野で起きている。警察で、小中学校や高等教育機関で、医療業界で、非営利組織で、もちろんビジネスでも。…世の中には、測定できるものがある。測定するに値するものもある。だが測定できるものが必ずしも測定に値するものだとは限らない。測定のコストは、そのメリットよりも大きくなるかもしれない。測定されるものは、実際に知りたいこととはなんの関係もないかもしれない。本当に注力するべきことから労力を奪ってしまうかもしれない。そして測定は、ゆがんだ知識を提供するかもしれない――確実に見えるが、実際には不正な知識を」(はじめに)
    パフォーマンス測定への固執が機能不全に陥る原因と、数値測定の健全な使用方法を明示。巻末にはチェックリストを付す。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08793.html

  • 測定には良いところもあるが、負の側面もある。この負の側面を無視して数値指標を作り続けるような状態を「測定執着」と読んでいる。
    様々な分野において、測定が成功した例と「測定執着」と思われる上手くいっていない実例を示した本。

    数値化して管理する事により、数値化されなかったものが放っておかれる、数値をあげるために本末転倒な行動が起きてしまう、かけたコストに対して効果がない、などの例が満載。

    結論のパートでは、測定すべきか否か、測定した項目をどう使うべきか自問するためのチェックリストを提案している。

    数値目標の設定と達成を、仕事の「目的」ではなく「手段」として行いたい方々にお勧め。

  • 良かった。簡潔に様々な事例が散りばめられていて、読みやすくわかりやすい。そして嬉しくないことだが、非常に共感することが多い。測ることの信頼性、妥当性、測ったものの使われ方について、もっと我々は体系立てて理解し、常識として共有しないといけない。官僚主義が進むことによる疎外の問題、と考えれば社会学者や社会心理学者は無視できない問題がたくさん含まれている…

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