ヤマケイ文庫 K(ケイ)

著者 :
制作 : 遠﨑 史朗 
  • 山と渓谷社
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本棚登録 : 55
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635049177

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  • 谷口ジロー『K』ヤマケイ文庫。

    谷口ジローの連作山岳劇画の傑作がヤマケイ文庫から『KAILAS』を加えた8話収録の完全版で復刊。巻末にプロ登山家・竹内洋岳による特別寄稿と、山岳漫画評論の第一人者であるGAMOの文庫解説を収録。

    ヒマラヤでレナと二人でひっそりと暮らしながら、時に遭難者の救助に挑む国籍も素性も不明の天才クライマーKの物語。その正体はかつてK 2北壁で遭難し、敗北を味わった日本人クライマーの一ノ瀬高志ではないかと思われるが……

    ヒマラヤの山々の高度感や厳しさと山肌や岸壁一枚一枚の違いを描き分け、クライミング場面にリアリティを感じさせる谷口ジローの作画力には圧倒される。

    自分の持っている単行本は1988年にリイド社から刊行された『KAILAS』の未収録版だったようだ。谷口ジローのファンでありながら、まさか30年以上の時を超え、未読の未収録作品があったとは全く知らなかった。

    『K2』。前人未踏のK2北壁で遭難した石油王の息子を救助すべく単身厳しい壁に挑むK。誰もが救出は困難で、手足の切断は免れないと思ったのだが……

    『PUMO RI』。何者かに襲撃されて拉致されたKはプモ・リへの直登を強いられる。巨大な一枚岩の上にあったのは……足を銃撃され、登山用具も食糧も失ったKは単身頂上を目指す。

    『EVEREST part one/two』。誰も近付くことの出来ないエベレスト南西壁のバッドレスで滑落し、亀裂に引っ掛かったシェルパ頭の英雄タイガーの遺体を回収するためにKは単身エベレストに挑む。Kのバットレスへの挑戦は長期に亘り、過酷を極めるが……

    『MAKALU part one/two』。ローツェ北壁に挑むイギリス隊のポーターの仕事を得たKは。そんな中、日本隊の片平有也がマカルー西壁で雪崩に襲われ、遭難する。明らかになるKの過去……リイド社から刊行された単行本はここで終わるのだが、続きがあったのか。

    『KAILAS part one/two』。初読み。未踏峰のカイラスで大金持ちの息子が遭難する。息子の父親は大金をちらつかせ、シェルパたちに息子の救助を依頼するが……どうしても大金を必要とするシェルパの若者の代わりにKが何者をも拒み続けるカイラスを目指す。

    プロ登山家・竹内洋岳『特別寄稿 “K”という未知の存在』。ヒマラヤでの遭難で九死に一生を得た登山家ならではの視点で本作の魅力とメッセージを伝えてくれる。

    GAMO『解説 異才のひと 谷口ジロー』。山岳漫画・小説・映画の第一人者で、『バーチャル・クライマー』という面白いサイトを運営するGAMOによる谷口ジロー作品の解説と山岳漫画の系譜が解り易く紹介されている。

    もしかしたら、谷口ジローの『神々の山嶺』も上下分冊か合本版でヤマケイ文庫から刊行されるのか。レア度という点では、村上もとかの『クライマー列伝』の刊行が先かも知れない。

    定価990円
    ★★★★★

  • K2 プモリ エベレスト カイラス マカルー
    K2のことは映画をいくつか見たくらいでよく知らないが、ヒマラヤの山々はその地域に住む人々にとっては、神々の住むいただきであろう。そもそもヒマラヤとは雪の棲家であり人間が登りに行くところてはないしほとんどの高峰、ヒマル(山、雪山、雪を冠してなければヒマル、マウンテンとは言わない、と言われたことがある)は雪が載っているだけではなく様々に畏敬と信仰の対象であるから足で登ったりしないだろう、、、特に欧米で作られた登山家目線の遭難や救助のドキュメンタリーなどを見てとても気になっていた。違和感なのか正義感なのかなんなのかわからないモヤモヤした気持ち、を、強い確信というか、1人の人間としてどう自然と向き合うのなかを考える道筋をしめしてくれた。この谷口ジロー氏の真面目できめ細かく大胆で力強い画、遠崎史朗氏の原作は、答えがないことなれど自分の生き方自分の足の踏み出し方は自分が決めること示唆してくれる。フィクションが入っていて現地や登攀ルポでもない、
    イマジナリーなところも非常に奥深く、素晴らしい作品。山登らないひとでも存分に堪能できる。岩のバンド、雪や氷の描写全てすごい。

  • K2の北壁 アッラー・フェイスの北壁 表皮は蘇生できる 野獣は戦う時も全力なら休む時も安全な場所を求め、全力で休息をとる。 プモ・リ(娘の山) ダイヤモンドウイング カレーのルーを刺激剤として心臓の動きを活発化させる 岩場職人か石切り職人のやることだ 隔世の感がある

  • 中々読ませる魅せる漫画/コミック/劇画でありました。

    谷口ジローが、ビッグコミックあるいはオリジナルで、犬の話を連載していた頃は余り、関心がなかった。

    孤独のグルメ、歩く人それに歩く人をターゲットにした新美の巨人たちの番組などで、最近、谷口ジローがマイブーム。
    マイブームってもう死語か?

    ヴェネツィアで、知らなかった世界を知り、その勢いで本書Kにたどり着いた。

    残念ながら文庫本サイズなのだが、世界観は伝わる。
    でもせめて面責比で2倍、長さ比√2のサイズで読みたい。
    ルビももう少し認識しやすくなるだろう。

    Kの世界は、8000メートルクラス。
    当方は、富士山の剣ヶ峰の3776メートル、某所の3800メートルが地に足がついた最高の高さなので、ヒマラヤのその空気の薄さは分からない。

  • 「ビッグウィングに乗り逆立ちで岸壁を登る」「生唐辛でマイナス170度のドラゴンに耐え抜く」奇跡などは然う然う起きない。金さえ払えば息子の命を助けてもらえると考える資産家。人の思考はそう単純ではない。「人間なんて所詮自然の力に比べれば弱いもの」ありふれた言葉。”所詮”はマンガ、されど著者の思いが込められた作品。遭難で同伴者を亡くし、素性を隠す。Kが救出に勤しむに至った経緯。登る前の慎重な見極め。言葉になっていないこと。自然への畏敬。人が安全に暮らせているのは様々な偶然の織りなし。何を読み取るかはそれぞれ

  • なかなか凄まじい漫画だった。孤独のグルメを書いた人とは、驚きだ!

  • 凄まじい山の物語

    私は山を知らないが、山のプロが言うんだから、多分それはきっと真実の匂い。

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著者プロフィール

1947年、鳥取県鳥取市出身。アシスタントを経て、1975年『遠い声』で第14回ビッグコミック賞佳作を受賞。『「坊っちゃん」の時代』シリーズ(関川夏央・作)で手塚治虫文化賞マンガ大賞、『遙かな町へ』『神々の山嶺』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。アングレーム国際漫画祭最優秀脚本賞など、海外でも数多くの賞を受賞。

「2022年 『サムライ・ノングラータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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