ヤマケイ新書 山岳遭難の教訓 --実例に学ぶ生還の条件-- (ヤマケイ新書 13)

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  • 山と渓谷社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635510011

作品紹介・あらすじ

「自分だけは大丈夫」そう考えている多くの登山者に警鐘を鳴らす、山岳遭難の非情の現実。

感想・レビュー・書評

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  • 幻覚に翻弄され8日間も奈良の夏山を彷徨った69歳の男性。GWの白馬で雪崩に見舞われ全滅したパーティ、九死に一生を得たパーティ。夏山で被雷、その後骨折までしながら下山し自宅までバス&新幹線で帰った男性。


    私は「猫を膝に本を読んでいるのが一番幸せな時」を自認する根っからのインドア派で、
    この本は山で危険な目に合わないため、あるいは何かがあった際のなんとか生き残るための実例集、
    とくると、なんであなたが読むの??となりそうなのですけど、

    これがね、実に興味深い山の実話、だったんですよ。

    ライターでありベテラン登山家でもある羽根田治さん自身が、GW中の沖縄・西表島で、友人との登山の際、“高体温疾患”にやられ、冗談抜きで死ぬところだった、という章から始まるのですが、山好きな人には大事な資料であろうと思われる詳細な地図や装備したものの名称がさっぱりわからない私にも、無事生還後に、どこで何を間違ったのか、(それは前日から始まっていたりする。)プロの目から見ての反省点、偶然とか不運とかでは片づけられない具体的な検証に、うんうん、なるほど!と。

    雪山の過酷さに涙目になったり、いわゆる「山を甘く見た」という定型句とは全く違う、生と死との分かれ道に驚いたり、また、言い方は悪いけど一番面白かったのは、八日間の彷徨から戻れた男性が回復してから、詳しく語った現実と幻覚・幻聴の行ったり来たり。読み物として読むだけでも本当に怖くて、怖くて、また、その間中、食べものもなくてどう過ごしたのかと思うと食欲がなくて、何かを食べるという考えもなかった、と。でも、生還後には脱水症と低体温症、そして怪我の悪化で一か月半以上も入院、その後も事故のトラウマなのか、虚脱感と怠惰な生活の中で不機嫌になりがちで妻から「命を助けてもらった甲斐がない」と言われた反省したことなど、どれもこれも門外漢の私にはただホントに驚くことばかり。

    羽根田さんの意図とは違う読み方だったと思いますが、読めてよかった“力作”だと思います。

  • 低体温症における幻覚状態での遭難事例が、生々しく恐ろしかった。

  • 臨場感があって恐ろしく、不謹慎ながら面白くてあっという間に読み終えました。
    夏に道迷いで山中を幻覚を見ながら何日もさまよう話と、冬山で吹雪かれてあっという間に亡くなってしまう話が対照的で印象に残りました。
    装備や情報収集など事前の準備も手を抜かずちゃんとしようと改めて思いました。

    • うっちーさん
      これ!!読み出すと止まらないよね…わたし、これを去年の穂高のテントで読んでて眠れなくなりました。幻覚の話がリアルすぎて本当に恐ろしかった…。
      これ!!読み出すと止まらないよね…わたし、これを去年の穂高のテントで読んでて眠れなくなりました。幻覚の話がリアルすぎて本当に恐ろしかった…。
      2017/01/31
  • 山での遭難というのは冬の日本アルプスなどの話と思っていたけど、先日行ってきた丹波山村地域での遭難の話も掲載されていた。日帰り登山だったのですが、実はこの時ちょっとした道迷いをしてしまっていて、この本を読みながらそのことを思い出し、少し緊張した。
    どんな山行でも、慣れや油断は禁物。

  • 人間はこんなに”事前に計画すること”と”引き返すこと”が苦手で、過信、希望的観測を止められないものなんだということがよくわかる。とても興味深い。自分にそういうところがありすぎるくらいあることを忘れないようにするためにもときどき読み返してみたいと思う。

  • 過信した者が死んでいく。

  • 『起きてしまった事故をなかったことにするのは不可能であり、亡くなった人は還ってこない。幸い助かった人にしても、おそらく心に深い傷をおうだろう。しかし、教訓は残される』
    本文から引用して帯の裏に書かれたこの言葉が本当に胸にのこる。
    気をつけていれば避けられた事故もあれば、急な天候での予測不能の事態もある。どんなに慣れていても、また身近な山だとしても油断は禁物だということを分かりやすく解説してくれるいい一冊でした。

  • 複数の事例の遭難事故に至るまでの詳細が書かれている。いつでも自分がこの状況になり得るということを思い知らされる内容で、とても勉強になった。

  • 山岳遭難や事故の教訓。過ちや死者を冒涜することではない。
    今を生きている人が、そこから何を学び、同じ過ちを繰り返さないために学びを得られるかだ。避難や中傷、批判でもない。
    命に係わる山岳遭難を感情論で捉えてはいけないと思う。
    今を生きる人が、これから人生を歩んでいく人が取り返しのつかない事態にならないように。

  • 面白かった。
    けれども、読むのに時間が かかった。頭が小説を読むのに特化しているため、記録的な文章だと飽きてしまうんだと思う。

    それでも、事実を明確に記述し、状況の解説や証言によって、事故はどうして起きたか、どうしたら防げていたか、というのを考えられて面白かった。

    山登りする趣味は無いが、サバイバル自体には興味があったので楽しめた。

    だいたいはみんなうっかりなんだよなあ。大丈夫だろうで進んで引き返すという判断ができない。グループでも単独でも。
    雪崩でテントが埋もれてしまったのは人為というより天災すぎて避けようが無いが、他のはだいたいもっと気をつければになる。
    けれども、簡単には気を付けられないからこうしようで考えるしかないなあと思う。

    装備の見直しや登山計画書を出しておくとか、天気が崩れたら引き返すとか、予定が狂えば引き返すとか、そういうことに気を付けなくちゃいけないなと思った。
    安易にこうすれば大丈夫!ではなく、こういうことが起きるから気を付けようねのほうが学びとしていいなと思った。

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著者プロフィール

1961年埼玉県生まれ。ノンフィクションライター。長野県山岳遭難防止アドバイザー。山岳遭難や登山技術の記事を、山岳雑誌「山と溪谷」「岳人」などで発表する一方、自然、沖縄、人物などをテーマに執筆活動を続けている。おもな著書に『ドキュメント 生還』『ドキュメント 道迷い遭難』『野外毒本』『人を襲うクマ』(以上、山と溪谷社)、『山の遭難――あなたの山登りは大丈夫か』(平凡社新書)、『山はおそろしい――必ず生きて帰る! 事故から学ぶ山岳遭難』(幻冬舎新書)などがある。

「2023年 『山のリスクとどう向き合うか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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