最高裁回想録 --学者判事の七年半

著者 :
  • 有斐閣
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641125520

作品紹介・あらすじ

学者出身の最高裁判事は、何を見、何を聞き、何を考えたか。

感想・レビュー・書評

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  • 学者出身の最高裁判事は、何を見、何を聞き、何を考えたか。
     第一章 最高裁判事就任まで
     第二章 執務
     第三章 関与した事件から
     第四章 学者と裁判官の間で
     第五章 裁判以外の公務
     終 章 退官
     付 録 個別意見

    著者は、東北大学教授を退職後、最高裁判所判事に就任し7年半勤めた。
    本書は、数少ない学者出身の最高裁判事の体験談を、退官後に公にしたものである。
    公職にあったものが、何らかの形で回顧録を出すということは、とても良い事である。しかも、内容はなかなか面白い。
    なんの前触れもなく、最高裁からの打診があり、「裁判だけをやっていれば良い」という口説き文句を受け就任するが、実態はなかなかハードで、官舎と職場を往復する虜囚生活を送ることとなったという。
    著者は、何より参ったのは、長時間座り続けることの肉体的辛さだったという。そのような環境で膨大な件数をこなさなければいけない。

    まあ、あまり難しい法律論とかは、良く分からないが、職業対する興味本位であっても十分に楽しめる。また、著者が体験した最高裁の考え方というのも、今後のニュースを知る上で大いに参考となりおススメである。お堅いイメージの有斐閣の本ではあるが、敷居は高くない。

  • 最高裁判事は、囚人のような忙しさとのこと。囚人って一般的に忙しいと思われていないと思うけど、そういう比喩を使うところ、見事です。また、処分性の問題、原告適格の問題、行政庁の第一次的判断の問題、すなわち行政事件訴訟法改正を巡る記述は分かりやすい。加えて、学者が最高裁判例の形成に対し何ができ、何をなすべきかという問いへの答え(P146~)は一読の価値あり。

  • 行政法学者から最高裁判事となった藤田宙靖氏の回想録。
    最高裁判事の日常、最高裁の実情を知るうえで非常に有益。また、「最高裁判事として「お忙しいでしょう」と聞かれることがよくあったが、「忙しい」という言葉にはいささか違和感があって、そういった場合には、「あなた、懲役に服している囚人や、戦上で戦っている兵士に対して、お忙しいでしょう、と聞きますか?」と問い返したものであった」という感じで、ざっくばらんな筆致で書かれており(特に前半部分)、読み物としても面白い。

  • そんなに面白い本じゃない。
    個別意見がまとめて載ってるのはいいかもしんない。

  • とりあえず高いよねこれ!
    借りて読んだからいいけど、ちょっと高すぎやしないですかね…
    しかも内容の半分近くが注記と付録(藤田先生の過去の判例での意見を寄せ集めたもの)で占められていて、本編は230ページほど。
    傾向としては基本書に近いと考えるべきなのか…

    しかし、内容自体は面白かった。
    「学問」と「実務」がどうあるべきかという点について、藤田先生自信の見解を明確にしてくれていて、なるほどと思わせるところがあった。
    前からずっと思ってたことが氷解した感じでした。

  • 本の半分は最高裁の資料集なので読み飛ばしたが、残りの半分は非常に面白い。普段は見えない最高裁判事の生活ぶりがこれほどまでに書かれた本はこれまでになかっただろう。ここまで書いていいの?というくらい。暴露本と言ってもいいかも。

  • 後半は著者の各種個別意見が転載されているので、実質は前半分である。
    序盤は、著者が最高裁判事に就任するまでのいきさつや最高裁判事の仕事の流れ、内容等の概要が紹介されている。学者出身の裁判官であるから、裁判所内の文化に初めて接する時の感想は、一般人のそれと近いように思え、親しみを感じる。
    そして、次第に、仕事や最高裁の風潮に関する著者の考え方が展開されていく。
    司法の最高峰を垣間見るにはうってつけの一冊。

  • 【レビュー】
    これは一読すべき。法学部生でなくとも、およそ主権者たる国民は、主権の一部たる司法権の最高部で何が行われているかを知るべきだろう。結局そうした権力を構成するのは人間なのであって、人間くささが出ていることをよく知っておいたほうがいい。本書は読みやすさ、内容共に一級品である。
    【特記事項】
    ・宝塚市パチンコ条例事件判決、行政文書開示情報単位論事件判決など、行政法学者にひょうばんわるい判決を立て続けに出した第三小法廷に配属された。
    ・川口順子外務大臣(当時)とは、中学校以来の幼馴染。
    ★上層部の関係はすごいなあ。
    ・大法廷にも書記官室があるが、大法廷係属事件がないときに大法廷書記官が何をしているのか疑問に思って聞いたら「それは良い質問である」との返答。
    ★一体何をやっているのか知りたいなあ。
    ・「裁判長による期日外釈明」
    ・最高裁における口頭弁論はすべてしっかりと決まっており、時間も厳守で、儀式のよう。
    ・ありていにいえば、日々の事件処理に追われる余り、死刑制度の適否を合憲性のレベルで深く考察する時間的余裕がなかった
    ★最高裁裁判官がこう吐露してしまうくらいだから、本来これは大変まずいことだと思うが、仕方ないのだろうか。やはり事務作業軽減を図って上げて、真の憲法の擁護者たるべきようにさせるべきだろう。
    ・「不受理」は上告棄却とは全然違い、最高裁として何ら判断を下されていないという意味なので、このところを勘違いしないように。
    ・非嫡出子の相続分違憲問題も、学界は違憲合憲を論じるより、最高裁が違憲と判断した場合の後処理の問題を論じるべきだろう。
    ・「●●判例に徴して明らか」とする場合があるが、徴して、は意味があいまいで、ある事件でそれはおかしいと個別意見で指摘しようとしたら調査官から懇願されたのでやめた。
    ・ドイツの連邦憲法裁とおうしゅうじんけんさいばんしょの間には確執がある。
    ・憲法訴訟に関する憲法学者の発表で一番よくわかったと評判だったのは、戸松秀典によるもの。
    ・最高裁判事は、まず人事局長と内閣官房副長官の間で、次に事務総長と内閣官房長官との間で順次レベルアップした調整が行なわれる。最高裁長官と内閣総理大臣の折衝の際はすでに決まっている。
    ・牛込の長官公邸は、昭和の初めに富山の北前船廻船問屋馬場氏が、その子女の東京遊学の居所として建てた。
    ・長官代行になると、皇室会議への出席や、天皇外遊時の空港へのお見送りなどもある。

  • 違憲立法審査権という政治権力を握ることを了承したからには、
    最高裁も、常に司法におけるテーマを抱え、それを達成していくチームメンバー構成にしていなければならないことが伺える。
    民刑家少専門機関からの脱皮が必要なんだなあと。
    ついていけなければ国民からの信頼を失うだけ。

  • 327.122||Fu

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著者プロフィール

東北大学名誉教授

「2022年 『行政組織法〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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