苗字と名前の歴史 (歴史文化ライブラリー 211)

著者 :
  • 吉川弘文館
3.78
  • (6)
  • (3)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 59
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642056113

作品紹介・あらすじ

日本人の多種多様な苗字と名前は、何に起因するのか、その起源を探り、日本独特の苗字の歴史をたどる。家名と家制度、男性と女性の違い、現代の夫婦別姓問題など、様々な視点から分かりやすく説いた蘊蓄あふれる書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 時代劇を見たり読んだりする時に、正式に与えれられた官名やら自称やら、○○源氏に△△平氏やら、身分による呼び方の使い分けとか、そもそも名字と苗字と姓の違いってなんなの…など、なんとなく分かっているようなでもちゃんとは分かっていない。
    そういうわけで日本の名字、官名、諱や通称などをちゃんと知りたくて色々借りてきています。
    数冊読んで、江戸時代は庶民農民には苗字はなかった、禁じられていた、というのは間違いというのは分かってきた。

    【姓、氏、名字(苗字)】(複数の本で解説されているんだが、「ではこの場合は?」と考えるとやっぱりよくわからず…_| ̄|○)
    ✔氏姓制度:貴族や豪族が、地位、社会における身分として、朝廷より氏の名前と性を与えられ特権地位を世襲化した制度。
    ✔姓(かばね):血族名。
     豪族が氏名のともにつけた称号。政治的社会的地位の上下関係を表す。臣(おみ)、連(むらじ)、など。
     天皇によって賜与される公的な名前。「源平藤橘」など。
    ✔氏:天皇に仕える集団。
     名乗り方は、氏の名前と姓。蘇我(氏)大臣(姓)馬子(実名)
    ✔姓や名字は、個々の人間を血縁的な関係に基づく集団と結びつけて識別する。
    ✔姓が成立する前の人名は、実名化、または実名に何らかのタイトルを添える呼称法。
    ✔姓の制度が成立したのは天智天皇のころ。奈良時代頃には「連(むらじ)」などの姓呼びは廃れていく。すると、氏の名前=姓(せい)になっていった。
    ✔名字:江戸時代頃に「苗字」。家の名前であって血族名ではない。

    【姓と名字】
    ✔本来は、姓と実名がセット、名字と字(通称)がセット。
     源頼朝(姓+実名)、公的には源家光で姓と実名。
     当時は、足利尊氏(名字+実名)ではなく、足利又太郎(名字+通称)だったはず?
     それなら坂本龍馬や西郷隆盛(名字+通名)は表記として正しく、彼らの実名が伝わっていない、というのは風習として正しいのか?
    ✔姓の場合は、実名(通称)との間に”の”が入るという研究発表があるということ。
     姓+実名で「みなもと”の”よりとも」「そが”の”うまこ」など、「源という血族に所属する頼朝」
     名字の場合の「とくがわいえやす」などは”の”は入らない。
     (ただしこれって、私のような素人には時代劇に触れてきた感覚でしか判断できない。徳川将軍での「みなもと”の”いえやす」は良くて、「とくがわ”の”いえやす」が変だというのは「聞き慣れない」からとしか言いようがない…)

    【庶民の名前】
    ✔庶民はなにかの集団に所属して生活していた。
    ✔中世や近世の庶民の人名は共同体のメンバーシップと結びついていた。庶民も苗字、姓は持っていた。
    ✔共同体内部で年齢や身分が上がると人名も変わる。
     幼少時代の童名→村などで成人儀式を経て成人名→年齢を経たら入道儀式を経て入道名。正式にお寺に入るのではなく、日常生活はそのまま続けて儀式と名前の変更だけということが多い。
    ✔一人の人間が、複数の名前を持つこともあった。またその都度名乗れる名前(〇〇以上の身分など)が決まっていたりして、神主としての名前と、農民としての名前となど、その場に応じて使い分けていた。
    ✔庶民は字(通称)を用いていた。
     姓型:源太(源という姓の長男)
     官途名型:○太夫、○衛門など。
     室町時代頃は官職の価値が下がり、天皇家領の荘園で、庶民に朝廷から五、六位(貴族としては最下級だが、庶民には本来手が届かない位)の官職が与えられることもあった(ただし職務はなくステータスとしての名前だけ)。
     童名型:成人になっても改名されずに字となった。社会的に一人前扱いされないので烏帽子も使えないなど見かけも同時のままで、賤民なども。童名には動植物や神仏名が多かった。大江山の酒天童子とか、芥川龍之介「藪の中」の多襄丸なんかそうでしょうか。
     その他:その他色々。兄弟の輩行型で「太郎次郎三郎」とか。
    ✔女性の名前の場合。
     古代型:○売(め)。呪術信仰に基づき10世紀頃で消滅。
     嘉字+子型:定子(ていし)、彰子(しょうし)。嵯峨天皇時代に女性名の子が上流女性に増えた。
     輩行+女型:姉子、二子とか。
     氏女型:藤原氏女とか。女性もその氏の一員として扱われていた。

     以下身分の低下が見える例。
     童名型:少女時代の童名をそのまま使い続ける、おとなになっても一人前扱いされないという立場。鎌倉時代頃はあまりいなかったが、室町後期ごろには増えてきた、女性の社会的地位が低下したのではないか。
     変成男子型:「次郎女」「○衛門女」など。中世仏教思想において「女性は罪深い存在のためそのままでは成仏できない」ということで、男性名にしたということと、女性が男性の付属品という立場。


    【夫婦別苗字】
    ✔近年「夫婦別姓」が話題になるが、本来の意味では「夫婦別苗字」だろう。
    ✔日本では、通い婚だった頃は夫婦別名字。武家では妻の家柄を重要視するという意味で夫婦別名字。しかし庶民では、夫婦同名字だった。明治時代に「夫婦別姓」制度になった時には反発も多かったということ。

    そのため、日本では夫婦別姓(名字)と同姓(名字)を繰り返したり、立場によって違ったりして来ているから、
    別姓賛成派、反対派がそれぞれいう「日本の歴史、伝統において〜」は色々違うんだよ、
    その時その時でいいやり方を探ってきたんだよ
    という感じの流れ。

  • 川崎市の電子図書館が始まったので試し読み。

    ◎苗字系
    姓・苗字・氏。明治から近代では区別されない。

    日本古代の場合は、たとえば蘇我大臣馬子場合。
    蘇我が氏(天皇に仕える集団のこと。ギルド名?)
    大臣が姓(かばね。国政上に占める位置。役職)

    奈良時代や平安時代に、次第に氏と姓が形骸化したり混ざり合ったりしていた。(律令制に置きかわり)

    姓と苗字は何が違うか。現代人が名乗っているのは姓ではなく苗字。(姓は元はギルド名や役職名なので)

    氏(うじ)にはどんなものがあったか。藤原、大江、中原、菅原、清原。源、平、橘、秦、紀。など。
    平安後期の貴族の名称は源平藤橘と呼ばれた(みなもと、たいら、ふじわら、たちばな)

    平安、鎌倉時代は夫婦別姓が一般的だった。

    ◎男性名
    紀伊国粉河寺(和歌山県那珂郡粉河町)に存在する名付け帳。これは、その地域に生まれた男児の名を1478年から現在まで記録し続けている巻物。

    この巻物によると、1748年〜1751年あたりから父親の名前に苗字が記載され始めた。
    中世まで遡れる苗字は、林・谷・杉原・岡田など。
    1573年以降、子供の名前に丸が使われるようになった。
    戦国時代の子供の名前には、上に楠・松・千代・鶴・亀・千など、下に法師・楠・松・若・石・鶴・亀などが多いが、江戸に入って次第に消滅した。
    江戸初期は子供の名前に蔵が多いが、1664年をピークに吉の字に入れ替わる。

    また名前の受け継ぎも見て取れて、生まれた子の幼名から成人すると父親の名前(平内、左衛門三郎、又五郎…といった名前)を引き継いでいる例も数多く見られた。

    ◎女性名
    平安〜鎌倉の女性名は以下5パターン。

    ・古代型(虫売、広刀自売)売は「め」と読む。動植物に神が宿るというアミニズム的名称で10世紀には消滅。

    ・嘉字+子(定子、彰子)9世紀後半〜10世紀に激増し11世紀後半に絶滅。嵯峨天皇の命名改革により子のつく女性名が一般化した。

    ・童名型(観音女、鶴石女)11世紀に登場し、13世紀初頭に急増。アミニズム系や仏教系。

    ・排行+子(姉子、二子、三子)排行は太郎次郎など生まれた順番を示すやつ。相続のため(出生順で相続する土地や財産が違った)。10世紀前半に登場し、11世紀〜13世紀初頭の女性名の半分を占める。

    ・氏女(藤原氏女、中原氏女)11世紀後半に登場。実家との結びつきの強さを象徴。

    室町時代の女性名は、もっと女性の地位が落ちており、童名のままか、男性名+女パターンの二択になった。

  • [ 内容 ]
    日本人の多種多様な苗字と名前は、何に起因するのか、その起源を探り、日本独特の苗字の歴史をたどる。
    家名と家制度、男性と女性の違い、現代の夫婦別姓問題など、様々な視点から分かりやすく説いた蘊蓄あふれる書。

    [ 目次 ]
    「名づけ」の今日と過去(「名づけ」をめぐる諸問題;中世・近世の庶民の一生と人名の変化)
    姓と苗字(姓、苗字、そして氏;古代貴族の姓 ほか)
    男性の名前(中世男性の名前の種類;近江国菅浦住民の人名 ほか)
    女性の名前(平安~鎌倉時代の女性名;夫婦別姓から夫婦同苗字へ ほか)
    名前と社会(家名と家制度;名前からわかる社会秩序と習俗)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 日本中世史の研究者の著作で、史料を元に、苗字と名前の歴史について考察した図書です。

    内容はしっかりしている、んだとは思いますが、
    なぜかあまり興味が持てなくて、途中からは斜め読みしてしまったので、しっかり読んでません…。
    いい加減で、すみません…

    〈読了日:2009.3.16〉
    〈所在:図書館(067200611119)〉

  • 姓、苗字。男性、女性の名。日本人の名前に関することが網羅されています。

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

坂田 聡(さかた さとし)
1953年生れ、中央大学文学部教授。
[主な著書]
『日本中世の氏・家・村』(校倉書房、1997年)
『村の戦争と平和』(中央公論新社、2002年)
『名字と名前の歴史』(吉川弘文館、2006年)
『家と村社会の成立-中近世移行期論の射程-』(高志書院、2011年)
『民衆と天皇』(共著・高志書院、2014年)
『禁裏領山国荘』(編著・高志書院、2009年)

「2020年 『古文書の伝来と歴史の創造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂田聡の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×