トルコを知るための53章 (エリア・スタディーズ)

制作 : 大村 幸弘  永田 雄三  内藤 正典 
  • 明石書店
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750335711

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  • トルコの歴史・文化・政治についてオムニバス形式で色んな人が書いている。

    地理・気候
    アナトリア高原と南東ヨーロッパのトラキアからなる。アナトリア高原は短い夏は暑いが、冬は零下20度にもなるところがある。小麦が取れる。沿岸部は地中海性気候。

    歴史
    古代ではヒッタイトが有名。製鉄を最初に始めたとも言われる。その後、アレクサンドロス大王が通過していったり、ヘレニズム諸王朝やローマ帝国の支配下でギリシア化が進んだ。ローマ帝国とビザンツ帝国の時代にキリスト教化される。11世紀にトルコ系遊牧民のセルジューク朝が入ってきて急速にイスラム化が進んだが、土着の信仰の影響も残った(神秘的傾向のあるスーフィー)。その後、オスマン帝国を経て現代へ。

    オスマン帝国
    1453年にメフメト2世がコンスタンティノープルを陥落させる。スレイマン1世の16世紀に全盛期を迎える。西はバルカン半島でハプスブルクと対峙し(フランスとは敵の敵的同盟関係であることが多かった)、東はイランのサファヴィー朝がライバル。しかし文化的には詩歌などイランへの憧れがあった。キリスト教の礼拝堂であったアヤ・ソフィアをそのままモスクとするなど、ビザンツの文化も一部取り込んだ。コーヒーハウスはイスタンブールから欧州へ広まった。

    アタテュルク
    軍人としてWW?で活躍。トルコをギリシアなどの外国軍から守ってスルタンを廃し共和国を建国、国父となった。この独立時の経緯により、トルコ憲法には厳格な政教分離である世俗主義と、領土の不可分が、改正発議すらできない条文とされている。


    ケバブが有名だが魚も食べる。ヨーグルトはソースとして多用し、甘くして食べるなんてオエッとなる。酒もワイン、ラクなど普通に飲まれる。ケバブ屋では普通酒は供されないが、高級居酒屋的業態がある。ピザの原型と言われるピデも。

    文化
    オルハン・パムクはノーベル賞で有名。かつては寸劇、影絵芝居などが盛んだったがテレビにおされて姿を消しつつある。音楽は、微小音程を使う民謡がある。西洋音楽ではピアニストのファズル・サイが有名。

    政治
    クルド、アルメニアなど少数民族を国内に抱える。世俗主義により公的な場での女性のスカーフは禁じられてきたが、スカーフをかぶる女性が近年増えてきた。ただ宗教的な意味合いの有無などいくつかの種類がある。
    2002年以来、親イスラムの公正・発展党が与党。野党は共和人民党(アタテュルクの流れを汲む世俗主義)、民族主義者行動党(極右)、クルド系政党。90年代まで政権を担った中道右派は消えてしまった。
    EU加盟はいまは様子見状態。キプロス問題も微妙にネックに。

    経済
    80年代に経済自由化し、90年代は高インフレにも苦しんだが、21世紀にはいって比較的順調に成長している。新興国らしく消費が盛ん。自動車、白物家電については、OEMだが、EU向けの輸出が盛ん。

  • 昔のトルコから、近代までよく網羅してある本。
    財閥としては、コチ、サバンジュが1920年代に産声を上げた。
    AKBANK AKSigorta ENERJISA,BRISA,CarefourSA, TEMSA、ドウシュ、ドアン、エンカ、

  • 前半の方は、著者個人の属人的な内容で薄いが、後半はなかなか今日のトルコを知る上で役に立つ事が書かれている
    巻末近くの、在日トルコ人の方々による、震災後の支援活動はとても胸を打つのでぜひ一読なされますように

  • トルコ人は人なつこく、自尊心が高く、日本人に友好的。イスラム的な家族観があり、家族の絆が強く個人主義的な部分は弱い。弱者は放っておかない社会的な雰囲気がある。
    ギリシャを退けオスマン帝国に変わって建国されたトルコはヨーロッパ的な世俗国家を目指していたが、奔放な恋愛・性交渉、厳格な個人主義などの文化にはなじめず、近年ではイスラム主義が隆盛し支持を集めている。しかし世俗国家としての原則は微妙なバランスの上に守られている。

    まるごと一冊で概ねトルコの初歩的なことを理解できると思う。Wikipediaなどでは難しい、情報の横の繋がりが理解の助けになっている。

著者プロフィール

中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所所長。早稲田大学第一文学部西洋史科卒業後、トルコ政府給費留学生としてアンカラ大学言語・歴史・地理学部ヒッタイト学科に留学。中近東考古学科博士課程修了。留学中からトルコ国内の発掘調査に参加。帰国後、中近東文化センター勤務。1985年よりトルコのカマン・カレホユック遺跡の発掘調査に従事。著作に『鉄を生みだした帝国――ヒッタイト発掘』(日本放送出版協会、1981)、『アナトリア発掘記――カマン・カレホユック遺跡の二十年』(日本放送出版協会、2004)など。

「2012年 『トルコを知るための53章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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