ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと

著者 :
  • 亜紀書房
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本棚登録 : 901
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515328

感想・レビュー・書評

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  • 現代社会でがんじがらめになっている、そんな人たちが読んだら概念ぶち壊される、そんな本

    国が違えば、価値観は変わる
    時代が違っても、価値観は変わる

    そんなことは知っていたけど、国どころじゃない、民族であっても、価値観は変わる
    そういったことに何故気付けなかったのかと自分の思考回路の狭さに呆れ果てました

    ニーチェも気になる、そんな作品

  • マレーシアのボルネオ島、プナン。そこは贈与論(Mモース)にでてくるような循環型社会の一端を虫眼鏡で拡大したような、個人での所有という概念の無い社会。この社会では、幼いころから親などから「ケチはいけないことだ」と教えられ、モノ・非モノ問わず全てを共有している。人々は常に今ここを生き、将来の心配も、過去の反省も無い。問題がおきても、個人にその責任を追及することはなく、それにより、ストレスや孤独、自殺も無いそうだ。

    著者はニーチェの言葉をそこかしこに引用し、プナンの生き方と重ね合わせ、我々の常識に揺さぶりをかけてくる。プナンの人々は生きることの意味を考えたりはしない。一生かけて何かを達成したり、社会へ貢献したり、などを考える我々の直線的な生き方とは対極的なのである。それは、ニーチェの「永遠回帰」を生きるための技法であるかもしれないと、著者は言う。
    プナンのビッグマンは超人だろうか?

    この本のカバーイラストに、我々の考え方とプナンの考え方の違いが図的に描いてあるのだが、それが面白い。これを見ていると、何か新しいものを思いつきそうな気がしてくる。
    自分の「当たり前」の外にあるものに触れることから生きるヒントが見つけられるのではないかとこの本は述べている。

  • 「ありがとう」は「よい心がけ」
    反省の観念なく、ケチはもっとも悪いこと
    いちばん貧しい人が居ればその人がみんなのリーダー

    子どもを学校へ行かせる理由はない
    狩猟採集したものはみなで均等に分かち合う
    子どもはみなで育てる

    私たちの息苦しい暮らし、人生を根本から揺り動かすサラワク州プナンの人たちの世界観と哲学

    本書の最初のタイトルは『熱帯のニーチェ』

  • 難しい部分は飛ばし飛ばしで読んだけど、おもしろい本だった〜。

    マレーシア、インドネシア、ブルネイの3つの国からなるボルネオ島のプナン人の暮らしが舞台。
    (※プナン人→狩猟採集民)

    ⚫︎現代社会→高次で巨大な外臓システムを構築し、所有を広げてきた。格差社会、所有の奴隷。
    ⚫︎プナン社会→今を生きる。個人占有の否定。
    共有主義。全体的給付体系。所有欲の芽を潰す教育。


    現代社会とプナン社会のどちらがいいとは一概には言えないけど、
    "私"の範囲を集団にまで広げ共同で生きる、誰も置いていかないプナン社会の豊かさを想像して
    少し羨ましい気持ちになった。

    そういう社会がある、ということを知れて
    わたしの考え方や理想もまた広がった気がする。

  • 中盤、子どもの頃のエピソードが不快だったので途中で読むのをやめた。今どきこれはちょっとマズいんじゃないの。

  • 文化人類学をイメージするのに最良の入門書かもしれない。著者の具体的な経験や観察と文化人類学の学問的知見が、内容的にも文章的にも無理なく接続・展開されていて、とても面白く読める。プナンの人々の暮らしを経験することで、今の自分たちの暮らしの常識や価値観が相対化される様を、ニーチェの思想と結びつけて語るのも新鮮で、それはそれでなるほどと思わされる。「所有」「自我」「言語」等について思考実験でなくフィールドワークによってラディカルに探究していくことの面白さといったらない。

  • プナンの生活を通じて、すべての価値観・すべての常識・すべての当たり前を問い直すきっかけになる本。
    「大いなる正午」に出くわす経験。

  • 海外で仕事をする身でありながら、よくなんでこんな事がわからないんだ、なぜこうしてしまったんど、と思うことがある。
    自分が育ってきた極小な世界から抜け出して本当に他者のカルチャーを、単純に面白がり、敬意を持って接する大人になりたいものだ、、、と思った。

    そして、それは遠くに行かなくても、親きょうだいでも、直面することなんだな。。。

    大いなる正午。に妙に関心。

  • 各章の最初にニーチェの言葉が引用されています。
    それがとても良い。ニーチェの言葉は説得力あるし、元気出る!

    パースペクティヴィズムという概念があることを初めて知りました。
    自分が生き物をじっと観察する時にやりがちなこと。
    今、私に見られている対象物(生き物)がその瞬間何を考えてどう感じているのか、見ている私との関係は今どんな風か。
    これ、パースペクティヴィズムの端くれちゃうの?!ちょっと出来てた気がして嬉しくなった笑

    自然の中で、ただ自然の声を聞き狩猟して食べ物を得て暮らすプナン。
    個人の所有欲という人間の本能かもしれない部分を幼い時期に徹底的に潰し、共同体の一員として平等に分配して皆で利益を受けるシステム。簡単なようでこれを当たり前にすることが私たちにはどれほど難しいということがこの本を読むと痛感する。

  • 人間ってすごいなぁ...
    この多様性ゆえに爆発的に
    人類が増えたんだろうけど
    面白かった!

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著者プロフィール

立教大学異文化コミュニケーション学部教授。
著作に『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(2018年、亜紀書房)、『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』(2022年、辰巳出版)、『人類学者K』(2022年、亜紀書房)など多数。
共訳書に、エドゥアルド・コーン著『森は考える──人間的なるものを超えた人類学』(2016年、亜紀書房)、レーン・ウィラースレフ著『ソウル・ハンターズ──シベリア・ユカギールのアニミズムの人類学』(2018年、亜紀書房)、『人類学とは何か』(2020年、亜紀書房)。

「2023年 『応答、しつづけよ。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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