ネットワーク・ヘゲモニー ―「帝国」の情報戦略

著者 :
  • NTT出版
3.33
  • (0)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 39
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757103030

作品紹介・あらすじ

21世紀は国家の「高い壁」に閉ざされるのか、「グローバル・オープン・デモクラシー」の新しい未来が生まれるのか。多極化する世界システムの構造変化を読み解く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ネットワークが国家に覇権をもたらし、さらに国家の概念を希薄化させていくという。
    それらの変化に適応すべき日本の問題点はプログラムを「作れない、直せない、通用しない」であり、改善のために1.政策研究の充実 2.コスト高の克服 3.ネットワークの拡大・深化をすすめる必要があるという。

    プログラムとネットワークというなじみ深い単語は、一章において解説されるとおり、本書ではより高次元の概念をあらわしており、プログラムの意味を反芻しないと迷子になる。

    時間があれば以下を読めば、もう少し深いところまで理解できるのかもしれない。
    吉田民人(1997)「『プログラム科学』と『設計科学』の提唱--近代科学のネオ・パラダイム」

  • 従来の国際政治における覇権は領土を基盤とした勢力圏を築くことにあった。東西の陣営に分かれた冷戦はその象徴である。しかしネットワークは境界を突き抜ける。特にサイバースペースでは壁は邪魔な存在でしかない。
    国際政治における覇権システムの変容が起きている。新しいヘゲモニーが始まっている。
    テリトリアルなヘゲモニーとはこの近代主権国家システムを基盤とした派遣して無である。
    サイバースペースにおける米中の対立。
    グーグルが中国政府に対しインターネット検閲撤廃を求めることを明らかにし、同時にグーグルが提供するさ^ビスが中国からのサイバー攻撃を受けたことも発表した。
    米国のネットワークヘゲモニーにおいては情報通信ネットワークが重視されている。
    中国ではツイッターにアクセスできないが、他のアプリを利用すればアクセスできる。ソシャリズムの国がソーシャルサービスを利用できないのは皮肉である。
    中国共産党は膨大な人口をメディア検閲を通じてコントロールすることで、政権基盤を保ってきた。しかし、インターネットや携帯電話といったスマートなデバイスの普及はスマートなモブの対等を赦すことになった。
    インターネットや携帯電話が政府のコントロールを超えた空くティビズ無を生み出す事例はこれまでも韓国やフィリピンで顕著だったが、共産主義のメディア検閲の中でも見られたということは、それがきわめて強い政治的なツールである可能性を示唆しているといえるだろう。
    人々が情報通信ネットワークに依存するようになり、情報社会への以降が進むにつれ、人々の意識は現実世界の空間や領土ではなく、サイバースペースへと向けられるようになる。
    オバマが政権になってから和親との有力な戦略系シンクタンクであるCSISが次期大統領のためのサイバーセキュリティ政策について提言する報告書を発表した。
    ・サイバーセキュリティはいまや米国が直面する主要な国家安全保障問題の一つである。
    ・決定と行動は、プライバシーと市民的自由に関する米国の価値を尊重しなければならない。
    ・サイバーセキュリティの国内的、国際的側面の両方を包括的に捉えた国家安全保障戦略だけが状況を開演することができる。
    CSIS(Center for Strategic and International Studies)がサイバーセキュリティを取り上げたことは注目を集めた。
    情報社会を意味する英語information society という言葉は日本の未来学者である増田米二によって作られた。
    一口にサイバーテロリズムといっても主体が集団的か個人的、対象が頭の中か、頭の外かという区別ができる。
    日本や英国ではNGNの開発、普及が始まっている。NGNはインターネットの進化でなく、電話の進化系である。電話時代には電話局がネットワーク全体を管理しており、高い品質と安全性を確保していた。しかし、インターネットは電話と全く違うネットワークのアーキテクチャを使っており、品質と安全性をある程度犠牲にしていた。
    ITの普及による電力消費増加。
    中国が米国に対して、軍事的、経済的に真正面から対抗するとは考えにくい。中国は世界で最もインターネット利用者が多い。
    公文俊平は智の市場を智場と読んだ。
    政府の役割が求められることもあるだろう。アジアの腹圧な国際関係と発展格差を顧みれば、ODAを使ったインフラストラクチャ整備の余地はあるはずだ。
    中国のインターネット検閲システムはサイバー万里の頂上であり、インターネットを通じてやってくる外的をとめるものである。
    日本では伝統的に壁の概念が弱い。
    境界を取り去るという新しいゲームが始まり、新しいプログラムが軌道しつつある。テリトリアルなヘゲモニーはネットワークヘゲモニーへと移りつつある。今後の世界はネットワークによる壁の打破を目指す勢力とそれを阻止しようとする勢力との間の競争になるだろう。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

土屋大洋(つちや・もとひろ)編者
 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授(兼総合政策学部教授)
 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、慶應義塾大学大学院法学研究科で修士号、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で博士号取得。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主任研究員などを経て現職。2008年3月から1年間、米マサチューセッツ工科大学で客員研究員。2014年2月から1年間、米イースト・ウエスト・センターで客員研究員。2019年4月から日本経済新聞客員論説委員。2019年10月から2021年7月まで慶應義塾大学総合政策学部長。2021年8月から慶應義塾常任理事。第15回中曽根康弘賞優秀賞、第17回情報セキュリティ文化賞を受賞。主著に『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房、2015年)、『暴露の世紀』(角川新書、2016年)、『サイバーグレートゲーム』(千倉書房、2020年)など。

「2022年 『ハックされる民主主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

土屋大洋の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×