キャベツ炒めに捧ぐ

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411790

感想・レビュー・書評

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  • 一万円選書の中の一冊です。
    江子、麻津子、郁子は、惣菜屋さん「ここ屋」で働く、シングル3人組。
    シングルなのには、それぞれ理由がある。そして乗り越えていく物語。
    お店で売られる惣菜は、あー、美味しそうなものばかり。私も通りかかったら、買っちゃいそう。そして江子さんに、つっこみ攻撃されながら、賑やかに話して楽しく買い物してそうな光景が浮かんできた。
    「料理ってすごいわよね。江子は思う。高級食材じゃなくても凝ったことをしなくても、おいしく作りさえすればちゃんと美味しくなるんだもの。」
    この一文が心に染みた。
    食事を食べて、美味しいと感じられることって、何気ないけど、実はすごく大切なことなんだって実感した


  • アラ還の女性三人で営む家庭の味が自慢の惣菜屋「ここ家」
    別れた夫が忘れられずにいる江子さん、幼馴染の旬君のことが気になる麻津子さん、半年前に死別した夫とのわだかまりを未だに抱えている郁子さんそれぞれが心に吹っ切れないものを持っているけれども、ここ家でお惣菜を作っている時は、みんなとびっきり明るく元気!

    この本の魅力は何といっても、ここ家に並ぶお惣菜のラインナップとそのおいしそうなこと

    ある日のメニューは・÷・・
    茸の混ぜご飯、茄子の揚げ煮、茸入り肉じゃが、秋鮭の南蛮漬け、蒸し鶏と小松菜の梅ソース、豚モモとじゃがぃもの唐揚げパセリソース、白菜とリンゴとチーズとくるみのサラダ、さつまいもとソーセージのカレーサラダ、それに定番のひじき煮、コロッケ、浅漬け

    空腹の時に読んだら、たまらない
    まだまだ、続々とおいしいメニューが出てくる、出てくる

    ゆりねと海老と椎茸が入ったがんもを作り、揚げたてのがんもに醤油をかけてパクつく・・・喉がなった
    料理の苦手な私は、思った
    そうか、がんもって、手作りできるものなのかと
    あさりフライにも目が点になった
    あさりの身を取り出し、串に刺しフライに
    わあ、ビールに合いそう・・・

    タイトルになった『キャベツ炒め』の描写も喉がなったが、それは読んでからのお楽しみということで

    近所にこんなお惣菜屋さんがあったらいいのにと、心底思ってしまった

    どんなに悲しくても辛くても、食べなければ生きていけないから
    何かを食べるために動き出さなくてはならないから
    料理ができてよかった。食べることが好きでよかった。生きものでよかった!と実感する江子
    当たり前のことだけれど、食べることの大切さも再確認!

  • 同世代のおばちゃんたちのお話、面白かった❤️❤️
    わたしも、女友達と過ごすのが大好きすぎて、時間が足りなさすぎます。
    今のわたしの環境は、この小説と少しだけ似ていて、高校時代の同級生が社長で、わたしが唯一の従業員なので、恋バナしたり、子供の話をしたり、来週は、韓国弾丸一泊旅行に行くなど、しっちゃかめっちゃかな生活ですが、とても楽しく過ごせています。(ちゃんと仕事もしています。)
    現実は小説ではないので、わたしは平凡なおばあちゃんだけど、社長は二バツで、現実は小説よりすごいです‼️
    何が言いたいかというと、わたしはこういう現実的な自分と近い小説が大好きってことです❤️

  • おばちゃんたち、パワーあるし、楽しそうです。
    巻き込まれた若い子たち、まだそんなに人をあしらう方法にたけてないから、大変だったかな。
    おいしいもの食べて、しゃべって、どこか行って。。。
    こういうほのぼのとした暮しがあってもいいかもしれないですね。幸せだな~

  • 60歳近くの女性たちの恋愛模様という、珍しい設定だが、いつまで経っても乙女なんだなぁと。

  • 読み終わるころには、3人のことが好きになってる。
    ここ家のお惣菜が食べたい。ごはんの描写が、美味しそうで。

  • 東京私鉄沿線の小さな町の商店街の中にある惣菜屋「ここ屋」
    手作りの季節の料理を出すその店を切り盛りするのは60代の3人の女性。
    オーナーの江子と従業員の麻津子と郁子。
    三人の名前を合わせて来る、待つ、行く。
    それに三人が心ときめかす出入りの米屋の青年、進を合わせて、ロイヤルストレートフラッシュ。
    などと冗談を言う明るい性格の江子。
    だけど、彼女は今だに別れた元ダンナに未練があり何かと連絡を取ってしまう。
    他の二人も同じくそれぞれに訳ありの過去をもち孤独な生活を送っている。
    その生活にささやかな花を添えるのが決して豪華じゃないけど丁寧に作られた心づくしの料理たち。

    茄子の揚げ煮、茸入り肉じゃが、秋鮭の南蛮漬け、蒸し鶏と小松菜の梅ソース、白菜とリンゴとチーズと胡桃のサラダ・・・。
    想像しただけで美味しそう~。
    どれも家庭料理のメニューだけど、梅ソースとか胡桃を使うだとか、作る人がちょっと、ひと手間入れたいんだってこだわりと料理が好きなんだって事を感じる。
    それに、旬の食材を使っているのが素敵。
    こんな料理を日替わりで食べたられたらどんなにいいだろう~。
    近くにこんな店あったら絶対行くよ~。
    まるで文章からほかほかと料理の湯気が立つようでした。
    とても読みやすい文章で知らないうちに、あれ?こんなに読んでた・・・という感じです。

    ただね~、いくら何でもこの3人、60代にしては幼くないか?と思いました。
    言葉遣いといい、行動といい、年齢を知らないと20代か30代くらい?と思ってしまう。
    彼女たちよりは若い私だってこんな言葉遣いはしないゾ。
    それに、いくら何でも自分の息子(下手したら孫!)くらいの歳の青年に3人が3人揃って熱を上げるかね・・・。
    その違和感がずーっと最後までついて回って入り込めなかった。

    所で、タイトルのキャベツ炒めですが、今まで作った事がないのに気づきました。
    野菜炒めなら作るけど、キャベツ炒めって地味すぎる。
    でもこの本を読むと作りたくなりました。
    あ、そうか。バターで炒めて醤油をたらすわけね・・・。
    それに卵を加えたら結構いけるかも。
    そんな風に料理のヒントをもらえたり、ちょっと丁寧に料理を作ってみようか、と思う本でした。

  • 小さな惣菜屋「ここ屋」で働く3人の中年女性を主人公とした小説。
    3人の性格や境遇はバラバラだが皆独り暮らし。
    3人とも店に出入りする米屋のイケメン店員に熱を上げるが何と言うか…パワフルだなぁ、と。別れて再婚しても尽くしてくれる元夫とそれに甘える江子さんも不思議だし、60歳でもそんなに恋愛で悶々と出来るのかなぁ…となる麻津子さん。幼くして亡くした息子の面影があるから、という理由の郁子さん(夫は他界している)のスタンスが一番イメージしやすい。
    自分が生まれ育った土地では考えられない、見てきた人達にはいない開けっぴろげで不思議な人達だった…。

    料理も沢山出てきて、美味しそうではある。が、読んでいて気付いたが、自分はレシピ通りにキッチリ作られた料理よりもざっくり適当に作って出来た料理が好きなのだ。
    荒野さんは料理上手らしい。多分、材料や分量が決まったレシピ作りが得意なのではと読みながら思う



  • 60代の女の人3人の視点から書いた話。
    いくこも江子もまつこも大切な人に一途、それがときに自分を支配して苦しくもなるが。
    そんな3人が出会い一緒に惣菜屋で働いて明るい。

    いくこは2歳で息子が亡くなり夫も最近亡くなり、それだけみたらすごく悲しい
    江子はもともと一緒に立ち上げた惣菜屋の相方と旦那が出来てしまい両方失うけど、とにかく明るい。
    まつこは普段めちゃくちゃクールだけど
    1人の人に対して何十年も想って最後はめでたく結婚する。

    一つ一つ内容がとっても悲しくなる時もあったけど、悲しさを引き摺らない話でスラスラ読めた。

  • 60代の女性3人が営むお惣菜屋さんの話。
    ところどころに出てくる料理が、シンプルなのだけれど、とても美味しそう。
    下町の惣菜屋という感じ。

    3人は、三人三様の人生経験を積み、三人三様の未来を歩んでいる。
    歳を重ねることは、辛い別れも多々あるが、それを超えた先にも何本かの道がある。
    その中で、彼女たちが無意識に選んだ道は、自分の人生をしっかり歩いていく道だなーというのを感じる。

    はじめは、この登場人物、苦手だ!!!と、思った人に対しても、最後には好感すら覚えた。
    設定が上なので、感情移入ができない。という感想をよく見かけたが、自分は、移入はしなかったが、理解はできた。
    外側から人物観察をしているような感覚での理解だけれど。
    これが本当に心から理解できるようになるのは、おそらく彼女たちと同じ年代になった時なのだろう。

    キャベツ炒めが食べたい。

著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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