愛しいひとにさよならを言う

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 190
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412117

感想・レビュー・書評

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  • 『「我慢、できる?」と、母は訊いた。 ・・・ 「我慢、できないか」と、ぽつんと言った。我慢できないわたしが悪いのだろうか。こころがささくれだつ。せめて、我慢できないよね、と言ってほしかった。ユキさんに会いたかった。』言い方ひとつで世界は残酷にも変わってしまう。

  • 女にとっての家族の心情的機能を書く舞台だてのつくり方にはこの年になるとちょっと違和感を感じるけれど。女性にとっての心情的家族機能がよく書けているのは素晴らしい。

  • 石井睦美さんの本は「卵と小麦粉、それからマドレーヌ」から読み始めていて、ある意味、この本も同じようなところがあるのだけれど、でも、もっと遠くまで行っていると思います。読みながら、親子について、愛することについて、哀しさと、素晴らしさと、孤独とを実感しました。

  • 父がいて母がいて。そんなあたりまえを知らないはずなのに、ふいにさびしさに襲われる。
    何が足りないというのか、父でもない母でもない、けれど母であり祖母であるユキさんがいる。
    これ以上なにが足りないのか。

    静かなピアノ曲のようなこの本。

    だけど、ほんのすこしだけ欠けていることが、不安にさせる。

    ふわふわふわふわ、ことばにできない気持ちたちを手のひらで掬い上げたような気になった。

    血か繋がっていても遠い人や、そんなこと関係なく近しいひと。
    血の繋がりなんかより気持ちのほうが大切だと人は言うけれど、それでもなにより切っても切れないものだ。
    田舎に帰ったユキさん然り、母が訪ねてきたいつかの母、槙然り。
    そしていつか然り。
    嫌だと、合わないと思っても、真実そうでも、必要とするときが、されるときがきっと来る。

  • 空気感は好き。でも終わりが唐突で少し物足りなかった。

  • 父親を知らず、絵画修復師の母と公務員のユキさんに育てられたいつか

  • 忘れえぬ人の思い出を語る「わたし」はまだ若い学生だ。
    ただでさえ母子家庭といえば世間一般からかけ離れた生活環境だが、芸術を志す変わり者の母の下に生まれ育った一人の少女が、こうして無事に成長できたのは愛される喜びを知っていたからに違いない。
    チチとユキさん、そして母と祖母。自分に大きな影響を与えた四人の思い出を語れるようになったことで、「わたし」は今を生きられるのだろう。

    読み始めるなり、「チチ」の思い出が語られる。終盤までそれがどんな思い出や出来事につながるのか読み手を引っ張り続ける。
    ぐんぐん引き込まれる内に、次第に明らかになる「わたし」と母とユキさんの秘密。

    母親の秘めた恋、想像するだけの父親、会ったこともない祖父母、小学生の頃からピアニスト志す友人などなど、乙女心を刺激する要素がいっぱいに詰め込まれた作品。
    終盤の語りの切なさに胸がえぐられそう。

  • 絵画修復士を職業とする母と母の女友達育てられた娘が語る長編小説です。延々と祖母への恨み言が続きますが、母から愛されなかった娘は強く生き、母に愛されていた娘の方が弱くてリストカットを繰り返す…家族の喪失感ってなんだろう、父親や男性の存在ってなんだろうと考えさせられました。女性は家庭の事情や人生の選択で別れを余儀なくされるから、女同士の友情は切なくて美しいのかもしれない。その部分がとても美しく描かれていました。

  • 「父親は最初からいない」もので、ちょっとめちゃくちゃだけれど嘘はつかない絵画修復の仕事をしている母親と、運命的に出会ったユキさんに支えられて成長する少女・いつかの物語だ。
    「チチの話をしよう」と前ふったわりには出てくるのはユキさんの話ばかりで、チチは後半にちょこっとしか登場しない。
    愛情、というかたちのないものを丁寧に描こうとしているように感じた。

  •  確かに力を感じた。
     ただ、チチの結末は、少し安直ではないか。
     ユキさんだけでなく、祖母とも、彩音ちゃんとも、別れは静かに訪れては、いるけれど。

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著者プロフィール

作家、翻訳家。子どものための読み物に「すみれちゃん」シリーズ(偕成社)、創作絵本に『100年たったら』(アリス館)、翻訳絵本に『せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子』『おばけのキルト』(小社)など。

「2022年 『色とりどりの ぼくの つめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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