台所のラジオ

著者 :
  • 角川春樹事務所
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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412841

感想・レビュー・書評

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  • 「明日、無人島に行くことになったら、今夜、何を食べるか」
    たまたまラジオから聴こえてきたその質問に思いを巡らせていた美々の携帯が鳴った。
    相手は幼馴染みの直人くんで、突然東京駅に呼び出されるが......(「明日、世界が終わるとしたら」より」)。
    ラジオと食べ物を巡る12の物語を収めた短編集。

    2016年6月11日読了。
    割と、読書に関してはせっかちな方だと思う。
    だけど。吉田さんの本を読むときは、ゆっくり読みたくなってしまうのが不思議。
    今回も12の物語をゆっくりゆっくり、味わうように読んでいました。
    私の中での位置づけは大人の童話。読んでいるうちに、忘れかけていたものを思い出させてくれるような、そんな不思議な気分になるのです。

  • 少し寒い遅い朝、暖かな布団の中でヌクヌクと色んな物語を思い浮かべる。そんな風に生まれた小さな話が所々でつながって、すべてに共通するのは台所に置かれたラジオから流れる柔らく優しい女性の声。そして紙カツ、ハンバーグ、油揚げ、海苔巻き、高級では無いけれど美味しい料理たち。
    いかにも吉田さんらしい物語です。
    ちなみに最後の料理は冷えた白米にお茶を注いだお茶漬けでした。

  • ラジオから夕方に流れる番組。
    少しけだるげな女の人の声。
    邪魔にならないような音。
    …それがずっとバックに流れているような感じの短篇集。
    商店街放送がずっと流れているのはうるさくて嫌です(笑)

    不思議な雰囲気の、いつもの吉田ワールド。
    日本人の名前が付いた人物ばかりだけど、現実にあるような気がしないお話の世界。
    仕事に対する名前の付け方が独特だ。
    分かったような気もするし、正直良くわからない話もある。
    時々食べ物の描写がひどく美味しい。

    「ある」物が描かれていないような気がする。
    それを描くためにまわりの物を描く。
    そうすると、描かれなかったところの形が浮かび上がる。
    そんな風にして「ない」物を描くのが吉田さん…なのかな。

    紙カツと黒ソース/目薬と棒パン/さくらと海苔巻き/油揚げと架空旅行/明日、世界が終わるとしたら/マリオ・コーヒー年代記/毛玉姫/夜間押ボタン式信号機/〈十時軒〉のアリス/いつか、宙返りするまで/シュロの休息/最終回の彼女

  • 紙カツと黒ソース、さくらと海苔巻き、毛玉姫、〈十時軒のアリス〉、明日世界が終わるとしたら、が好き。
    私の住んでる街のどこかにはありそうでなさそうで、こんなお店あったらいいな、こんな人いたら面白いな、そんな風に思う世界観が文章の隅々むで広がっている。
    そしてこの本に出てくる吉田さんの料理の描写も、いつもながら本当に美味しそう。
    紙カツ、海苔巻き、油揚げ、コーヒー、ヨイッパリベーカリーのパン、仔羊のロースト…読んでるとお腹がすく。

  • 秀逸な短編集。それぞれの話が少しづつリンクしている。
    「マリオ・コーヒー年代記」が一番よかった。
    マリオとの出会い、お互い少年から大人になり取り巻く環境が変わりながらも、「僕」はマリオのつくるコーヒーが好きで、ずっと店に通い続けている。
    その不変性と信頼関係が微笑ましい。
    どの話に出てくる食べ物もみずみずしくて、魅力的。
    心が穏やかになれる作品ばかりです。

  • ラジオと食べものが出てくる20ページずつくらいの短編集。短編同士がちょっとだけ繋がっていることもある。吉田さんの作り出す現実のようで現実でないような不思議な雰囲気の話。大好き!心に残る話ではなく、むしろ吹けば飛ぶようなふわふわした話で、内容はすぐ忘れてしまうけど、読んでいる間はほんわか幸せな気持ちになれる。あったかいスープを飲んでほっと一息しているような、その時だけの幸せ。買って手元に置いておきたい。

  • 静かな声で話すラジオ、口にするものと生きるということ。
    吉田さんのお話に出てくる、少し偏った人たちが大好きだ。
    ラジオにしろ、本にしろ音楽にしてもそうだと思うのだけれど、いろいろな人の暮らしに自然に寄り添って、入り込んでいて、そういう受け手の一人ひとりに、「物語」があるのだなあ。

  • 台所に置いてあるラジオからの
    静かな話し声が少しのきっかけになり
    ちょっと変わった人たちの
    静かで温かいお話の世界に
    安心してどっぷりと浸かる読書の時間でした

  • 台所のラジオ。
    吉田篤弘の作品を表すのにぴったりだ。

    おいしいスープを作りながら、耳を傾ける、幸福。

  • 紙カツにじゅわっとソース。その日は早速ロースを叩いてできるだけ薄くし、豚カツにしました。かと思えば、美味しそうなものは、それくらい。台所のラジオは多くのおうちでさり気なくそこに置かれているもの(らしい)で、この本にもそうやって登場してきた。そこまで台所にまつわるものでもなく。ふんわりとした登場人物の、ふんわりとした短編集。日々時間に追われる自分には、中二病にも見える苦手な人たちだらけだった。

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著者プロフィール

吉田篤弘(よしだ・あつひろ)
1962年東京生まれ。作家。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による著作とデザインの仕事を続けている。著書に『フィンガーボウルの話のつづき』『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『木挽町月光夜咄』『電氣ホテル』『台所のラジオ』『金曜日の本』『神様のいる街』『あること、ないこと』『雲と鉛筆』『おやすみ、東京』など多数。

「2018年 『おるもすと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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