そこにはいない男たちについて

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413534

感想・レビュー・書評

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  • 愛する夫を突然病気で亡くした実日子、夫婦としてひとつ屋根の下で暮らしているが気持ちが離れてしまっているまり。 どちらが可哀想なんだろうか。 実日子には悲しさや寂しさを感じ、まりには心の痛み、辛さ、苦しみ、やるせなさを感じる。 夫の事を本当に嫌いになれたら、どんなに楽か。まりの気持ちが痛いくらいわかり、読んでて辛かった。

  • 好きとか嫌いとかの感情を重さで計ることができたら、まりの「嫌い」は実日子の「好き」より重かったのだろう
    だから、まりは自分から別れる選択が出来なかったのだし、夫が出て行ったお気に入りのマンションを引き払いたいと考えている
    実日子は夫の遺した本を一冊残らず他人に譲ることができて、軽やかに次の恋愛に進もうとしていた…確かに夫を愛していたのに

    愛してる愛してないって、言葉の意味や重さに押しつぶされそう

  • 『あちらにいる鬼』のフレーズを思い出した。

    “私はひどく動揺していて、そのことが不思議だった。篤郎が助からないことはとうにわかっていたのに。それに私は彼の病気がわかる前、彼を捨てようとしていたのではなかったか。どう違うと言うのだろう、別れてもう二度と会わないことと、篤郎が死んでしまうこととは。”

  • 「そこにはいない男」とは、
    まりの実際には存在するのに、気持ちの面でまるでそこにはいない旦那であり、
    実日子の亡くなってしまって、本当にそこにはいない主人であった。

    流れてきたラジオの曲に合わせ、ハミングをしていたところ、
    「この曲、きらいなんだ」と消されること。
    一緒に行った食事、乾杯の一杯目のお酒の好みを
    聞かずに注文してしまうこと。
    「子供をつくること」の提案を賭けだったと告げられること。
    どれも「こんな旦那嫌だなぁ」と感じるエピソードだった。

    でも、離婚したあとのまりは、そこにいない別れた旦那を
    いるように感じていた。
    これはやっぱり、好きだったってことなんじゃないかな。
    別れを告げた旦那の世界には、自分がもういないこともしっかり
    わかっていた。
    ある意味、まりが歩み寄るチャンスもなかったわけではないのに、
    やはり遅かったのだ。

    実日子亡くなった旦那と生きていた。
    日常に潜む「地雷」それは、一緒に使っていた食器を目にしたとき、
    家の中だけではなく、外出先、テレビの画面や音声・・・
    身を固くしそろそろと歩き、生きてきた。
    でも、勇介と時間が少しづつ変えていく。
    地雷を踏んだ時に襲ってくる悲しみのなかに
    微かな懐かしさと愛おしさが混じっていることに気づいていく。

    「ここにはいない」男は、
    絶えず、形を変えながら女たちに影響していく。
    長く女の中に形を変えながら、女は吉につけ悪しきにつけ
    そうやって生きていく。
    そんな風に思わされるお話だった。
    男は少し違うのかな?(笑)

  • 近くにいそうな30代女性たちの物語。淡白なほど日常を描いているところが気に入った。夫婦の形、男女関係、女子会での恋バナ、、そういった問題はいつまでも続くのだなあ。

  • 面白かった。
    恋愛なんて面倒で、災いの元にしかならないと思っている中年既婚の僕にとって、女心は興味の対象でも攻略の対象でもない(それ即ち僕には男性的魅力は無い)けれど、それでも読みやすくかつ示唆に富んだ作品だった。

    と思うけど、この本を妻に勧めようという気になれないのはたぶん、妻にとって僕も光一のように見えてはいないかというおそれがあるからなのだろうか。

  • 読ませる文章だなぁ…。
    扱うものが男女のどうこうといった「恋愛もの」は苦手で避けているが、他者へのその依存はなぜ起こるのか、への深掘りがあると読める。
    なにより文章が力強くて、これはほかの作品も読んでみたい。

  • いる、いないの意味を考えました。

    近くにいるのに遠いとか、心の中にいるとかそういう表現と似ています。

    離れてから気づくその存在の大きさ。離れてからじゃ遅いのに。
    毎日会ってるのに心が離れ離れなのも寂しいし、一生会うことができないこともつらい。



    「どっちがかわいそうなのかな。先生と私。」


    「どうしてあんなにきらいな夫と別れなかったのか。私は夫のことをずっときらいでいたかった。だから別れなかったんです」


  • 読み応えありました。
    物理的にそばにいるけど心が離れている関係と、
    心は繋がっているけど物理的に離れている関係、
    どちらがより寂しいのかな…

  • タイトルに惹かれて読んだけど、まあそうだよねという展開で。私は好きではないかな。

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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