- Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
- / ISBN・EAN: 9784759267242
感想・レビュー・書評
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仕事は選ぶよりも続けるほうが格段に難しい。
著者が屠殺場を舞台に自分自身の暮らしを表現していく。
「いのち」に関して触れているような本ではなく、あくまで屠殺場を通して働くことに関して考えている内容です。
本書より
"だからといって、昔は良かったと嘆くつもりはさらさらない。いつだって人は、与えられた環境の中で、自分なりのこだわりを見つけながら働いていくしかないのだ。"
という文章に少し元気づけられました。
本書で何度も出てくる『生活の設計』も気になりました。
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あまり知られない「屠殺」の内容が書かれた作品。
作者は新潮新人賞を受賞したらしいが、この作品ではそのクオリティが分からない。 -
2014.9.20
考えさせられる
『「いのち」などとというめにみえないものについてあれこれ語るよりも、牛豚の匂いや啼き声といった、現実に外にはみ出してしまうものをはみ出させままにしておくことのほうがよほど大切ではないか」
美味しいとか、食べたくない、食べれないとか、美味いとかマズイとか飽食の時代とか超えて、木っ端微塵にする過去からの遺産の綴りと思います。 -
大宮にある屠殺場の仕事を紹介
牛とか豚肉って
こんなにも過酷な環境で造られていたのか。屠殺方法についての技術的な視点がメインだったので、命についてみたいな道徳的な話がなかったので、内容は淡白としていた。作者には是非その辺を今後語って頂きたいと思った。 -
北大卒編集社勤務後、10年間大宮と殺場に勤めた人の本。
職安でこの屠殺の仕事を選らんでから、常に戸惑いながら、しかし辞めるという周りの予想に反して食いついてきた。
だが、小説を書く内に中途半端はやめようと、その仕事を辞する。
技術的に進歩することがなくなってしまったら、何を目標にすればいいか、という問いは結構大きいなあと思いました。
合う合わないというのもあるらしく、皮を剥ぐ作業は左手は素手なのだそうだが、それにより爪が減ってほぼなくなってしまったり、邪魔な程肥大したりするらしい。それでも作業する人もいる。すごい。作者は向いている爪らしく、ちょっと厚くなったのみで変化しなかったそうだ。
刃物を扱う職業なので縫う怪我はしょっちゅうする、というのもすごい。刃を研ぐのも難しく、3年やっても覚えられないそうだ。やすりがけなど目が邪魔だから見ないで、手の感覚でやるのだそうだ。
芝浦の屠殺場はよい和牛しか扱わないらしく、そのため悪い牛は全部大宮に来るという。ぞんざいに扱われた牛は、その牛と一緒に屠りながら憤る彼らは一番食肉を考える優しい人々だ。普通の人は死んだ牛について何も感じられない。
この仕事やってると結婚できない、と辞めていく人も多いそうだ。こんなに尊敬すべき職業なのに難しいな。きつい仕事だが給料は8年目で256098円。朝は早いが遅くても午後三時には終わる。どう受け止めるかは人次第。
色々考えさせられる。作家さんが書いただけあって筆力があり読みものとしても楽しめた。 -
ふと手にとった本だが、実は近所が舞台だったという縁。
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デビュー作『生活の設計』(新潮社、2001年)で、と畜の現業で働く自分の姿を淡々と描いた著者だったが、その後は直接ここでの生活に触れずに小説を書き続けていた。今回、出版社の求めに応じて、あらためて具体的にどんな考えでその仕事に就き、なぜ10年以上もその仕事を続けたのかを振り返りまとめあげたのが本書。巻末に添えられている著者手製のイラストがなかなか味わい深い。 差別をめぐる考察や、家族を巻き込む葛藤なども赤裸々に、1990年から10年余りを過ごした著者のプロフェッショナルとしての黄金の日々を今は亡き職場と共に回想。(今では現場の環境も、「O-157」の流行や「狂牛病」の影響などで、すっかり様変わりしてしまったという。)佐川さんらしい淡々とした真面目な語り口が、説得力ある職業観を伝えてくれる。ただ、ぎらぎらした刃物嫌いの私としては、血を見る場面は飛ばし読み!
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食べる事は殺生なんです。
それに携わる人々は感謝されるべき。 -
著者が屠殺場で働いていた時の体験談。
本人は技術が磨けるということで、淡々とこなしていたようだけれど、肉体的にも、精神的にも、かなり過酷な職場に思えた。
意外と生々しさは無かったし、こういう仕事をしてくれている人がいるから、お肉が食べられるという事を知っておいてもいいかも。 -
屠殺という仕事について初めてよく知ることができた。カムイ伝で絵から伝わってきたものを言葉で補ってもらったかんじ。
屠殺ののち、食があるということを、忘れないでいるために、読んで欲しい本。