- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784760149339
感想・レビュー・書評
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「これは伝統だから」
という言葉に弱い。
何か新しいことをしようと思っても、「伝統に反する」と言われると、意欲が萎えます。
逆に言うと、伝統を振りかざしていれば、これほど強いことはない。
長年の風雪に耐えてきた伝統には、重みがあります。
でも、その伝統って、本当に伝統?
そんな疑問に答えたのが本書。
たとえば、元号。
今上陛下の退位に伴い、間もなく「平成」が終わります。
このように、「一世一元」になったのは明治以来。
明治より前は、かなりいい加減だったらしいです。
たとえば、奈良時代には「霊亀」「神亀」「天平」「宝亀」と、55年で4回も元号が変わりました。
理由は、「珍しい亀をもらったから」。
がくっ。
さらに、西の空に縁起のいい雲を見つけたと言っては「慶雲」に改元、めでたい雲が現れたと言っては「神護景雲」に改元、伊勢に美しい雲が現れたと言っては「天応」に改元と、かなりメルヘンチックです。
古来の伝統と思われがちな初詣も、たかだか120年の伝統でしかありません。
「その日は仏滅だから」「大安だからいいわね」と、冠婚葬祭の日取りを決めるのに絶大な影響力のある「六曜」。
中国から日本に伝わって680年の歴史がありますが、現在の名前と順番になったのは180年前(仏滅はここから始まりました)です。
幕末には暦に付けられ流行しますが、明治に入ると、「迷信入りの暦」だとして政府によって禁止されてしまいます。
で、復活してから、わずか75年しか経っていません。
ちなみに福沢諭吉は、六曜を迷信だとしてケチョンケチョンに貶しています。
「これは伝統だから」と訳知り顔で言われたら、「それって本当に伝統ですか?」とツッコミを入れてみるのもいいかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伝統というだけで思考停止にならないようにしたい?
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江戸時代まで、姓を名乗ることができたのは貴族や武士だけだった。明治4年に戸籍法が発布され、明治8年に平民も苗字を名乗ることが義務付けられた。当初、他家に嫁いだ婦女は婚前の氏とされたが、明治31年の民法成立から夫婦同姓が制定された。現在、夫婦同姓を義務付けているのは日本だけ。
18世紀以前は、世界のどこでも男も女も農作業などの仕事についていた。イギリスで産業革命が起こると、夫は外で働き、妻は家で家事・子育てをする専業主婦が生まれた。日本では1910年代にサラリーマンが誕生して専業主婦が生まれ、戦後の高度成長期にサラリーマンが増えて専業主婦が多くなった。
福沢諭吉はスピーチの訳語として「演説」という言葉をつくった。自由民権運動の明治10年代に、演説を歌でやる演説歌から「演歌」ができ、大道で政治風刺を歌う演歌師が登場する。自由民権運動が下火になると、内容は政治風刺から社会風刺になる。昭和の初めにレコードが売られ始めて、「歌謡曲」「流行歌」と呼ばれた。戦後の三橋美智也は「民謡調歌謡曲」、三波春夫や村田英雄は「浪曲調歌謡曲」と呼ばれた。昭和41年に五木寛之が「艶歌」という小説を書き、昭和44年にデビューした藤圭子は、「演歌の星」としてアピールした。 -
伝統という言葉に装飾された、権力や嘘情報に騙されないために、リテラシーを身に着ける。
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あまり大きな驚きはなかった。
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R3/1/30
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盲点というか、言われてみればなるほどという内容で、とても興味深かった。
3世代も変われば伝統になっていってるのが、へーという感じだった。
人は1世代前には反感をして、2世代前には共感を覚えるというのもなかなか興味深かった。 -
著者のツッコミに時々,吹き出しながら,楽しく読めました。
いわゆる昔からあるものが,意外に新しいものが多いことに驚きました。
「伝統」と鵜呑みにせず,自分で頭でよくよく考えてみる習慣をつけてみようと思いました。 -
身の回りに沢山ある「伝統」とよばれる行事、作法。
これら「伝統」にも始まりはあったはずで、果たしてその起源はどういうものなのだろうか。伝統の正体に迫った一冊。
ちょっとした小話になる話題ばかりなので読んでおくと案外話のたねに使えると思う。