現象学的身体論と特別支援教育:インクルーシブ社会の哲学的探究 (心の科学のための哲学入門3)

著者 :
  • 北大路書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784762828874

作品紹介・あらすじ

◆本書の概要――「はじめに」より
 本書の目的は、現象学の立場から、身体とは何かを見直し、その考え方を障害のある人たちのための教育やリハビリテーション、福祉に活かすことにあります。そして、最終的に、現象学に生態学的心理学を加味した「生態学的現象学」の観点に立った教育学を提案したいと思います。
 ・・・・・・[近代自然科学の身体観の]その問題点とは、・・・・・・要素還元主義と物心二元論です。そこで、望ましい教育とリハビリテーションのあり方を考えるには、身体観から抜本的に考え方を変更しなければならない・・・・・・。そして身体観の変更は、同時に治療や訓練や教育のあり方を問い直すことでもあり、それは、専門家と当事者である子どもや保護者との関係をも問い直すことでもあります。身体観の問い直しは、治療や教育の問い直し、最終的に社会的関係の問い直しにつながっていきます。
 生態心理学における「生態学的(エコロジカル)」とは・・・・・・、生き物の活動をつねにその棲み家(ニッチ)との相互作用の中で捉えようとする立場のことを言います。・・・・・・この立場は、知覚し運動して世界を生きている主体としての当事者の視点をとり、人間のあらゆる能力は環境と身体的主体のマッチングにおいて成立するという考え方を徹底して追求します。障害のある子どもや人たちのリハビリや教育には、この生態学的な視点と、本人の経験に基づく現象学的なものの見方が有効だと思います。・・・・・・これと結びついてさらに強調したいことは、当事者自身が自分の障害を把握し、自分でそれへの対処法を作り出していくことの重要性です。(本書「はじめに――なぜ身体を見直す必要があるのか」より一部引用)

◆目次
 はじめに なぜ身体を見直す必要があるのか

【理論編】
 第一章 現象学的身体論
 第二章 発達とは何か
 第三章 表現としての身体から当事者の参加へ

【実践編】
 第四章 脳性まひの現象学
 第五章 自閉症の現象学
 第六章 インクルージョンと当事者研究

著者プロフィール

立教大学文学部教授。NPO法人 アーダコーダ副理事。
専門は、心の哲学・現象学・倫理学・応用倫理学。社会が内包する問題に哲学的見地から切り込む。
著書に『メルロ=ポンティの意味論』(2000年)、『道徳を問いなおす』(2011年)、『境界の現象学』(2014年)こども哲学についての著者に、『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』河出書房新社、『じぶんで考えじぶんで話せるこどもを育てる哲学レッスン』 河出書房新社、『問う方法・考える方法 「探究型の学習」のために』ちくまプリマー新書、『対話ではじめるこどもの哲学 道徳ってなに?』全4巻 童心社、共著『子どもの哲学 考えることをはじめた君へ』 毎日新聞出版など多数。

「2023年 『こどもたちが考え、話し合うための絵本ガイドブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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