- Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
- / ISBN・EAN: 9784771034228
作品紹介・あらすじ
外を内、内を外へと転じ、全てを反転させつつ動いてやまない「渦動」としての絶対無。そこから学問と現実の「全て」に対峙しようとした田辺元の思索は、極度に濃密な論述の内に途轍もないダイナミズムを秘め、私たちを突き動かすべく待ち構えている。田辺哲学研究の最前線に立つ、新たな時代のための論集。
田辺哲学の全体像を捉える五つのテーマ
I 「種の論理」の意味とその行方
II 「懺悔道」としての宗教哲学
III 死と象徴をめぐる最晩年の思想
IV 「京都学派」の中の田辺哲学
V 田辺哲学の今日的可能性
田辺哲学の歩みとその基本問題を詳細に明らかにする座談会「いま田辺哲学を問う」と、二つの新資料(西田と田辺の最後の往復書簡、『私観 教行信証の哲学』)を収録。
感想・レビュー・書評
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西田幾多郎にはじまる京都学派の代表的な哲学者の一人であり、西田哲学の徹底的な批判者である田辺元についての論文をまとめた本です。
本書のタイトルになっている「渦動する象徴」ということばについて、編者の一人である杉村靖彦はつぎのように説明しています。「渦動はそれが触れたもの全てを巻き込んでいく。つねに外を内、内を外へと転じ、全てを反転させつつ動いて止むことがない。田辺のテクストは、この渦動そのものの凝縮体である。」「絶対無の渦動は「表現」されてはならず、「象徴」されるのでなければならない。けっして直接には現れず、つねに他へと媒介されていく動態、けっして一望のもとに見られず、つねに反転可能性を裏面とすることにより動きそのものであるような様態。このようなものとしての絶対無の現出様式は「象徴」でしかありえない」。
杉村のほかにも、『フィロソフィア・ヤポニカ』(講談社学術文庫)の著者である中沢新一や、レヴィナスの研究者である合田正人など、フランス現代思想に造詣の深い研究者たちが、ヘーゲルの弁証法を継承する哲学者である田辺元の思想に傾倒を示しており、いったいどうしてなのだろうかと疑問に思っていたのですが、この杉村の説明に、彼らが田辺哲学をどのようなしかたで受容しているのかということがうかがえるように感じました。
また、もう一人の編者である田口茂は、現象学の研究者として知られていますが、本書に収録されている論文「希望のアナクロニズム―田辺哲学における「還相」の時間的構造」では、レヴィナスやデリダの時間論との比較を通じて、やはり田辺哲学の現代的な意義を掘り起こそうとしています。詳細をみるコメント0件をすべて表示