子どもに語る北欧の昔話

  • こぐま社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772190367

感想・レビュー・書評

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  • デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランドの北欧5か国の民話を集めた、児童向けの書籍。
    概ね素朴な物語で味わい深く読めた。

    やはり、多くの土地の民話と同様、戒めや教訓を含んだものが散見される。
    例えば、貧しい少年が得た宝物を横取りする強欲な夫婦が最後には懲らしめられる「北風を たずねていった 男の子」や、正直な弟がお姫様の病気を治し、幸せに暮らす「命の実」などがそう。

    童話「ヘンゼルとグレーテル」と話の筋が似た「屋根がチーズでできた家」や、「シンデレラ」のように王子が靴が合う女性を探す「赤いめうし」といった類話も見られ、これも根っこの部分でどこかつながっているのかなと興味深く読んだ。(ちなみに「赤いめうし」で靴を履こうと足を切り詰める描写が怖い)
    フィンランドの民話「木のまたアンティ」では、叙事詩「カレワラ」でも登場する神話上の土地ポホヨラや、その土地の支配者である魔女ロウヒが登場し、これも興味深かった。この話も骨太で好きだ。

    個人的に一番好きなのが「正直な若者と ねこ」。
    ねずみの害をねこが救う話は他にもあり、この話もそれに類するものであるが、若者が道中出会う人々がみな朴訥で親切なのがよい。
    ついでにいうと、タイトルもどこか惹かれるものがある。

    また話によく登場する魔物トロル。
    日本の妖怪のように、自然の脅威や、推測であるがおそらく異民族などもそのルーツであると思う。
    本来恐ろしい存在であったはずのトロルだが、これも日本の妖怪のように少し間抜けで憎めない存在としてたびたび描かれる。
    人間は知恵や勇気をもってトロルを討伐し、その宝物を得ているのも、例えば「桃太郎」などと共通しているようで面白かった。

    北欧といえば、自分の中ではデスメタルの本場という形で親しみがあるが、民話もどこか寒い土地独特の空気感があり、いい話でもどこか暗めなのが自分好みであった。
    本棚に、以前購入して積んでいた北欧神話の本もあるので、時間を見つけてそちらも読んでみたい。

    • さてさてさん
      ぴよこさん、はじめまして!
      いつもありがとうございます。
      私もメタルは好きですが、北欧、カレワラとなるとやはりシベリウスかなと。何かと音楽に...
      ぴよこさん、はじめまして!
      いつもありがとうございます。
      私もメタルは好きですが、北欧、カレワラとなるとやはりシベリウスかなと。何かと音楽には結びつけて考えてしまいます。
      今後ともよろしくお願いします。
      2020/06/17
    • ぴよこさん
      さてさてさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。
      いつもレビュー拝見しています。
      シベリウス、自分も聴きました。
      順番が妙...
      さてさてさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。
      いつもレビュー拝見しています。
      シベリウス、自分も聴きました。
      順番が妙かもしれませんが、Amorphisというフィンランドのバンドがカレワラを元にした作品を多数作っており、それらを辿る中でシベリウスに行きつきました。
      確かに、音楽に限らないかもしれませんが、何かと好きなものに思考が結びつくことはあるかもです。
      最近なかなかレビューなど投稿できませんが、こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
      2020/06/17
    • さてさてさん
      ぴよこさん、情報ありがとうございました。
      Amorphis、メロディックデスメタルですか。とても興味深い響きです。
      Amongst star...
      ぴよこさん、情報ありがとうございました。
      Amorphis、メロディックデスメタルですか。とても興味深い響きです。
      Amongst starsのmv見ました。とてもいい感じです。ありがとうございました!
      2020/06/17
  • ストーリーテリングのテキストとして。
    スカンジナビア半島を中心にした北欧5カ国の民話全15話が載っている。
    5カ国にはフィンランドとアイスランドも含まれている。
    国名を聞いただけで何だか寒そうで(笑)、厳しい自然の象徴のような「トロル」という存在がたびたび登場する。
    深くて暗い森や湖、すさまじい嵐、荒れ狂う海。
    そんな環境だからこそ、トロルという魔物も生き延びてきたのだろう。
    時に女だったり、また男だったり、魔女のおばあさんだったりするトロルを、人間の知恵と勇気でやっつけてはその宝物を手にして、幸せを手に入れる。そういうパターンのお話がとても多い。
    お姫様も登場するが、華やかさはなく、わりと気さくで行動的だ。
    全体に骨太だが毒は無く、英国のお話などと比較するととても良心的に感じてしまう。

    ヘンゼルとグレーテルにそっくりな『屋根がチーズでできた家』。
    猫というものを誰も知らなかった頃のお話が『正直な若者とねこ』。
    よく聞く『おんどりときつね』も入っている。
    主人公が怒涛の半生を歩む『木のまたアンティ』。
    その展開はナシでしょ、という無茶な話はひとつもない。
    こういう民話を読むと、自分がとても素直な人間になれそうな気がするな。

  • 北欧の神話を読んだ流れで
    童話も読んでみたくなって。

    知っている話は、「北風のテーブルかけ」くらい。
    これはノルウェーのものらしく、
    日本でもみんな知っている有名な話。

    全体を通しては、
    トロルやこびとが出てくることが
    北欧っぽさのように感じる。

    物語全体から感じるのは、
    正直で実直で気前がいいことが
    幸せをもたらすというメッセージ。
    小難しい話はそんなにない。

    好きだったもの。

    「トロルとうでくらべをした少年」

    おそろしいトロルに知恵を使って
    勝つ話なのだけれど、
    トロルのまぬけさがあまりにも滑稽。

    「木のまたアンティ」

    毛皮商人が旅の途中に泊めてもらった家に
    予言者も泊めてもらっていた。
    家のおかみさんが男の子アンティをうむ。
    商人の跡取りになるという予言を耳にし
    疎ましく思い、商人は赤ん坊をもらい受け
    木のまたに捨てる。
    しかし、狩人が拾って育てる。
    これを知り、また策略するが失敗し、
    商人の娘と結婚してしまう。

    北のはての賢い女主人ロウヒに、
    人間の幸せとはなにか
    聞いてくるよう言いつけ遠ざける。
    アンティは旅に出てたくさんの人に出会い
    助けられながら、質問を頼まれ引き受ける。
    ロウヒの娘の力も借り全ての質問に答えをもらう。
    帰り道、みんなに答えを教えてお礼をもらう。

    無事戻ったアンティ。
    苦々しく思いつつ旅に出る毛皮商人。
    アンティから答えをもらった渡守の仕事を
    商人が引き受けるはめになり、
    予言どおりアンティは跡取りとなる。




  • スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランド、ノルウェーやら北欧の五カ国から厳選された昔話。
    こども向けだったのであっという間に読めました。
    特に最後の木のまたアンティの話にはやられました。
    実直で、日々の働きを大切にすること。
    厳しい環境の中で育った北欧人の魂を感じさせられます。
    ヘンゼルとグレーテルにも似た話もあり、グリム童話が今度は気になってきました。

  • りすとてぶくろと針(フィンランド)
    針って~

    北風をたずねていった男の子(ノルウェー)
    この話好き
    粉飛んだら、元にもどせないもの

    銅のなべ(デンマーク)
    なべが何かを作ってくれるのではなく、もってきてくれる!というのがツボだった 笑

    屋根がチーズでできた家(スウェーデン)
    トロル女との対決もの
    ちょっとヘンゼルとグレーテル入ってるわ

    小さいおいぼれ馬(デンマーク)
    このパターンもよくあるが、馬とはね
    お姉さんもし会わせになってるといいな

    正直な若者とねこ(アイスランド)
    古今東西、ねこはやはりねずみをとるのね


    トロルとうでくらべをした少年(スウェーデン)
    うでくらべではなく、知恵くらべだよね
    時々、知恵比べってずるいときもあるって思う

    トッリレヴィップ(デンマーク)
    これも類似話あるやつ
    でもニッセが娘を嫁にもらえなくても、その後の人生に糸紡ぎをしなくていいように計らってくれるのが、泣ける
    グリムの「ルンペルシュティルツヘン」「三人の糸つむぎ女」の類似

    いのちの実(デンマーク)
    りんごはいのちの実なんだね
    いのちを助けてもらっても、結婚したくないというお姫さまの気持ちは大事にしてあげてほしい、と思ったりする 笑


    リヌスとシグニ(アイスランド)
    リヌスは王子
    シグニはかしこい娘

    最期の段落あたりの王さまを称えるところは、アイスランドの「サガ」っぽいらしい

    おんどりときつね(ノルウェー)
    だましあい
    おんどりの勝ち

    赤いめ牛(デンマーク)
    娘を嫁にしたい王さまって~ダメじゃん
    め牛はおばあさんなの?
    どうして王女はめ牛のいうことを聞かないの
    でもそれでいいのが、よくわからない
    と読み方が大人でまいるわ
    最期はちょっとシンデレラ的になる

    グリムの「千枚皮」と類似
    屋敷こびと(フィンランド)
    だれにでも親切に
    日本語にすると、座敷童子なのかなあ

    ドブレ山のねこ(ノルウェー)
    いろんなトロルって???
    妖怪図鑑みたいなことイメージしてる
    ねこが最強なんだね

    木のまたアンティ(フィンランド)
    人間にとって一番の幸せとは~
    「人間の一番の幸せは
    大地とともに働くこと。
    木を切りたおし、根を掘りおこし、
    石を集めて、水路をつくり、
    地面をたがやすこと。
    それが一番の幸せなのだ。」
    納得だ

    ポホヨラという地名は、フィンランドの民族叙事詩カレワラに歌われている大切な地名

    昔話にも、みにくい、と美しいは出てくるが
    それがいつもいったりきたりしている

  • 『屋根がチーズでできた家』小3読み聞かせに◎

    『屋敷こびと』小4◎

    『銅のなべ』小3、小4に◎

  • りすとてぶくろと針(フィンランド)/北風をたずねていった男の子(ノルウェー)/銅のなべ(デンマーク)/屋根がチーズでできた家(スウェーデン)/小さいおいぼれ馬(デンマーク)/正直な若者とねこ(アイスランド)/トロルとうでくらべをした少年(スウェーデン)/トッリレヴィップ(デンマーク)/いのちの実(デンマーク)/リヌスとシグニ(アイスランド)/おんどりときつね(ノルウェー)/赤いめ牛(デンマーク)/屋敷こびと(フィンランド)/ドブレ山のねこ(ノルウェー)/木のまたアンティ(フィンランド)/全15話収録

  • 小話がいくつも集まってできた物語集です。少しずつ読んだりして、1話1話をじっくり読むことをオススメします。北欧のふんいきをぜひ感じとってみて下さい。
    http://www.lib.miyakyo-u.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=308491

  • フィンランドの民話で「ポホヨラ」「ロウヒ」という、カレイラ(=フィンランド神話)にも出てきたワードが出てきたが、やはり双方は繋がっているのか?

  • 《内容》
    りすとてぶくろと針(フィンランド)
    仲良くくらしている3人ですが、針はマイペース。
    そんな針が2人にあっと言わせるいいものを見つける。

    北風をたずねていった男の子(ノルウェー)
    男の子が、吹き飛ばされた粉を北風のところから取り返しに行く話し。

    銅なべ(デンマーク)
    鍋が必要なものを持ってくる話し。

    屋根がチーズでてきた家(スウェーデン)
    ヘンゼルとグレーテルと似た話し。

    小さなおいぼれ馬(デンマーク)
    うぬぼれ王子様が、馬に変えられてしまう話し。

    正直な若者とねこ(アイスランド)
    息子が親の残した財産を夢のお告げ通りにに使い幸せになる話し。

    トロルとうでくらべをした少年(スウェーデン)
    賢い少年がトロルをたおすえお話し。

    トリレヴィップ(デンマーク)
    ルンペルシュティルツヘンと三人の糸紡ぎ女を合わせたような話し。

    いのちの実(デンマーク)
    遺産相続で、りんごの木一本しかもらえなかった末息子の成功譚。

    リヌスとシグニ(アイスランド)
    トロルに囚われた王子を娘が助ける話し。

    おんどりときつね(ノルウェー)
    きつねがおんどりを騙し、おんどりがきつねを騙す話し。

    赤いめ牛(デンマーク)
    赤いめ牛が王様の娘を助ける話し。

    屋敷こびと(フィンランド)
    屋敷の小人に心優しい料理人がスープを与え料理人を助ける話し。

    ドブレ山のねこ(ノルウェー)
    山に住む人間とトロルが、争うことなく上手く暮らしている話し。

    木のまたアンティ(フィンランド)
    金持ちの跡取りになる運命を持って生まれた男の子の波乱の半生。

    後書き一部引用

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