永遠の0 (ゼロ)

著者 :
  • 太田出版
4.36
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本棚登録 : 2355
感想 : 437
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778310264

感想・レビュー・書評

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  • 心に残る作品として目にしながらも、もっと早くに読んでおきたかったと無念でいっぱいです。
    読み始めるとそこには若くして志願兵として戦地で戦われた宮部久蔵氏と、今は目の前で寝たきりとなった義父とが重なって涙溢れ、先に読み進み難い重い作品でした。
    フィクションとありますが、あまりにも情景や描写が細かく繊細で出てくる言葉も聞き覚えがあったのです。
    義父も農家の口減らしの為、海軍に志願して横浜の学校を出て通信兵として戦地には僅かで終戦となったものの色んな想いをしながらも帰って来られたんだと思い涙しました。
    すっかり昔の事も口にされないし、忘れられてるお姿にもっと話を聞いておけば良かったし、今年12月に映画化されるらしいけど一緒に観に行きたかったと涙溢れるばかりです。

  • 太平洋戦争で特攻として戦死したとだけ知らされている顔も知らない祖父宮部久蔵の本当の姿を知るため、孫の佐伯健太郎と姉慶子が元軍人を訪ねていくという設定

    祖父を知る元軍人の回想が一人ひとり章立てされており
    章が進むごとに一面的だった祖父の姿がベールが剥がされていくように少しずつ明らかになり立体的になっていく
    まるで針金の骨組みだけだった塑像が肉付けされ、立体的になり色付けされ、血が通ったかのようだ
    最後に、家族をこよなく愛し『必ず生きて帰ってくる』
    という約束を何が何でも果たそうとした人間宮部久蔵の姿が私たち読者の前に現れる
    と同時に、そんな願いも虚しく特攻として敵艦に突撃せざるを得なかった全貌も

    この構成が見事だなと思う
    宮部久蔵の人間性が明らかになっていくと同時に、この戦争の軍部の綻びもさらされていくという仕掛けだ

    なぜ前途有望な若者を敵艦に突っ込ませるような非人道的な作戦が許されたのか
    それで苦しい戦況が好転すると信じていたのだろうか

    なぜ、せめて3ヶ月前に降伏して戦争を終わらせることができなかったのか
    返す返すも悔しく腹立たしい

    この本のレビューを読むと、是非が両極端に分かれている。百田さんの本は、思想的なものもあり、そういう傾向が強いのかなと思うが、人それぞれ考え方はあろうが
    私自身は、非常に遅ればせながら、この本を読んでよかったと思う

  • 今更ながら読んだ。図書館で予約してやっと手にする事ができた。
    そして、これは一気に読もうと思った。休みを使って。
    戦争中の話は難しく頭に入らないところもあったけど、やっぱり評判通り凄く良かった。
    最後の最後、いい段階で読書の邪魔が入らなかったら絶対涙がこぼれただろう。
    生き残ったのが・・・もうゾクッとした。百田さんって凄いな。
    だけど、改めで戦争の悲惨さ、惨さ、過酷さ。胸が苦しくなりました。
    今の時代を生きていられる事に感謝。
    戦争というものを知らない世代に大いに読んでもらいたい。私も読んで良かった。

  • お見事!

    「臆病者」との謗りを受けながらも生きて帰ることに執着したゼロ戦パイロットだった祖父の軍歴をたどる旅
    祖父を知る元軍人たちの回想は構成、章立て、その人の階級や兵種、人となり、関わりから現在の状況や住む場所
    史実との兼ね合いや伏線の張り方、「今」を生きる人の感情の変化、衝撃的なラストに至るまで見事と言う他なく★5じゃ足りない!名作です

    そしてこの作品を通して一番に感じたのは『怒り』であり、読み終わった自分の中に残った感情も『怒り』でした

    また皆さんはどう感じたのかも気になりました
    コメント読み漁ってみよっと!

  • 実話ではないですが、戦時中の軍人たちの生き様や心理がリアルに描かれていて、その世界観にわかりやすく入っていく事ができ、ボリュームはありますがどんどん読み進めることができました。ストーリーとしても、登場人物に共感でき、感動しました。

  • 太平洋戦争の話で、最初は少々戸惑いました。
    だんだん読み進めていくうちに、最期はどうだったのだろう…と気になって、一気に読み終えました。
    人の命の重さ、そして戦争によって狂わされた人々の運命…
    そういうのをずっしり感じたお話でした。

  • 静かに泣いた。

    お国のために死ぬことが軍人の誇りであった時代に、
    「妻のために帰りたいのです」と言い続けた男の物語。

    人の命より、機や艦にかかるお金や組織とエリートたちの保身が優先されていた時代。
    しかし蔑ろにされた命であったとしても、何かのために命をかける決意をした若者たちの時代。

    戦争の内側を後世に伝え続けないといけないですね。

    米軍は飛行機は作りなおせば復活できるが命は失うと取り戻せないと考えた。
    日本軍は戦闘機が壊れると大金がかかるが人は赤紙1枚だけで補充できると考えた。
    命を大切にしたことで、過ちを持ち帰り、伝え、組織と個人を強くしていった米国。
    命を疎かにしたことで、過ちを封印するしかなく、過ちを繰り返す道を突き進んでいった日本。

    戦争の悲惨さを伝えるだけの物語ではありません。
    戦争という狂った時代を通して、人と組織の愚かさを伝えつつ、人の強さ、純粋さをも伝えています。

    夏の一冊として後世に読み継がれて欲しいと切に感じた本です。

    私の本棚にまた1冊大切な本が増えました。

  • 「特攻で戦死した祖父は祖母を愛していたのか」という疑問から始まる、祖父の人物像に迫っていく物語。これまで、戦争についてこれほど考えさせられた事はなかった。 自らの生命を賭して、愛する人たちの安寧を信じ、絶望的な戦いに身を投じていった人達の心に想いを馳せるとき、熱い感情にのまれます。他では味わえない大切な重みに満ちた最高の一冊。  

  • 特攻隊として戦死した祖父の痕跡をたどる姉弟。
    その死には、大きな意味があった。

    あれ程話題になり、映像化されていたにも関わらずの未読でした。
    私には、今出合って良かった本。

    まだまだ知らない戦争のこと、今少しずつ勉強中です、今更ですが。

    悲しい話ですが、宮部久蔵の男気に魅せられます。
    例え美化された話と言われても、ここから戦争について考えることが出来たら、それは大切な出合い。
    多くの人が読むべき本と、改めて思いました。

  • 読み終えたあとで、栗田艦隊や二・二六事件、五・十五事件、登場したパイロットについて調べた。学生のころの授業で知ったつもりになっていたことたちが、表面をなぞっただけだったと気づけたことは大きい。

    第二次世界大戦時、ゴムや鉄などの物資が欠乏していったことと軍事力の差で日本は敗北したと思っていた。勝てる見込みのない戦争を日本はしたと思っていた。
    物資の不足で日本が苦しんだのは事実だし、最終的な軍事力の差は歴然としている。しかし、開戦時にはそれほど差がなかったことを知り、幾度かの作戦ミスにより日本が結果として自分の首を絞めていたことに驚いた。

    歴史にifはあり得ない。ただ、真珠湾攻撃でのアメリカ軍の施設と空母を破壊できなかったこと、ミッドウェー海戦での慢心、栗田艦隊のレイテ沖でのUターン。
    この3つがなければ、もしかして日本は勝利国になっていたかもしれないと思った。でも勝つことが良いかどうかはわからない。社会主義国として繁栄して自由の無い国になっていたかもしれない。ifの話であり、間違いを犯さないようにするということであれば、アメリカと戦争をすべきではなかったということなんだろうし、中国とも戦争するべきではなかったのかもしれない。
    後からなら何とでも言える。ただ、その時代の人たちが必死で生きたことは誰にでもわかる。十死零生の特攻隊の気持ちを想像すると本当につらいものだ。現代の世のなかでのうのうと生活していることが恥ずかしくなる。

    神風特攻隊の人たちをイスラム過激派のテロリストと対比させる場面がある。イスラム過激派にも思想があるのだろうし、無理やり自爆テロをさせられてるのかもしれない。それなのに”テロリスト”と片付けてしまうのはどうかと思った。集団ではあるがそれを行うのは個人なのだ。
    神風・回天・桜花の自爆攻撃をしかけた若者たち全員に葛藤があり、行かねばならぬ状況があったのだろうということがわかる。彼らをテロリストと蔑むことはできない。そういう時代だったとしか言わざるを得ない。自爆攻撃を指示した司令部があまりにも鬼畜だ。

    また、責任の所在が不明確な点に、現在の日本と同じものもを感じた。戦争中、暗号が解読されているのにも関わらずそれを使い続けたのは、暗号がバレていることが明らかになればそれが自分の責任になってしまうためということだったり、司令部の作戦ミスでも司令部の責任を追及しない点。そして戦後、責任を追及したのは新聞と勝利国であり、内側からの追及が少ないように感じた。新聞などのメディアの責任ももちろんあるはずなのに、いつだって新聞は自分は正義のような顔をして正しいと言い張っている。
    東日本大震災での原発事故のときのおかしな事態の数々も戦後の日本と何も変わらない。責任を明確に出来なかった。日本は経済的にも成長したはずだが、責任逃れの本質はかわっていないのかもしれない。

    机上の空論のようなバカげた作戦の前でも侍として逃げなかった特攻隊たち。彼らは皆若くして亡くなった。
    いつだって苦しい思いをするのは市民であり、若者あり、現場の人間だ。
    それをどうにかするのが政治じゃないのだろうか。政治の責任を追及するのが新聞ではないのか。三権分立なんて建前ばかり言ってないで、政治をやる人間は何百万人の命を預かっていることを意識するべきだ。それこそ必死の思いで取り組まなければならない。そうでなければ、特攻隊のような悲しい若者たちをまた生み出してしまうことになる。

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    高山さんは朝日新聞の記者なのだろうなと思いながら読んだ。あからさまに悪役で少し気の毒。まあ。毒が利いてなければ盛り上がらないし。悪役は高山さんと軍の司令部だったな。

    物語の最後は60年の時を超えて明らかになるラブストーリー!って感じでうまく収まっていてよかった。感動もした。

    この小説は戦争ものだからきっと賛否両論あるんだろう。飛行隊を美化してるって批判は絶対にあると思う。色んな考え方があるべきだ。そしてその意見を発表しても罰せられないような社会であるべきだ。
    多くの意見があり、多くの批判があり、それらに対して責任を持たせる世の中であれば悲しい過去は繰り返さない。そう思った。

著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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