ベルリンうわの空

著者 :
  • イースト・プレス
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本棚登録 : 749
感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781618494

感想・レビュー・書評

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  • 吉祥寺のブックスルーエに行ったら、著者の香山哲さんの選書したブックフェアをやっていて、飛びついた。
    飛びついた理由は
    1.香山哲さんという人を全く知らなかったから。
    普通書店でやるブックフェアっていうのは〇〇が選んだ本という場合には、その〇〇には有名人が入るものであって、最近であれば芦田愛菜とか、誰でも知っている人である。そういうのには全く興味がない。柴田元幸とか、多和田葉子とか、好きな人ならともかく、有名人の選書は多分に出版社や書店の都合が絡んでいて、鼻白むからである。しかし、一般的に知られていない人の名前を冠したブックフェアは滅多になく、それだけで心惹かれる。
    ⒉選書がとても良かったから。
    香山哲さんの選んだ20冊が、本人手書きのPOPとともに平積みされていて、20冊中6冊は読んだ本であったが、どれも好きな本だった。この人とは合うぞ!という予感。読んでなかった本が、「これはここで出会わなかったら一生読まなかったかも」と思えるような地味な見た目の本ばかりだったのも良かった。

    で、早速この本と、香山さんおすすめの『洞窟オジサン』を買って帰ったが、『お嬢さん放浪記』も買わなかったことを後悔している。こういう本を置いてる書店、少ないのに!

    この『ベルリンうわの空』を読んで、特殊メイクでアカデミー賞を取ったカズ・ヒロさんが、日本の文化を嫌いになった、と答えたことを考えた。
    カズ・ヒロさんだって、文化と言ったけど、日本の芸術を否定したわけではないだろう。多分異質なものを否定したり排除する文化、声を上げると(その内容にかかわらず)叩かれるような文化にうんざりしたのではないかなあ。
    この本で描かれたベルリンは、差別も貧困ももちろんあるが、異質なものを無視したり、声も聞かずに排除したりはしない。
    駅のホームで酔っ払ってヤケを起こしてる人に、見知らぬ他人が隣に座って「つらいことあった?」と聞いてあげてる場面、こんなの日本でみたことない。日本の自殺者が多いのは、これがないからじゃないの?
    宗教や人種が違う人、政治信条、性的指向もいろいろで、定住者、旅行者、移民が混じりあって暮らしているから、他人に対して寛容で、ひとつの価値観を押し付けることがない。
    私も、言葉さえ何とかなれば、ベルリンに住みたいなと思わずにはいられなかった。日本は、所謂「普通」の人には居心地良くても、少しでも「普通」から外れれば、それを隠さなければ安らかに生きられないところがある。
    ベルリンでは、家庭で不要になったものを外に出して、欲しい人がもらっていくというのが当たり前になっているようだが、まさに私もこういうシステムが欲しいと思う。要らなくなった本をブックオフで売っても大したお金にならないし、メルカリに出すほどマメでもないし、読みたい人がもらってくれたらうれしい。自分も読みたい本が出ていたらもらって帰る。いいな。実際は捨てるよりマシかとブックオフに持っていき、ゴミ捨て場に大量の本があると人目を盗んで見に行ったりしている。
    しかし、実際にそうすると、ごっそり持って行って、価値あるものだけ転売する人が絶対出るよね。日本なら。このシステムが成り立つということは、「これは出した人が善意で提供したものだたら、他人がそれで利益を得てはいけない」という道徳がちゃんとあるということだ。

    読んでいると日本の息苦しさ、偏狭さにうんざりするが、それはあくまで読み手の私の感想であって、香山さんは安易に日本を批判したりはしない。そういう心の広さも、この人の魅力だと思う。

    以下引用
    どの国も「ピンキリ」の上限下限というのは似てる。すごい凶悪事件や汚職があったり、ノーベル賞とるような人がいたり。でも「じゃあ結局どこも同じだな」とはならない。ピンとキリの間の色々が、どんな割合・比重でどうバラけているか。その微妙な差こそが特徴になる。(P88)

    国際観光としでもある都市からホームレスを追い出すだけなら簡単だ。実際に排除をしている街もあるし、「工夫」された構造物(眠れないように仕切りがついたベンチや、傾斜や凸凹のついた建物の軒下など)もある。だけど僕は、目に見える場所に彼ら彼女らがいて、みんなで問題に対面できる環境が好きだ。(P134)

    こういうブックフェアをやるブックスルーエみたいな書店を応援したい。Amazonにはできない、書店ならではの企画だと思う。ジュンク堂書店や紀伊國屋書店ではないところもいい。
    それから、このブックフェアの本を、いろんな書店が(自分の本がなくてもいいから)コメント付きで紹介してください。コピーフリーです。という著者が本当に素晴らしい。いい本だから、ぜひ買ってほしいという気持ちが伝わる。

    久々に書店の企画でワクワクした。

  • 独特な登場人物の造形には好みがあるかもしれない。
    ベルリンで暮らしていろいろと体験した、考えたことが綴られていく。
    ここ数年、ヨーロッパの街も時間の流れが速くなってきているので実際、行ってみたら、こん感じじゃなくなっているんだろうな。
    全3巻の1

  • ・ある男性が、ベルリンという地でただ、生活をしているという事実がとてもかけがえがなくて、素敵で尊い。生きることの幸せってこういうことかも。 ・人と人との緩い関わりのある都市は素敵。カフェが人と人との関わり合いの場になるの、とっても尊いし羨ましい…! (ちょっとロンドンを思い出す) ・モブの人の描写が、一つ目だったりモンスターぽかったり、ちょっとグラフィティ的で、海外アニメっぽく、新鮮な絵柄で面白かった。 ・「…」の使い方が印象的で心地よい。あんま他の漫画で見たことない表現。

  • さまざまな人種、考えが違和感なく共存共生しているベルリンの街を伝えるコミック。
    ごく自然に生きやすい環境がそこにある。
    続巻も気になる。

  • 3巻まで読了。
    どれもベルリンでの生活を描いているけれど、1巻は生活、2巻は交流、3巻は自己との対話を軸に描かれている印象。移民が多い国だからこそ他者に寛容でフラットに受け入れる感覚は、日本人には新鮮。
    個人を認めつつ上手くコミュニケーションが図れる、気分転換的な逃げ場がある、ちょっとした事も大切にして楽しめるなど、素敵な生活だなと思いながら読んだ。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC01772335

  • ベルリンに移住している香山哲さんの漫画。
    ふとしたきっかけで知って本屋で久しぶりに本を買った。
    香山さんの世界の見方が素敵で、世界に目をもっと向けたいと思った。時間を置いてまたじっくり読みたい本。

  • あぁ私もどこかへ行きたい
    飛行機乗りたい✈︎
    海外行きたい

  • 小さい思い、小さい気づき、小さい痛みを大切にして生きる著者のベルリン滞在ルポ漫画。
    著者の繊細な感性に触れて、自らの感性も刺激される。
    何度も読み返したい。

  • 2021.8.31読了。

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著者プロフィール

1982年兵庫県生まれ。漫画家、イラストレーター、ゲームクリエイター、ライター。信州大学理学部生物科学科卒、神戸大学大学院医学系研究科中退。2017年、フランス・アングレーム国際漫画祭オルタナティブ部門ノミネート。『ベルリンうわの空』(プリント版はイースト・プレスより刊行)にて第24回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に入選。ドイツ、ベルリン在住。

「2022年 『香山哲のプロジェクト発酵記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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