はじめての沖縄 (よりみちパン! セ)

著者 :
  • 新曜社
4.23
  • (48)
  • (42)
  • (14)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 744
感想 : 63
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788515628

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 他人に親切にするためには何かのルールを破らないといけない。
    みんなそれぞれ辛いところがある。それに寄り添う?
    一人旅は何を得に行っているのだろうか?
    自分の欲望がまざまざと目にできる瞬間。
    普通の瞬間が何よりも尊いが、それは写真に映らない。
    再会の意味。
    男性性と搾取。
    語り聞くことでしか他の人のことは理解できない。

  • 沖縄をフィールドワークしてきた岸政彦のエッセイである。フィールドワークとはまた違った口調である。ウチナンチューという言葉が多くなり、ヤマトンチューとの区別がよくわかる。観光ガイドよりも役立つ。

  • 面白い本でしたが、作者のTwitterがしんどすぎて……。

    再読する気が失せた。

    本当にもったいないのでネットやめたほうがいいかと。

  • 冒頭にも書いてあるが、たしかにめんどくさい本。
    しかし憧れの沖縄、大好きな沖縄、拗らせている沖縄、沖縄らしさ、ナイチャーから見た沖縄などさまざまな沖縄がさまざまな人の視点から存在する事がよくわかる。
    沖縄らしいとは、いったい。その言葉こそが差別なのか。
    ああ面倒くさい。

  • どの経験も、どの物語もすべて沖縄なのである。

    沖縄のどんな一欠片も受け取ろうとしている姿が良かった。

  • 挿し写真がどれも素敵でした。
    ステレオタイプな沖縄写真ではなく、沖縄の方々が日常生活を営む場所の写真達でした。

    どの写真にもキャプションが記されていません。
    沖縄についてどう思うか。それを自分の血肉からでた言葉で解釈するようにと、写真が私達に促しているような気がしました。

    私は、田宮虎彦さんの『沖縄の手記から』を読んでから、沖縄に興味を持つようになりましたが、岸さんのこの本を読んであらためて思いました。
    事実を知ることは、過去と現在をつなぎ、未来を切り開くものだと。

    考え方が様々起きるのは事実の必然です。

    ですが、「ねじれの分断」チャプターにもある、大田昌秀さんと國場幸一さんのように、事実を脇に据えて人として握手を交わすことができるのはすごいことだと思いました。沖縄の愛し方が異なるだけで、沸点と融点に大きな差異がなかったのではと感じました。

    ふと自分の子供の時の旅のことを思い出しました。

    30年以上前の、初めての東京旅行。
    東京はどこの街もディズニーランドのようなところだと思って上京したのですが、そうではなかった。
    ショックで泣いたけど、新小岩のお食事処(在日の方が営んでいました)のおかみさんが優しくて、ご飯が美味しくて、興奮が落ち着きました。

    街には魔法は存在しません。
    人間に魔法が備わっていないのは、安易に物事を解釈し解決に向かわせないためなのかもしれません。

    沖縄を題材にした本ですが、この不穏な世界情勢をどう認識するかの手引きにもなると思いました。


  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/732312

  • 沖縄内部の分断や亀裂、沖縄と内地との境界線。貧困と差別。
    わたしたち(ナイチャー)とは異なった歴史を歩んでいる人びとのことを、どのように理解することができるだろうか。
    単純な正しさの基準のもとには語れない。

  • はじめての沖縄

    岸政彦著
    2018年5月5日発行
    新曜社(よりみちパン!セ)

    今回、社会学者(立命館大学教授)としての著作を初めて読んだ。これまでは小説と自伝エッセイのみ。

    著者の研究テーマの一つが、沖縄。若い頃に「沖縄病」になり、今でも年に1ヶ月は沖縄に滞在する。当時は、大阪でも毎日沖縄のことを思い、沖縄の本を読み、音楽を聴き、泡盛を見つけると必ず買って家で飲んだ。
    そんな自分を、「そうとう気持ち悪いやつだったと思う」と表現する。この本も、その点がテーマだと言ってもいい。社会学者としてのフィールドワーク研究の成果発表の場でも、エッセイでも、ましてや紀行文でもない。その入り口にある、「ナイチャー(内地の人、ヤマトンチューとほぼ同じニュアンス)」と沖縄の人たちとの位置関係について、ずっと考え、語っているような本だ。

    自分は沖縄が好きで、沖縄を研究テーマにしていると(内地で)話すと、多くの沖縄好きの人は、必ず一家言を披露するという。世間の理解とは少し違う、自分だけが理解している沖縄について語り始めるという。

    著者、岸政彦がいいたいのは、そのように沖縄を、沖縄の人を、一言で表現してはいけない、一面的に描かないでほしい、という点だ。基地はいやだ、でも基地で儲けている。米兵の犯罪行為や横暴は許せない、しかし、アメリカ人やアメリカ文化は大好きだ。そういう複雑な状況は矛盾ではなく、それ自体が単純には説明できない一つの文化であり、社会の成り立ちであることを改めて実感させられる。

    90年代半ば、僕はエイズに関するラジオ番組の原稿を書き、いろんな取材をした。感染経路がほぼ解明されたばかりで、まだ、偏見がきついころだった。そんな中、血液製剤によりHIV感染したことを公表する人だけでなく、ゲイによって感染した人の公表も始まった。ガードがきつくてなかなか近づけない関東地区に住むある人へのルートを探しあて、許可をもらって河内家菊水丸さんに取材に行ってもらったことがある。その時に話してくれた内容に、雑紙取材に応じたらギャラがもらえたので「男を買いに行った」という話があった。HIV感染を公表し、差別・偏見はしないでね、皆さんも気をつけてね、と呼びかけていると、なにか聖人扱いされてしまうが、我々だって普通の人だよ、と楽しそうに語ってくれた。沖縄の現実と、つながるところがあると思う。沖縄の人は苦しんでいるが、聖人君子ばかりではないのだ。

    辺野古の反対座り込みに内地から来た人間が日当をもらっているというデマが、なぜ広まったのか。実はその源が沖縄の人のある態度や言い方にあったと著者は解説している。
    関西にいると被差別部落出身者によく接するが、大学生の頃、そういうおっちゃんたちは酔っ払うと「わしはこれやからな」と自らを貶めるような仕草を指で表現した(今はそんなことする人はいないとも思うが)。それと似たようなことを、沖縄の人たちだって酔っ払うときっとするのだろうな、と思った。一見、自分たちを貶めるような発言。

    終わり近くに書かれているところ、少し引用したい。
    基地に苦しむ沖縄、貧困と差別の被害者である沖縄は、本土の左派のインテリたちが勝手に作り上げた一方的で貧しいイメージである。かれら(ウチナンチュ)によれば、「現実の沖縄」は、もっと多用で複雑で、そしてたくましくしたたかだ。ウチナンチュたちは、基地を利用しさえするのである。あるいは逆に、基地収入や日本政府からの補助金にぶら下がり、それに寄生するウチナンチュの姿も描かれる。
    (中略)
    沖縄の人々を「単なる」被害者、弱者、基地被害に苦しむ人びととして描くことこそが「差別」である。なぜならそれは、たくましくしたたかな沖縄の人々を、ただ弱いだけの存在にしてしまうからである、と。

    もちろん、こう書きながらも、著者が最も許せないのは、「そらみろ、沖縄の人は基地で得しているんだ、今の政府のやり方は正しい、反対しているのは金もらってる内地人だ」と暴言、虚言を振り回している連中であり、そういうのは論外で相手にしていないということは、本を読めばすぐに分かることである。

  • 2021年1月読了。
    110ページ
    「駐留米軍からの直接の受取や、占領初期のガリオア・エロア基金などの流動性の供給がその成長のトリガーになっていたにせよ、戦後を通じた沖縄経済の力強い成長の主要な部分は、沖縄県民の増加と都市部への集中によってもたらされたと捉えることができる。要するにこういうことだ。戦後の沖縄の経済成長と社会変化は、おそらく米軍の存在がなくても、自分たちの人口増加と集中によって成し遂げられただろう。このことをさらに言い換えれば、次のようになる。沖縄は、米軍に「感謝する」必要はない。この成長と変化は、沖縄の人びとが、自分たち自身で成し遂げたことなのだ。米軍のおかげなんておもわなくてもよい。沖縄は、沖縄人が自分で作り上げてきたのだ。」

    沖縄に米軍なかりせば、確かに「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」に出てくるあの一種独特な街の風景は存在しなかっただろうが、それは沖縄の自立とか全然別の話。
    ちなみに拙宅付近にも米軍施設があるが、人の流れを見事なまでに止めてしまう「迷惑施設」としか言いようがない。

全63件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

岸政彦(きし・まさひこ)
1967年生まれ。社会学者・作家。京都大学大学院文学研究科教授。主な著作に『同化と他者化』(ナカニシヤ出版、2013年)、『街の人生』(勁草書房、2014年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年、紀伊國屋じんぶん大賞2016)、『質的社会調査の方法』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、2016年)、『ビニール傘』(新潮社、2017年)、『マンゴーと手榴弾』(勁草書房、2018年)、『図書室』(新潮社、2019年)、『地元を生きる』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、2020年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、2021年)、『リリアン』(新潮社、2021年、第38回織田作之助賞)、『東京の生活史』(編著、筑摩書房、2021年、紀伊國屋じんぶん大賞2022、第76回毎日出版文化賞)、『生活史論集』(編著、ナカニシヤ出版、2022年)、『沖縄の生活史』(石原昌家と監修、沖縄タイムス社編、みすず書房、2023年)、『にがにが日記』(新潮社、2023)など。

「2023年 『大阪の生活史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸政彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
都築 響一
宮下奈都
村田 沙耶香
恩田 陸
岸 政彦
岸 政彦
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×