生きることの意味を問う哲学: 森岡正博対談集

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  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791775415

作品紹介・あらすじ

「生まれてこないほうが良かった」と言われたとき、 あなたは何を語ることができるだろうか
反出生主義はほんとうに自殺を導かないのか? 加害者であることは引き受けられるのか? 日本語で哲学することは可能か? 対話によって開かれる哲学とはどういうものか?――戸谷洋志、小松原織香、山口尚、永井玲衣とともに、生きることの深淵を覗き込む。現代における重要テーマをめぐって重ねてきた言葉たちを結晶化した対談集。

感想・レビュー・書評

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  • 最初の、戸谷洋志との反出生主義の話が面白かった。
    ベネターの土俵に乗ればベネターの論は絶対に論破できず、拮抗しうるとしたらヨナスがヨナスの土俵から綱引きをするしかないらしい。私はベネターの著作は読んだことがないけれど、当事者性に乏しいというか論理ゲームのような形で反出生主義を打ち立てているきらいがある、というので、ちょっと読むのが遠のいた。
    原始仏教が、輪廻転生してまた生まれ変わることから解脱すること=再び生まれてこないことを目指しているというのは目から鱗で、確かにその意味で誕生否定が根底にあるのだと思う。ブッダの生への諦めの先の餓死に似た死があって、ショーペンハウアーなどは自殺は認めないが餓死は生への諦めだから例外的に認めているらしい。
    反出生主義が自殺につながるというのは私は絶対に違うと思っていて、生まれてこないというのと、もう生まれてしまったものを無くすというのは非対称だというのは本当にもっともだと思う。
    森岡さんは反出生主義に乗っかって世界を悲観するのではなくて、反出生主義に則りつつもそれを手がかりに「生まれてきてよかった」と思えるにはどうしたら良いのか、という誕生肯定の方法を探ろうとしているのが希望が持てるなと思う。
    反出生主義には出産否定の側面もあるというが、個人的には「人間は子供を産むべきではない」と一般化するのは暴力的で、「私は子供を産まない選択をする」というのが受け入れられ尊重される社会、くらいが理想的ではないかと思う。子どもを産むこと自体は子供の意思を無視せざるをえないので暴力的にならざるをえないが、だからといって産まないことを強制することも暴力である。

    他は、加害者と哲学、大森荘蔵のJ哲学など日本語で哲学することについて、連歌のような場で形成されていく哲学対話、といったことがテーマで、それぞれのテーマが刺さる時もあるだろうと思うが、今は反出生主義が一番響いた。

  • p.12

  • 加害の話と「ねそべる哲学」から出発してもう少しいろいろ読みたい気がする

  • 『現代思想』の対談記事+αをまとめたものだが、著者の志向性のようなものは分かる内容になってはいるので、他作を読む前の入門編としてはいいのかもしれない。
    著者は「生命の哲学」を強調しているが、出生の肯定/否定という善悪というか価値観的な色彩は色濃く出てはいるので、世間一般的には倫理学的な内容であると言って差し支えないように思える。また、アカデミズムとの距離感についても興味深いものがあるが、個人的なスタンスとしては好きなようにすればいいとは思うものの、実際に大学教員として成績評価するときにはそれなりの客観性というか大げさに言えば学生のみならず、大学さらには文科省への説明責任が発生するわけで、その辺をどう考えているのだろうかという疑問はある。そんな面倒に巻き込まれるぐらいなら、在野の研究者として活動すればよいのではないかと思うが。
    とは言え、そもそも「哲学とは何か」という哲学観が立場によって異なり、ある種乱立している現状は再認識させられる内容ではある。

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著者プロフィール

1958年高知県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪府立大学にて、博士(人間科学)。東京大学、国際日本文化研究センター、大阪府立大学現代システム科学域を経て、早稲田大学人間科学部教授。哲学、倫理学、生命学を中心に、学術書からエッセイまで幅広い執筆活動を行なう。著書に、『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』(勁草書房)、『増補決定版 脳死の人』『完全版 宗教なき時代を生きるために』(法藏館)、『無痛文明論』(トランスビュー)、『決定版 感じない男』『自分と向き合う「知」の方法』(ちくま文庫)、『生命観を問いなおす――エコロジーから脳死まで』(ちくま新書)、『草食系男子の恋愛学』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、『33個めの石――傷ついた現代のための哲学』(角川文庫)、『生者と死者をつなぐ――鎮魂と再生のための哲学』(春秋社)、『まんが 哲学入門――生きるって何だろう?』(講談社現代新書)、『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)ほか多数。

「2022年 『人生相談を哲学する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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