レクサスとオリーブの木 上: グローバリゼーションの正体

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794209467

作品紹介・あらすじ

冷戦後、世界のルールは激変した。技術、情報、金融の壁が消え、あらゆるものが国境を越えて広がっていき、地球規模で結びつく「グローバル化」の時代がやってきたのだ。無名の青年が一夜にして富を築く一方で、国も業種も超えた合併が巨大企業を生み出し、世界の株価は短時日のうちにとんでもない乱高下を見せる。混沌にも似たこの新しい世界のルールとは何か。何が新たな勝者を生み、何が日本の景気を抑えつけているのか。著者はこの問いに二つの鍵で答える。レクサス(トヨタの高級車)とオリーブの木(土地・文化・民族の象徴)である。国籍を超えた最新技術の集結と、古来の伝統的価値への固執。この二つの要素を軸に、現在の世界を鮮やかに読み解いたのが本書である。

感想・レビュー・書評

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  • 内容的にすばらしい。

    が、少し古い書籍ですので、今では当たり前のことが書かれているかも。

  • ふむ

  • 賞味期限切れの本を一気読み開始。
    このぐらい前だと賞味期限切れ感が強く、もう少し前になると歴史となっているのが興味深い。著者が当時見て聞いて思ったことを、当時からみたこれからの世界を予見しようとしており、著者が独自の名称をつけた事象も多々ある。その名前が定着することはなかったが、うまく捉えていたんだなと思われることが多々あって興味深い。これがフラット化する世界に繋がっていったんだなと強く感じた。

    アジアとアフリカの政府高官のジョークを交えた泥棒政治:Kleptocrancyの話も興味深い。こういう状況を呼ぶワンワードを初めてしった。またアルバニアが民主主義かした後、いかに混乱したかも興味深い。著者曰く、与えられたのはハードウェア(選挙などのシステム等)のみで、それをソペレートするためのソフトウェア(国民の教育)が圧倒的に足りず、泥棒経済に走らざるを得なくなったという指摘も興味深い。

    P.40
    とほうもなく複雑なグローバル化システムを理解し、説明するには、何をすべきなのか?
    手短に答えるなら、一度にふたつのことをこなす必要がある、という結論に達した。世界を多次元から複眼で眺めると同時に、その複雑な現代の姿を、大上段に構えた理論を振りかざすことなく、シンプルな記事で読者に伝えねばならない。

    P.44
    政治と文化と国家安全保障の三次元思考に金融市場という新たな次元を加えることは、メガネを新調して、突然、世界を四次元で見始めたようなものだった。(中略)
    技術という新たな次元を自分の視野につけくわえざるをえなくなり、その結果、五次元で世界をみる記者となった。


    P.212
    韓国の元首相、李洪九は、政府がこのメッセージを理解するのに、数年かかったと話た。「わたしが首相だった一九九五年、韓国はOECDに亀井が認められ、ひとりあたりの国民所得が一万ドルに達した。わたしたちには、ついに、本当に、事を成し遂げたのだと考えた。高校を優等で卒業したのだから、優秀な大学生になれるはずだと思っていた。だが、一つの段階で必要だった資質が、次の段階では別物になる。自分たちが非常に誇りにしていた大規模な国家官僚機構は、推進力ではなく、むしろ障害物になった。わたしたちは、製造プラス輸出イコール経済成長と成功、という公式に即して生活していた。それが間違いだったのを『一九九〇年代後半の』危機から学んだわけだが、高い授業料だった。

    P.194(完全な泥棒政治-国家が盗みを基礎にして形成されているところと萌芽段階の泥棒政治-汚職がはびこり、黙認され当然視されているが、いくばくかの合法的な規範や民主的な規範も存在しているところのジョーク)
    アジアとアフリカのインフラ担当大臣が、互いの国を訪問し合う。まず、アフリカの大臣がアジア大臣の国を訪れて、その日の終わりに、自宅での夕食に招待される。アジアの大臣は、すばらしく豪華な邸宅に住んでいる。そこで、アフリカの大臣は「ひゃあ、どうしたらきみの給料でこんな家に住めるのかね?」と尋ねる。アジアの大臣はアフリカの大臣を大きな張り出した窓に連れていき、遠くの新しい橋を指して、「あそこの橋が見えるかね?」ときく。「ああ、見える」アフリカの大臣が答える。すると、アジアの大臣は自分自身を指して「十パーセント」とささやき、橋の建設費の十パーセントを懐に入れたことをほのめかす。さて、一年後、アジアの大臣がアフリカの大臣の国を訪れて、相手が自分よりもさらに豪華な家に住んでいるのを知り、「ひゃあ、どうしたらきみの給料でこんな家に住めるのかね?」と尋ねる。アフリカの大臣はアジアの大臣を今の大きな張り出し窓に連れていき、水平線を指して、「あそこの橋が見えるかね?」と尋ねる。「いや、橋なぞないぞ」とアジア人の大臣は答える。「そのとおり」とアフリカの大臣は言い、自分自身を指して、「百パーセント」。

    P.221
    インドネシアの報道機関は、縁故主義がはびこるスハルト体制を直接非難することができないため、代わりに、(当時、大統領の息子が牛耳っていた)インドネシアの国営自動車工場がWTOの基準を逸脱した関西によって保護されていることに対し、アメリカや日本がWTOに不服を申し立てたという事実を喜び勇んで報道した。インドネシアのグローバリューション主義者の戦略は、要するに、インドネシア社会をグローバル化させて、スハルト体制をガリバーのように孤立した状況に置くことだった。インドネシアの軍事評論家ジュオノ・ソダルソノが、グローバリューションとは、「われわれが内部から生み出せない商習慣や規律を、グローバル市場がわれわれに教養する」ことだった。

    P.244
    グローバリューション理論のおかげで、わたしは楽観主義者になって、民主化における投資家集団の貢献がますます増大すると考えているが、投資家集団が今後くり広げる現実には、注意する必要がある。投資家集団に接続さえすれば、その向こうの端にある、よりよいソフトウェアやオペレーティングシステムや民主主義を得られる、というわけではない。懸命に努力しなくてはならない。ソフトウェアを作り上げることは、本質的に政治的な過程であって、生きた人間がかかわるのであり、彼らはしばしば政治的、経済的、歴史的、文化的な抵抗を示す。近道はないし、人々はまず間違いなく痛みを覚えながら学ぶ事になる。アメリカが現在の姿になったのは、鉄道事業の二百年に及ぶ繁栄と後退のくり返しや、絶え間ない銀行破綻、大型破産、現れては潰れる独占企業、一九二九年の株式市場の暴落、そして一九八〇年代の貯蓄貸付組合の危機のおかげだ。はじめから今の姿だったのではない。

    P.247
    イスラエルの政治理論家ヤロン・エズラヒは、こう述べる。「歴史のなかで最も専横な権力は、決まって、なんらかの非人格的な論理主体ー神、自然の法則、市場の法則ーの下に隠れていて、道徳的に耐えがたい相違がはっきり目につくようになると、必ず反動(バックラッシュ)を引き起こす。十八世期ヨーロッパの啓蒙活動は、実際は、科学と合理性のグローバル化だった。そして、盗人、ぺてん師、搾取者、詐欺師が、なんであれ自分の行っていることは、科学と論理による必然の結果なのだとこぞって主張したとき、反動が訪れた。同じことは、グローバル化についても起こりうる。大勢の人々が、グローバル化を一定の経済エリートが個々の市民の声を奪い取るために用いた仮面にすぎないと見なしている。だから、一部の人々は、各社会のグローバル化主義者たちはまず報道機関を買おうとするが、それは、不満をかかえていて自己主張する可能性がある市民を、重巡な消費者に変えたいからだ、と主張する。政治を観戦スポーツに変えてしまうことは、グローバル化を支える微妙な過程のひとつだ。これによって市民は、参加者から、参加しているという錯覚を抱いた観客へと、転換あるいは変質させられる。

  • 1999年に米国で刊行されたグローバリゼーションの幕開けを告げる1冊。インターネットの伸展による常時ネット接続、金融、経済の国境がなくなるなど当時の近未来感がわかる。そこから四半世紀が経過し、実現しているものもあれば、そうでないものもあるが、この本を読んで四半世紀前を振り返り、今後の四半世紀先を自らの頭で予測する大事さを教えてくれる。

  • グローバル化が牧歌的に語られた時代のベストセラー

  • 291pages

  • 「国が企業化している」

    という点が印象に残った。
    国の情報を的確に透明性を持って外に公開する事が、電脳集団から投資を呼び込み、企業から技術を呼び込み、それが国の繁栄に繋がる。

    しかし一方で、少しの「あら」があればすぐにそれらは去ってしまう。

    さらに、「だからこそ」国を公開する一方で「ブランド化」が必要である。


    ここら辺が印象に残った、これを10年以上前に書いているということに驚きがある。


    国の垣根はあるが、それは冷戦時代とは別の「垣根」であり、様々なものの移動を妨げる垣根を持つ国は衰退していく。

  • レクサスとオリーブの木
    ※読むのであれば本書より2008年刊行の『フラット化する世界(上・下)』を。これは2000年の本なので内容が古い。

    レクサスは近代化、合理化、新しいもの象徴として、オリーブの木はアイデンティティ、帰属意識、古いものの象徴として表されている。
    冷戦後、世界の半分では近代化が進んだが、残りの半分はそうではなかった。
    日本では最新技術によってレクサスが作られ、世界で売られたが、イスラエルではどの民族がオリーブの木の所有者か争っていた。

    レクサスを作っている日本にオリーブの木の概念がなく、イスラエルは近代化しない、という話ではない。
    世界情勢を考えるとき、冷戦下においては「オリーブの木」について考えればよかった。共産主義か資本主義か、アメリカかソ連か、といったことだ。
    戦後世界においては、世界情勢は「新しいものと古いものの相互作用」として捉える必要がある。
    本書を引用すれば、「レクサスのなかにいる時間が長くなるほど、オリーブの木に寄りかかって過ごしたい時間も長くなる」ものだから。


    本書で書かれているのはグローバル化に尽きる。
    だが書きたいことがありすぎてか、グローバル化というテーマが大きすぎてか、著者の遊び心が過ぎてか、話があちこちに飛ぶ。
    結局何を言いたいのか?
    企業はグローバル化し、ヒトモノカネ、何でも一国内に留まる事はなくなっていく。
    成功したいのであれば、企業はグローバル化に適したシステムを取り入れるべきだし、国もそれを支援ないし受け入れる準備をしろ。
    といったところか。


    「国家を査定する8つの質問」について。
    著者独自の項目で、国の経済力とポテンシャルを評価するために使う。
    国が企業化していることから、グローバル企業をモデルにして考案された。

    1.あなたの国はどのくらい接続しているか?
    帯域幅のこと。スムーズなネット環境が整っているか、インターネットに接続できる人はどの程度か、というもの(2000年刊行なので当時としては最もだが、2012年となっては古いか)。
    情報の流通、アクセシビリティについての評価か。

    2.あなたの国は、どのくらい高速か?
    大が小を食う世界から、高速の者が低速の者を食う世界に変わった。国も同じ。現地参入に必要な書類や税環境が最小限で、リソース、設備も迅速に揃う国たれ。
    モデルはスコットランド。

    3.あなたの国は、自国の知識を収穫しているか?
    Webサイトの7割は英語だという。帯域幅がどれほど広くても、使う人間がネットワークを有効活用していない、あるいはできないならば、意味はない。

    4.あなたの国の重さは、どのくらいか?
    重が軽を食う世界から、軽が重を食う世界に移行している。重さ当たりの利益が高くなっている。
    輸出コンテナに、自動車を50台積むか、マイクロチップを1,000,000,000,000個積むか、どちらが価値があるか。

    5.あなたの国は、公開する勇気があるか?
    AppleとAndroid、どちらが勝つか。
    Appleは閉鎖的な、Androidは開放的、という前提。
    今のAppleは閉鎖的とは言い切れないし、Androidにも開放的とは言えない制約があるが。

    6.あなたの国は、どのくらい友人作りが上手か?
    M&Aを繰り返し巨大企業は廃れる。多岐に提携して互恵的なネットワークを築くことを目指せ。
    北朝鮮の核開発を止めるために日本単独の経済制裁を行っても効果は薄い。如何に中国を動かすかが成功の鍵を握る。

    7.あなたの国の運営者は、理解しているか?
    ふさわしい運営者を選ばなくてはならない。いなければ外部からでも雇えばよい。
    日本の首相は日本人がやる必要はあると思うが、ブレア首相や胡錦濤だったらこの酷い政治もマシになるのではないか、と思うことがある。

    8.あなたの国のブランドは、どのくらいよいか?
    トニー・ブレアは、「祖国の過去を誇りに思うが、その中に生きようとは思わない」と言った。
    マレーシアはハイテク工業団地を作り、外資を誘致し、マレーシアと言えば近代化を遂げた情報都市として認識されるようにした。


    以上8つ全ての問いに適切な解を持っていれば、少なくとも今より良くなると思う。
    他国と比べて、日本の空は青く、人は穏やかで勤勉。
    飯もどこより美味いし、治安も世界で一番良い。
    日本は本当に素晴らしい国だと思うが、唯一好きになれないのは、日本の古い体質だ。
    古古い者が権力に居座り続けられてしまう仕組みがよくない。
    本当に優秀なリーダーと、ダイエットしてスマートになった公組織たれば、言い淀むことなく世界で一番の国だと言えるのになぁ。

  • (「BOOK」データベースより)
    冷戦後、世界のルールは激変した。技術、情報、金融の壁が消え、あらゆるものが国境を越えて広がっていき、地球規模で結びつく「グローバル化」の時代がやってきたのだ。無名の青年が一夜にして富を築く一方で、国も業種も超えた合併が巨大企業を生み出し、世界の株価は短時日のうちにとんでもない乱高下を見せる。混沌にも似たこの新しい世界のルールとは何か。何が新たな勝者を生み、何が日本の景気を抑えつけているのか。著者はこの問いに二つの鍵で答える。レクサス(トヨタの高級車)とオリーブの木(土地・文化・民族の象徴)である。国籍を超えた最新技術の集結と、古来の伝統的価値への固執。この二つの要素を軸に、現在の世界を鮮やかに読み解いたのが本書である。

  • 上下巻を読んで、重要そうなところをとりとめもなく抜き書き。

    世界を見るための6つの軸。
    政治、文化、国家安全保障、金融市場、技術、環境。

    グローバル化によって世界は均一化し、皆が同じような豊かさを求めるようになる。
    レクサスは共通する豊かさの象徴だ。
    一方で、そのような均一化によって自己のアイデンティティが危機にさらされるため、それを守ろうと強く意識するようになる。
    オリーブの木は個人や共同体のアイデンティティの象徴だ。
    グローバル化によって世界は、レクサスとオリーブの木のバランスをとることを強いられている。

    グローバル化は平和をもたらす。
    国が戦争をすると、投資家たちは国債や株を売り、企業は工場を移転する。
    世界は市場で繋がっている。
    マクドナルドのある二国は戦争しない(下巻)。
    ただ、内戦は起こる。
    レクサスを求める動きとオリーブの木を求める動きがぶつかるから。

    ある国がグローバル化に対応できるかを、どこから判断するか。
    ・自由市場というハードウェアがあるか。
    ・その市場を動かすOSはアップデートされているか。
    ・市場の中で自国企業をコントロールするソフトウェアは柔軟に動いているか。

    日本には、グローバル化に必要な透明性と柔軟性が欠けている。

    グローバル化と上手く付き合うこと、つまり持続可能にすることが大切。
    そのためには、
    ・全ての人に働くための教育と研修を
    ・全ての人に資本へのアクセスを
    ・全ての人に意見表明の場を

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著者プロフィール

ニューヨーク・タイムズ コラムニスト
1953年ミネソタ州生まれ。ブランダイス大学を首席で卒業後、オックスフォード大学で修士号を取得(現代中東研究)。UPI通信に入社し、79年から81年までベイルート特派員。その後ニューヨーク・タイムズ社に移り、ベイルートとエルサレムの両支局長を歴任。その間、ピュリツァー賞を2度受賞。89年に帰国。95年からニューヨーク・タイムズ紙の外交問題コラムニスト。02年にテロ問題に関する執筆活動により3度目のピュリツァー賞。

「2021年 『遅刻してくれて、ありがとう(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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