文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫 ダ 1-1)

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218780

作品紹介・あらすじ

アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • ヨーロッパによる南北アメリカがピサロやコルテスによる武器のみではなく、持ち込まれた天然痘によってももたらされたことは知っている人も多いはず、本書はそこから出発しながら、ではなぜ大群相手に圧勝できる地域とそうでない地域があるのかと問を転換し、人口密度、気温などから分析していく。基本的に人口が周密でなければ定住農耕に向かないし、集団感染が起きず、したがって集団抵抗を持たない。また、南北と東西の伝播のスピードに差がある点、栽培に向く野生種の植物、家畜化に向く動物の話など、どれも面白い。

  • ジャレド本人からの序文およびプロローグが、とにかく他文化への配慮・リスペクトに溢れている。彼の誤解がないように常に気遣う丁寧な説明は「あぁこの本は安心して読めるな」と思わせてくれる。

    「ヤリ」と言う名のニューギニア人との会話をトランジションとして本文が始まり、読み進めていくと、「なぜヨーロッパ大陸の人々が他の大陸を征服できたのか」がわかる。それこそが「銃・病原菌・鉄」であると。しかしそれは、「ではなぜ銃・病原菌・鉄の戦略を先に獲得したのがヨーロッパ人だったのか」という根本的な問いに答えられていない。ジャレドはそこも忘れず、全ての疑問に順を追って紐解いてくれる。

    人間が一般的に家畜を可愛がる傾向にあるという話があり、それが第11章にて、「動物由来の病原菌」の話に繋がるのがまさにカタルシス。

    本書は初版から年数が経っており、正直「病原菌」が新大陸に持ち込まれたのが重要だったという話は既に耳にしたことがあるし、高校世界史でも言及されていた。しかし、仮説や結論を導くまでのプロセスや、ジャレドの持ってくる実体験が非常に効果的で驚くほど新鮮な気持ちで読み進められる。

    これほどまでに紀元前(先史)の時代に思いを馳せ、考えさせられる機会はなかなかない。

  • ジャレド・ダイヤモンド先生による
    教養が高まる1冊。

  • 下巻に記載

  • 現代の世界で欧米が権力を持つ理由を考察

    地中海の東にある肥沃三日月地帯に農耕向きの作物や家畜化しやすい生物が多く存在
    農耕が早く始まる
    ユーラシア大陸は横長で農作物が伝播しやすい
    アメリカ大陸やアフリカ大陸は南北に長く気候条件等により伝播しにくい
    人口増加
    帝国、伝染病の増加、工業等の文明発達が起きる
    病原菌、武器等によりアメリカ大陸先住民より有利となり占領できた

  • 人類の文化の進捗が地域によってなぜ異なるのかを食糧生産、病原菌等の観点から分析した書籍。個人的には東西に長い地形(例:ユーラシア大陸)が南北に長い地形(例:アメリカ大陸、アフリカ大陸)よりも文化や食事等の伝播が早いことが特に衝撃だった。

  • なぜメソポタミアから始まったヨーロッパ文明が世界を支配したのか。アメリカ大陸やアフリカ大陸から世界を支配する文明が育たなかったのか。
    直接的な要因はタイトルの通り銃・病原菌・鉄があったから。
    ではなぜそれらを持つ人と持たざる人ができたかは、要は運。農業に適した植物が近くにあり、農業に適した土地と気候があったり、家畜にできる動物がいたり、大陸が東西に広がっていたり。
    実証や論拠ではなく推論に過ぎないと言われる部分もあるかも知れないが、私にとって説得力は十分。

    要は、西洋人よ、良い気になるな、お前たちの能力が優れているのではない、と言っている本。
    ただし、西洋人が優れてるわけではないが、西洋人が今世界を支配しているのは必然だとも言っているとも読める。

    今後世界はどうなるのか、世界はどうすべきかの筆者の主張は下巻にあるのかもしれないので楽しみ。

  • 人類史
    非ヨーロッパ圏からの考察

  • 興味を引く内容だったのでパケ買いしましたが、ちょっと長すぎて疲れてしまいました…日本語訳が回りくどいのかな。
    上巻は思っていた以上にずっと食料生産の歴史です。

  • 歴史からどのように文明が変化してきたかを紐解く。内容は歴史的背景を細かく見ていくため少々骨が折れる。上巻は大陸ごとの衣食住の変遷が大半だった。

  • どうにも断定的に過ぎる気もするけれど、先史からの歴史を俯瞰できる意味で十分に興味深い。上巻だけ読んだ時点では、中だるみというか、銃と鉄についてちょっと中抜けという観が否めない気もするが。

  • 人類史を知る上で外せない本。
    当たり前に思ってた地域差。欧米の発展や植民地化の挙動に対して、なぜ?を突きつける。
    結論、環境が違うから、の一言に尽きるが、その詳細を丁寧に追っていってくれる。
    具体的には、人類の出発点と移住の流れ、食料生産の始まり、栽培化家畜化とそうでない種…。
    そして3部の最初で終わるが、タイトルにもある病原菌についての言及。
    すぐに暮らしの役に立つものではないが、知る知らないでは生物やいのちに対する姿勢が変わるのは間違いない。

  • 2023.11.01
    秋になり、読書欲が戻った。

    東西に長い大陸と南北に長い大陸。そんな単純な違いがもたらす影響の大きさに驚愕する。
    文化の伝播のしやすさには、気候の同一性がクリティカルであり、東西に長いユーラシアがたまたまそれに適した形であったのだ。

    環境が決する要因の大きさを実感する。そんなことで先進国と後進国が決まってしまったとは。

    家畜できる種の少なさと、家畜を持つことで手に入れた病原菌への耐性。ユーラシアの人類が持った病原菌が新世界の人類を削減してしまうということなんて、誰が想像できたろう。

    人類の歴史とは途方もない。
    視野が大きく広がった。

  • ウイルスがどのように進化するか、について印象に残った。今までその目線からウイルスをみたことがなかったため、ウイルスがより感染を広げられるような症状を示すように進化する、というところが興味深かった。家畜との関わりから新たな感染症が生まれるため、家畜が少ないアメリカでは感染症が少なかった。

  • 記録用。

  • おもしろいが、やはり長い。作物の話などはそんなに細かくなくていいかな……などと思う。
    丁寧に書こうとしていることはもちろん好感を持てるが。
    あと、人類が農耕を始めた流れを詳細に書いているが、あくまでも地理的条件が一番と言っていいくらい重要であり、民族そのものやそこに住む人の性質は関係ないのだ、というスタンスがナイス。先に農耕を始めた人たちは、優れているから先に始められたのではない。単に、周囲にそういう条件が揃っていたからなのだ。

    そういう話がメインなので、人類のアイデアとか人間の工夫みたいなのが少ないのが、やや飽きるところ。私の好みとしては、もう少し、人が生み出した知恵みたいな話を読みたい。
    そういう意味では、目次を見る限り、下巻の方がおもしろそう。

  • 2022I260 361.5/Di1
    配架書架:C2

  • p 71ネアンデルタール人とクロマニョン人とが混血したという痕跡は、まったくといっていいほど残されていない。

    これについては、現在、混血していたことが分かっています。執筆された2000年当初からは、アップグレートされた情報もあるかもしれない、ということを念頭において読み進めました。
    疫病がもたらす恐ろしさについては、奇しくもコロナを経験した私たちにとっては周知の事実ですが、そういったウィルス側からみた生存戦略と段階(家畜から人間に稀にうつるがヒトヒト感染はしない段階から、直接人間を媒介にして感染するようになり、そのうちに人間だけがかかり大流行する)はとても面白かった。

    ヨーロッパ人が、家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を、とんでもない贈り物として、進出地域の先住民に渡したからだったのである。

    著者の表現もウィットに富み、難解な専門用語などもないので、するすると読めます。

  • タイトルの重たさで敬遠していたが、とても面白く読めた一冊だった。

    現在の地域の格差はどこから生まれたのか?
    この問題を人類の誕生から追いかける壮大な一冊。

    下巻も引き続き期待。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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