ある子ども

  • 新評論
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794810892
#SF

作品紹介・あらすじ

『ギヴァー』ファンのみなさま、長らくお待たせいたしました。シリーズ四部作の完結編(原題:SON)をお届けいたします。
 物語は、ひとりの男児の誕生からはじまります。彼を産んだのは、14歳の少女クレア。12歳で〈出産母〉を任命された彼女の、これが初産でした。〈コミュニティ〉では、すべての新生児は厳重な管理下におかれ、やがて「適正な養親」の手にわたります。母子は産後すぐにひきはなされ、二度と会うことはできません。クレアも掟にしたがい、わが子をあきらめようとします。しかし、どうしてもあきらめきれません。とかくするうち、男児は「社会不適合」の烙印をおされ、処刑が確定します。
 この赤ん坊がだれか、みなさますでにおわかりでしょう。そう、ジョナスの運命を変えたゲイブです。つまり本作は、ゲイブとその母の物語です。
 もちろん、作者は寓話の達人ですから、それだけで話はおわりません。前作『メッセンジャー』の世界に暗い影をおとした〈トレード・マーケット〉の謎が、クレアたち母子をまきこみつつ、善と悪の最終決戦へと発展していきます。そこにジョナス、そして第二作の主人公キラ、前作で非業の死をとげたマティもからんできます。
 そして、これもいつもどおり、スリリングな展開のあわいにいくつもの問いが埋めこまれています。まつろわぬ自然の象徴としての赤ん坊。代理出産やデザイナーベイビーをめぐる生命倫理の問題。当然視されている「取引」や「交換」という行為の陥穽。「力」「旅」「記憶」の意味……シリーズ全作にいえることですが、今回も思索と対話をうながす教養小説としての醍醐味に溢れています。
 はたしてクレアとゲイブは、母子として再会することができるのか。それを阻もうとする邪悪な「力」に、ジョナスたちはどのように立ちむかうのか。現代の『オデュッセイア』ともいうべき壮大な物語の環が、おどろくべき仕方で、しずかに閉じてゆく瞬間をお見逃しなく。(しまづ・やよい)

感想・レビュー・書評

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  • 新評論版「ギヴァー 記憶を注ぐ者」https://booklog.jp/item/1/4794808267のシリーズ、第4巻、完結です。
    ジョナスは<指導者>の地位を他者に譲り、キラと結婚、学者・司書として暮らしています。
    コミュニティから<村>まで、若い頃の彼が命がけで守り連れてきたゲイブが今回の主人公です。
    そして、ゲイブという<産物>を作った<出産母>のクレアも主人公と言えます。
    クレアの母としての力強さ、ゲイブの子供ながらの旺盛さが光る一冊でした。

  • 一気に読み終えた。
    読み終わった後に、静かな満足感が残る作品。
    先の読めない展開にドキドキしながら、そして1部からの物語が見事につながっていく様子が素晴らしいなと感じた。
    個人的には、「カッシアの物語」より終わり方が爽やかで納得できるかたち。
    超管理社会と、原始的な社会の対比、子育てと愛情について、人間の本能について、人の身体が発する声や匂いや直感について、そして、人の心が生み出す「悪」というものについて、自分の心との闘い、一人ひとりが違う能力を持って生まれること、お互いへの誤解と和解、そして相手の意思を尊重することの意味、人を信じること、様々なテーマそして、人が個として集団として生きるヒントが織り込まれていた。
    第1作の「ギヴァー」が今とても読み返したくなっている。

  • やはりお前か。
    クレアさん頑張りすぎですね。
    4部作完結編のこの巻で、やっとつながった感がありますね。
    1冊ずつで完結はしてるんだけど、やっぱりここまで読まないと不完全燃焼が過ぎる。
    ここまで読んでも、あの人は結局どうしてるの?ってのはまだまだありますしね。

  • SL 2022.4.21-2022.4.23
    ギヴァー4部作完結篇。
    前作までにわからなかったゲイブの出自が明らかになり、クレアの新たな冒険が始まり、その先でみんなが結びつく。
    そして、ラスト。素直にこのラストに感動したい。

    人間が生きていくうえで遭遇するあらゆるテーマが含まれているほどの、奥の深い作品だった。

  • 登録し忘れ。

    「ギヴァー」完結編。

    すべてが腑に落ちる、感動作でした。

  • リアルタイムで読んだ訳じゃないけど、いよいよ完結編。前3作は、それなりの謎を残したままの幕切れになっていただけに、本作でどのように回収されるのかが見ものだった。結論としては、それは見事なものだったということになる。細かい人物相関までは覚えていないところもあったけど、読みながら大方の流れは把握できるようになっている、そのストーリーテリングもお見事。敢えて気になる点を挙げるとしたら、YA向けだとそれほど強烈な悪を配す訳にいかないのかもしれないけど、ラスボスのインパクトがそれほど強くないところかな。ただそれはあくまで些末なこと。総じて素晴らしいシリーズでした。

  • あっという間に四部作を読み終えてしまった。
    結論からいうと、色々な謎が完全に回収できたとは言えないが、そもそもそういうつもりで書かれた作品ではないことは読んでいて伝わってきたので、これで良いと思う。
    物語としても、面白かった。

    しかし、大人だからそう思うのかもしれないが、ゲイブが自分の力で悪と対峙する第3章より、クレアとアイナーが静かな愛を育む第2章が心に残る。息子への思いを抱いたまま、クレアがアイナーと助けあって生きていくという結末だったらどうだったろう。(それはクレア自身もそう考えたこともあったのだが)
    もしクレアが息子と再会する人生を選ばず、ゲイブが母の愛を知らない空虚さを抱えたまま大人になったら。『メッセンジャー』でそうなったように、彼も欲に囚われて誤った道に進む可能性は大いにある。それが人間の歴史ってものだから、何ら不自然ではないのだが、この結末は作者の若い人へのメッセージだと思う。あなた達の力で世界は変えられる。殺すことでは、本当の平和は来ない。
    最後に希望があった。

    欲を言えば、ギヴァーのコミュニティがジョナスなき後どうなったかはしりたかったなあ。

  • 「ギバー」シリーズの完結編。ずっと待ってた!

    クレアがコミュニティを離れて辿り着いた場所よりも、あのコミュニティの方が我々の世界と地続きに思える。だからこそ、クレアとアイナーと羊と自然と…っていう描写がとても美しい。映像で見たい画だなあ。

    同じことが、ジョナスとその家族の描写にも言える。よかったねえジョナス。でも、ジョナスとキラがどうしてどうなってこうなったのか知りたいですね…

    ジョナスには親に「愛された」記憶がない。1作目で「愛」を知った後に、親が自分を愛していないことを突き付けられて、でも仕方ないことだとギバーに言われている。そのジョナスが、ゲイブが親の愛を知らないことを気に病んでいるのが切ない。ジョナスはその「愛」をギバーから受け取ったのだろうけど。

    でも、ジョナスの父がゲイブを「解放」つまり殺したくなかったことが分かった。それは「感情」じゃないのかなあ?ジョナスの父はジョナスを失って悲しんだ、かもしれない。そうであってほしいし、そうかもしれない、という期待が持てる内容で少し救われる。

    ところで最後の「悪」との対決はさくっと済むわりに、クレアの訓練パートがやたらと長い!もはやクレア、霊長類最強では…戻ってきたゲイブはどう思うのか笑

    「悪」との下りがあっさりなのは、これが終わりじゃない、完全にはなくならないものだからなのかな、と。そして誰かひとりが対峙するものでもない。マティは死んだけれど、ゲイブは帰ってこれた。今はそれがゴールだけど、次はみんなの力が必要なのでは〜

  • 「ギヴァー」から始まる4部作。長く続く物語の最後に今までの登場人物たちが鮮やかに結びつく。そして、最後に訪れる永遠の勝利。ドキドキしながらも一気に読み終えた。そして、ホッと優しい気持ちになれた。

    初めて「ギヴァー」を読んでからずいぶん経っているので覚えているかしら、と思いながら読み始めたが、読みながら思い出してきた。良かったな、このシリーズ。

  •  『ギヴァー』4部作を締めくくる4作目。これまでに登場したジョナスもキラも登場。でも、かなり前に読んだから、いまいちつながりがよく分からず…。

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著者プロフィール

1937年ハワイ生まれの児童文学作家。アメリカ陸軍の歯科医だった父について各地を転々とし、11才から13才までを日本で過ごした。現在はメイン州在住。1990年に『ふたりの星(Number the Stars)』(童話館出版)、1994年に『ギヴァー 記憶を注ぐ者(The Giver)』(新評論)で、ニューベリー賞を二度受賞する。「ギヴァー」は大人気シリーズとなり、世界累計1200万部を超える。他にも『モリーのアルバム (A Summer to Die)』『Windeby Puzzle』など多数。

「2023年 『水平線のかなたに 真珠湾とヒロシマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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