文字を作る仕事

著者 :
  • 晶文社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794969286

感想・レビュー・書評

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  • 図書館の新刊コーナーで見かけて。フォント大好きなので借りて読んでみた。

    書体ベンダー「字游工房」の鳥海修さんの生い立ちや、自身の書体作りに関わる経験や影響を受けた人々について著した本。けっこう書体マニア向け。

    私はフォントというと、個性が光る美しいものに惹かれるんだけど、著者は「空気のような、水のような」書体を目指すことが根本にあるみたい。デジタルなフォントの黎明期から活躍している著者だからこそなのかな。

    時代ものの小説を組むための游明朝。游明朝や游ゴシックはWindows10に搭載されてこれから広く目にするようになっていくフォント。新しさよりどことなく紙の時代っぽさを感じるのはそのためかも。

    古い文献に触れたり、明朝の元となる筆の運びを考えたりという姿勢が一番印象的だった。私も書を始めたくなった。

    著者意外のデザイナーや書家の名前も多い。祖父江慎さんはいろんなところで面白い話を聞くけど、本書でも面白い。今回知ったところで一番興味を持ったのは書家の石川九楊さん。どんな文字を書くのか調べてみようと思う。

    全体的な文章は、時系列が行ったり来たりして、前の章で触れたが〜といった言い回しがあったりで、少々まどろっこしかった。

  • 鳥海修「文字を作る仕事」を読む。

    「七〇歳になるまで(納得できる)明朝体は書けない」p.234

    ヒラギノシリーズを開発した「書体設計士」の半生を描いた本書。工業高校から浪人をして多摩美に入学。在学中に既に「水のような、空気のような本文書体を作りたい」と志向していたというから、これはもう筋金入りだ。

    また平野甲賀、鈴木勉、祖父江慎、石川九楊といった当代をリードするタイプデザイナーの交感が克明に記されていておもしろい。

    杉浦康平が平野甲賀に向かって、講演の壇上から「まだあんなくだらないことをしているのか」と罵ったというエピソードには驚いた。嗜好が正反対とはいえ、杉浦さんは完璧主義ゆえに、かなり排他的だったのかもしれない。

    どこを見ても金太郎飴のような書体ばかりが目に付く現代から見れば、歯に衣着せぬ物言いで各々が競い合ったあの時代は、社会全体が多様でありつつ、そして推進力も持っていたのだろう。

    そして「よい書体」を作るには、旨い酒と肴を常に探し求めなければならない……というのは冗談で、たった一本の線を磨く不断の努力が必要だ。いや、であれば逆に息抜きとしての「旨いもの」も必須なのかもしれないな、と思いながら最後までさらりと読んだ。ああ、おいしいお蕎麦とおでんが食べたい。

    あの小塚シリーズを作った小塚雅彦さんは「日本人にとって文字は水であり、米である」と言ったらしい。「書体設計士」はけっして気取らないし、目立とうとしない。毎日コツコツと、迂遠に続く地道な作業をひたすらこなしていく。

    アーティストやアートディレクターとは友達になれそうにないが、タイポグラファーとは友達になれるかな、と思った。

  • フォントを作る人のこだわりや考え方がわかるのはとても良い どんどん新しいフォントが出てくるのもとても楽しい
    新聞によって使っているフォントが違うとか、気にしたこともなかった 気づかないこだわりに囲まれている

  • 「文字を作る仕事」とのタイトルだが、肝心の仕事内容や文字を作る過程などについてはほぼ触れられておらず、どちらかと言うと文字を設計するキャリアの土壌や心構えが中心。端的にいうと日経の「私の履歴書」のアレ。
    開発された自社の書体、明朝体やゴシック体の種類について種々様々な例をあげられているものの肝心の書体はほとんど掲載されておらず、他にもキャリアを積む上で出会った方とフォントに纏わるエピソードにおいてもその肝心の書体がどういったものか掲載されておらず、といった会話や状況説明の応州が続く。またそれら諸先輩や同輩、取引先の方々とのエピソードもエッセイ(極めて私)的で回顧録に終始している。
    上に触れた通り、私の履歴書的展開を苦痛とする人間には向かない。と思う。

  • (図書館員のつぶやき)
    ちかっとだけ、日ごろ目にしと文字ば浮かべてもろて良かろうか。本でもよか、テレビ、町の看板、案内、なんでんよかよ。今でない、こがんどっさいの書体があっとは当たり前ばってん、この本ば見たら、ほぅ!と思うたさ。面白とおもうばい、よかぎん読んでんしゃい、この道一筋のとりのうみさんの本たい。そうそう、外さんご飯食べに行こかーてなって、なんにすぅ?て悩むぎん、外れのなかまあまあの店の看板ば目指すさ、あいも文字書体とぴっしゃってくっけんさね。(道ばはずれた!)

    訳:少しだけ、日ごろ目にしている文字を浮かべてみてください。本でも良いし、テレビ、町の看板、案内、何でも良いですよ。今なら、こんなにたくさんの書体があるのは当たり前ですが、この本を見たら、なるほど!と思いました。面白いと思います、良かったら読んでみてください、この道一筋の鳥海さんの本です。そうそう、外にご飯でも食べに行きましょうとなり、何にする?と悩んだら、いい感じのお店の看板を目指します、あれも文字書体とぴったりくるから不思議ですね。(道がはずれました!)

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784794969286

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著者プロフィール

鳥海 修(とりのうみ おさむ)

書体設計士。1955年山形県生まれ。多摩美術大学卒業。79年写研入社。89年字游工房の設立に参加する。ヒラギノシリーズ、こぶりなゴシック、游書体ライブラリーの游明朝体・游ゴシック体など、ベーシックな書体を中心に100以上の書体開発に携わる。2002年佐藤敬之輔賞、05年グッドデザイン賞、08年東京TDCタイプデザイン賞を受賞。12年から「文字塾」を主宰し、現在は「松本文字塾」(長野県松本市)で明朝体の仮名の作り方を指導している。22年には個展「もじのうみ 水のような、空気のような活字」(京都dddギャラリー)を開催した。著書に『文字を作る仕事』(晶文社、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本――職人が手でつくる谷川俊太郎詩集』(河出書房新社、共著)がある。

「2024年 『明朝体の教室 日本で150年の歴史を持つ明朝体は どのようにデザインされているのか(3,200円+税、Book&Design)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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