おやすみラフマニノフ

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796679015

作品紹介・あらすじ

秋の演奏会を控え、第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに、プロへの切符をつかむために練習に励んでいた。しかし完全密室で保管されていた、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれる。脅迫状も届き、晶は心身ともに追い詰められていく。さらに彼らの身に不可解な事件が次々と起こり…。メンバーたちは、果たして無事に演奏会を迎えることができるのか。ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」がコンサート・ホールに響くとき、驚愕の真実が明かされる。

感想・レビュー・書評

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  • 岬洋介シリーズ第2弾。ヴァイオリニストを目指す音大生の城戸晶が主人公。所属する音大の学長柘植彰良は、稀代のラフマニノフ弾きと呼ばれる世界的に有名なピアニストでもある。音大の定期音楽会での奏者、しかもコンマスに選ばれた城戸晶は日々レッスンとバイトに勤しんでいたが、そんな中時価2億円のストラディバリウスが保管庫から消え、また学長専用のピアノも悪意を何者かに水浸しにされてしまい…。そんな状況の中、非常勤講師でもある岬洋介が、バラバラだったオーケストラとその要因となった事件のピースを明らかにしつつ真相を解明していく…。
    前作から感じていましたが、音楽を文章にし臨場感までも感じさせることって中山七里さんだからこそですね。特に避難所と定期音楽会での演奏の描き方が素晴らしかったです!前作を読んでいるからわかる描写もあるのは嬉しいし、ラストは「音楽家の宿命」みたいなものを感じました。岬洋介さん、こうして読むごとにいいキャラしてるなぁ~って思います。

  • 音楽良く分かりませんが、演奏表現は疾走感あります。
    いろんな意味で今回も岬先生が凄すぎます!
    密室からストラディバリのチェロが消えた⁉︎から始まり...事件的には警察が介入したらスグ解決してしまいそうと言うか、ちと無理があるような気もしますがメインはそこぢゃないみたい(๑❛ᴗ❛๑)

    内容に触れようと思うと大分長くなりそうなので...
    面白いお話ですよぉ


  • ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番というと、最初に思い浮かんだのは、浅田真央さん。
    ロシア人 タチアナ・タラソワ氏の指導の下、見事な演技で私たちを感動させてくれた。
    壮大にして荘厳、そして何となく悲壮感の漂う曲だなぁという印象を受けた。

    密室の音大 楽器保管室で、時価二億円のチェロが盗まれた。
    その後も不可解な事件が次々に起こる。
    音大の臨時講師、岬洋介が、鋭い洞察力で 事件の謎解き を進めながらも
    関わった人たちを救いへと導く。
    このシリーズでは、岬洋介の魅力が光る。

    読んでいる間、ラフマニノフだけでなく、ベートーベン、シューマン、
    チャイコフスキー、パガニーニ が ページの中から流れ出てくる。

    最後の一行を読んだ瞬間、『おやすみラフマニノフ』というタイトルが
    音と優しく重なった。

  • 岬洋介シリーズ第二弾。
    ラフマニノフは大好きな作曲家の1人。今回も音楽を聴きながら一気読みでした。私自身も小さい頃から音楽をやってきてピアノもヴァイオリンも習っていたので演奏の描写は、目に浮かび毎回引き込まれてしまいます。
    演奏の描写のところでは、毎回涙が出てしまいます。避難所での演奏、最後の定期演奏会でE線が切れてしまい額から血を流しながら弾き切るところは、五嶋みどりさんのタングルウッドの奇跡を思い出しました。

    犯人は、きっとあの子だろうと見当はつきました。そして、晶は庇っているんだと。でも、最後の最後にそうきたかー!でした。

  • 演奏シーンの描写がすごく良いと思う。実際に音楽が聞こえてきそうなほどだ。疾走感がすごい。まるで自分が楽器を奏でているかのような感覚に陥る。こんなふうに弾けたら気持ちいいだろうな。

  • 岬洋介シリーズ第2弾

    音大生の城戸晶は、実家からの仕送りも途絶え、学費を滞納していて、学校からは、請求書が届いていた。
    それでも、女手一つで育ててくれた、今は亡き母親と「絶対に、プロのヴァイオリン弾きになる」と約束を忘れずに、今日も、練習に励んでいる。

    そんな折、「今年の定期演奏会の出場者は、オーディションで決める」と、教授から告げられる。
    この演奏会は、才能有る若き演奏家達の登竜門であり、コンマスに選ばれたら、ストラドを使用でき、更には、後期の学費も、免除される。しかも、《稀代のラフマニノフ弾き》と呼ばれる、尊敬してやまない学長・柘植彰良と、共演できる。
    晶にとっては、願っても無い事。

    臨時講師の岬洋介に励まされ、練習に練習を重ね、運にも味方され、どうにか、コンマスの座を射止める。

    が、ある日、柘植彰良の孫娘 初音が使用する、時価2億円のチェロ・ストラドが、完全密室の保管庫から盗まれる。

    「犯人は大学関係者?」
    「動機は、金銭目的か、定期演奏会の妨害か?」
    オケ全体に漂う形容しがたい不信感。

    大学側、特に学長は、警察沙汰にはしたくない。自分たちで解決しょうとする。
    学長は、芸術院入りが、ほぼ確定しているらしく、この時期、問題を起こすと、反故にされかねない。と言うのが、理由らしい。

    疑心暗鬼と気味悪さと不快感が続く中、次は、学長専用の、スタンウェイ製、コンサートグランドピアノ《通称、柘植モデル》が水浸しにされる。

    犯人がわからない毎日、一向にまとまらないオケ。纏め役である、コンマスの晶は、ますます自信を無くしていく。

    更に、大学公式サイトに、柘植学長の殺人予告が。

    脅迫者に怯えるオケメンバー。

    学校は、学長の命を守るため、演奏会を中止しょうとするが、
    指揮者を岬洋介に
    ピアノを下諏訪美鈴に
    交代して、演奏会を行う事になった。

    警察に届けようとしない大学側に、業を煮やしたオケメンバーが、自分たちが、届けようとした時、メンバーの一人が
    「俺、見たんだ」と呟いた。

    お決まりの、どんでん返し。
    と思いきや、再びのどんでん返し。
    途中で、先は読めてきたと思ったが、晶の取った行動の理由が、予想外であった。

    大雨洪水警報と、避難勧告が出された時、避難所である中学校で、避難している人たちの、剣呑な空気を緩和させるためにに演奏した《ヴァイオリン協奏曲》

    定期演奏会の《ピアノ協奏曲、第二番》

    柘植彰良が、新しいピアノで弾く《前奏曲嬰ハ短調》

    其々の描写が、今回も秀逸で、圧巻だった。
    恐るべし 中山七里!

    今回も、岬洋介の魅力が、惜しげもなく、随所に出ていた。
    家柄も良く、頭も良く、ハンサムで、冷静沈着、でしゃばらず、性格も文句なし。
    ピアノを弾かせたら、聴いている人を一瞬で虜にしてしまうテクニック。
    一度、岬洋介のピアノ演奏を生で聴きたいものだ。

  • シリーズ2作目。
    音楽表現が、さらっと読めてBGM流したくなります。
    探偵ぽくないですが、最後のにさらっと推理されるところが、面白い。

  • “練習の基本は反復と考察だ。片方だけでも不十分なのに両方怠っていれば上達はおろか、退化していくのは自明の理だ。”(p35)

    今回も面白かった۹꒰*´꒳`*꒱۶
    主人公は前作と違う人だったけど、登場人物がリンクしていて同じ世界線であることがうかがえた。

  • ドビュッシーの続編だけど、その後の話ではなく
    オーバーラップしてるところがなんか新鮮で楽しかったです。
    あの美鈴まででてきて、なんか実はいい子だったりして。

    岬先生は相変らずすごすぎ。
    彼のシリーズなのに自分のことは多くを語らない脇役に徹してて
    どんどん気になってきます。(笑)

    音大が舞台で、前作がピアノだったのに比べると、
    オケがメインなのでより多彩な音が聞こえてくる感じでした。
    特殊な世界なので、ホントにこんななの?ってびっくりすることも。
    晶もだめなのかと思いきやコンマスなれるくらいの才能あるしね。
    音楽描写はわからないなりにも迫力と疾走感があって
    流れるような文章にこっちが引きこまれます。

    ラストは少々物足りないなーと。
    最後「おやすみ、ラフマニノフ」ってしたかったのは、よーく分かるんだけど。
    初音のことが置き去りだし、なんかもう少し欲しかったです。

    ミステリー的には、犯人や血縁関係のところはわりと早くに想像ついたけど
    やっぱりミステリーとしてより、音楽にかける青春小説として読んじゃうんだよね。
    音大生のシビアすぎる夢と現実、犠牲を厭わない熱意とひたむきな努力と、
    底知れぬ不安と栄光と引き換えの孤独。
    そして音楽の血と才能を持つ苦悩と怖さ。
    すさまじく痛々しいけど、それだけ人を魅了できる音楽ってすごいんだな。

    • 円軌道の外さん

      またまたお邪魔します(笑)

      デビュー作にえらく感動して
      映画も観に行ったんやけど、
      この小説はまだ読めてないんで
      近々読ん...

      またまたお邪魔します(笑)

      デビュー作にえらく感動して
      映画も観に行ったんやけど、
      この小説はまだ読めてないんで
      近々読んでみたいと思います(^O^)

      自分も学生時代に音楽の魅力にとりつかれて
      いまだに同じメンバーでバンドやってるんで
      読んでてすごく共感できるし、

      音楽という表現を
      技術論ではなく
      誰にでも分かる魅力的な言葉で表せるところが
      この作者はスゴいって思ってます♪


      2013/04/08
    • tiaraさん
      音楽わかる人が読むときっともっとおもしろいでしょうね~。
      羨ましいです。
      こちらはみんなで奏でるオケなので、バンドやってらっしゃるならいろい...
      音楽わかる人が読むときっともっとおもしろいでしょうね~。
      羨ましいです。
      こちらはみんなで奏でるオケなので、バンドやってらっしゃるならいろいろ共感できそう。
      レビュー楽しみにしてます!

      ドビュッシーの映画も、美少女橋本愛が気になってて、観てみたいです。
      2013/04/08
  • 相変わらず、音楽への熱情が
    奔流となって押し寄せるような演奏描写♪
    音符が飛び交う表紙にも、譜面をイメージした扉デザインにも
    各章についた楽想用語にも、音楽への愛が溢れている。

    デビュー作『さよならドビュッシー』は、大怪我を負いながら
    ピアニストを目指す少女がヒロインだったこともあって
    かなり閉ざされた世界の中で物語が展開していたけれど、
    今回は音大の選抜学生オーケストラが舞台だったので
    主人公のコンマス 晶を始め、ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、
    オーボエ、トランペットなど、さまざまな楽器奏者が登場して
    担当楽器の特性と微妙にリンクした性格設定などが楽しい。

    探偵役の岬先生も相変わらずのかっこよさ♪で、
    ラフマニノフのピアノ協奏曲のシーンでは、
    「え~、指揮だけ?岬先生なら余裕で弾き振りできるのに~!」
    ともどかしくなってしまったりして。

    音大生の中に歴然と存在する環境や才能による格差とか
    国公立大学の4年分より多い、1年分の学費とか
    物心つくかつかないかの頃から何万時間ものレッスンを積んでも
    音大に進んだ中の数%しか演奏家として自立できない
    音大生の就活の厳しい実態とか
    音楽に関わる人には涙なしに読めないリアルさも健在です。

    前作と同じく、伏線の張り方がとても几帳面なので
    犯人も、トリックも、晶の素性もかなり早い段階でわかってしまうけれど、
    台風から逃れた避難所で晶と岬先生が奏でた
    チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のように
    全身全霊で奏でた音楽が、誰かの胸に届いたか、
    それだけが音楽家の証である、という主張が素直に胸に響きます。

    冒頭のチャリティーコンサートでの岬先生の演奏に
    『さよならドビュッシー』のヒロインが聴衆の一人として耳を傾けていたり
    彼女をコンクールで罵倒しまくった毒舌女王(?!)の
    下諏訪美鈴のアルマジロ的かわいらしさが垣間見えたりして
    前作を読んだ人は、2倍楽しめる作品になっています。

    • まろんさん
      円軌道の外さん、そうなんです!

      音楽の描写が、演奏のテクニックに終始することなく
      演奏者がどのフレーズを美しいと思って弾いているのか
      どん...
      円軌道の外さん、そうなんです!

      音楽の描写が、演奏のテクニックに終始することなく
      演奏者がどのフレーズを美しいと思って弾いているのか
      どんなイメージや想いを伝えようと思っているのか
      そういう部分に重きを置いて描かれているのが
      素敵ですよね!
      『さよならドビュッシー』では憎らしいばかりだった毒舌女王、
      この本では、相変わらず毒舌ではありますが
      憎めない一面も見せてくれますよ♪

      2012/07/05
    • HNGSKさん
      コメントとフォロー、ありがとうございます。まろんさんが面白い、と書いている本に、何冊も興味がわいています。また読んでみたいと思います。

      私...
      コメントとフォロー、ありがとうございます。まろんさんが面白い、と書いている本に、何冊も興味がわいています。また読んでみたいと思います。

      私は、トリックも主人公の素性も全然分からなかったです。「兄弟!?」みたいな感じでした・・・
      2012/08/30
    • まろんさん
      あやこさん、こちらこそありがとうございます♪

      中山七里さんは、たぶんとても几帳面な作家さんなので
      伏線部分を破綻がないよう、ものすごく一生...
      あやこさん、こちらこそありがとうございます♪

      中山七里さんは、たぶんとても几帳面な作家さんなので
      伏線部分を破綻がないよう、ものすごく一生懸命書き込んでくれていて
      私の場合は、それがかえって「アヤシイ・・・」に繋がってるかもしれません。
      でも、「兄弟?!」と驚いたあやこさんのほうが
      きっと純粋で素敵な読み方をされたんだと思います!
      なにはともあれ、岬先生の出てくる本を、中山さんには量産してほしいものです(笑)
      2012/08/31
  • 岬洋介シリーズ ②
    音大生のヴァイオリニストが岬洋介と共に演奏する。

    音大生でヴァイオリニストの城戸昌が主人公。
    貧乏学生で授業料を払うのも一苦労。
    さらに音楽家として就職するのも難しい状態。
    そんな中、理事長である名ピアニスト柘植彰良と共に
    オーケストラで演奏する機会を得られた。
    コンマスとして、演奏できれば、授業料免除だけでなく、
    オケからの演奏家としての勧誘もあるかもしれない、
    さらに、ストラディバリウスも弾ける!!
    でも、大学のストラディバリウスのチェロが盗難されたり、
    学長専用のピアノが壊されたり、殺人予告があったり…。
    一連の犯人は誰?

    犯人は、本当の最後の最後にならないと分からず、
    でも、なんとなく予想が当たってしまったので、
    前作ほどの衝撃はなかったなぁー。
    なので☆3かなぁー。
    ミステリー要素もあるんだけど、どちらかと言えば今回は
    音楽メインな感じがしたよー。

    岬さんと昌くんが避難所で演奏するシーンは好きだなぁー。
    あぁいう演奏ができるときっと、
    やりがいを感じるんだろうね。

  • 選ばれた者のみに開かれる狭き将来に対する焦燥、高みを知れば知るほど増す苦悩、音楽を通じて心によみがえる温かな思い出や人に訴えかける感情と願い…。ミステリーというより(途中冒頭にあったチェロ盗難事件を忘れかけてた…)、音楽に携わる人々の人生の物語(の一幕)。パガニーニやラフマニノフを聞きながら読み、ラストの演奏会は実際にこの目と耳で体感したいと思った。

  • 中山七里作品。3冊目。
    音大の現実の姿が描かれ、「神様」に愛される職業を目指す若者の姿に胸を痛めた。そして、「本人の魂が腐食される」姿に、最後まで諦めない”なにか”を思い描きながら、思わず声援を送っている。だから、芸術は、音楽は、文学は、絵画は心をこんなに揺さぶるものだと感じるのでしょうか。
    最後の演奏での科白「歯噛みするほど後悔した。もっとバイトの時間を削ればよかった。生活費なんてどれだけでも節約できた。もっと貪欲になればよかった…。」が、最後まで心に響いていた。
    ミステリーというよりは、青春小説に近いでしょうか。演奏のシーンが素晴らしく、CDを取り出して聴きながら読み進めると、それぞれのシーンが目に浮かび味わうことができた。

    印象的なフレーズは:
    ★キリギリスはどうしたってキリギリスだ。楽器を捨てても翅をもいでもアリに変われる訳じゃない
    ★音楽の神様は決して公平ではない。微笑むべき者には微笑むが、それ以外のものは歯牙にもかけない。
    ★人ば誰でも一度現実で夢を見る。ある者はスポーツに、ある者は文学に、そしてある者は音楽に。練習に次ぐ練習、試練に次ぐ試練。そのうち次第に自分の力量を知る。自分の手がどこまで届くのかを思い知るようになる。そして大半のものは諦めて他の道を歩き出す。しかし残された者は足掻き続けながら、ますます目指すものが遠ざかるのをじっと見ているしかない。胸に抱いた夢はそのまま膿み腐り、本人の魂を腐食させてゆく。
    ★よほどの才能と運、そしてコネがなければ音楽で飯を食っていくというのはおよそ不可能なのだ。
    ★自由ほどひどい言葉はないよ。…。何からも保護されないし何の保証もないってこと。
    ★運は努力した者にしか微笑まない。…。努力の味を知らない者は餅の本当の味にも気が付かない。努力して実力を付けたから運が転がり込んだ。
    ★選ばれた人間が選ばれた理由を考える必要はないよ。逆の場合は必要だけどね。
    ★神様に近付くには何が必要だと思う?信仰心と忠誠心よ。それさえあれば必ず神様はこちらを振り向いてくれる。
    ★計算できる未来なんて存在しない
    ★ボクはやっと知った。音楽は職業ではない。音楽は生き方なのだ。

  • 【感想】
    ・「さよならドビュッシー」の演奏シーンと音楽青春ものとしての素晴らしさに魅せられて続編と想われたこれも読んでみた。
    ・ドビュッシーに続いてラフマニノフも好きな音楽家。まあ、嫌いな音楽家ってのが少ないんやけど。
    ・前のコンクールと同様、コンサートでの演奏がメインになるのかなと思ったが避難所の体育館での二人の演奏の方がメインかもしれない。
    ・ミステリとしては、犯人とそのあらかたの動機は、詳細は不明やったけどすぐわかる。でもやっぱり演奏シーンがすごいので満足感がある。

    【一行目】
     時価二億円のチェロが完全密室の部屋から忽然と姿を消した――。

    【内容】
    ・普通の音大の学生は将来を考えると暗澹となっている。
    ・愛知音大定例の演奏会の今年学長が出演する作品はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第二番」。その周辺で事件が続きはじめる。
    ・「ドビュッシー」ほどの緊迫感はないが、人の勝手さとそれをまとめて和音にしていくこと。くじけそうになってもまた立ち上がる不屈。
    ・そして「音楽」という「生き方」。


    ▼岬洋介についての簡単なメモ(あまり意味ないかもしれないけどドビュッシーからの累積)

    【晶】城戸晶(きど・あきら)。愛知音大ヴィルトゥオーソ科の学生。ヴァイオリニストの卵。楽器はチチリアティ。「ラフマニノフ」の語り手。好きな曲はパガニーニの「鐘のロンド」。「ドビュッシー」の主人公が視覚障害のあるお爺さんと並んで岬洋介のピアノを聴いたチャリティコンサートに彼と初音もいた。初音は岬洋介をライバル認定したが、晶はただ感動しただけだった。自分でプロにはなれないだろうと思っている。とんかつ屋のアルバイトがキツく練習もままならない。授業料を滞納している。「キリギリスが駄目ならアリになればいい。ボクの選択肢なんて幾つだってあるよ」ラフマニノフp.20
    【麻倉雄大/あさくら・ゆうだい】愛知音大ヴィルトゥオーソ学科の学生。晶の友人。トランペット。
    【荒薙神社】香月家が氏子総代。
    【入間裕人/いるま・ひろと】愛知音大の学生。ヴァイオリン。音楽で食っていけると目されている。同じ学年ではヴァイオリンの一位とされている。親族に著名な音楽家がいる。オネエ言葉で話すので主要人物の一人になるかもしれない?
    【ヴィルトゥオーソ学科】愛知音大のヴィルトゥオーソ科はプロを育成するのが目的で実技優先なので教職免許が取れない。
    【鬼塚】ビアノの鬼コーチ。遥にとってピアノを弾くのがたのしくなくなる元凶。
    【お金】《財布の中身はいつも現実とワンセットになっている。》ラフマニノフp.24
    【お屋敷町】香月家がある高級住宅街。土地成金が多く住まう。
    【音楽】《ボクはやっと知った。/音楽は職業ではない。/音楽は生き方なのだ。》「ラフマニノフ」p.287
    【片桐昭】ルシアの父。
    【片桐ルシア】→ルシア
    【片桐玲子】ルシアの母。遥の叔母。
    【勝つ唯一無二の方法】《勝つまでやめない》by香月玄太郎、ドビュッシーp.44
    【加納】香月家の顧問弁護士。五十くらいの真面目そうなおじさん。
    【神尾舞子/かみお・まいこ】愛知音大ヴィルトゥオーソ学科の学生。オーボエ。クールなタイプだったが将来のことでナーバスになっている。
    【城戸晶/きど・あきら】→晶
    【城戸美由紀】晶の母。ヴァイオリニストとしてプロを目指していたが東都フィルに入ってまもなく晶を身ごもり実家の旅館で働くことになった。
    【君島有里/きみじま・ゆり】旭丘西高音楽科の生徒。遥にからむ。
    【給料】《給料の八割は我慢代だ》「ラフマニノフ」p.51
    【工藤】旭丘西高音楽科の教師。遥にそれなりに好意的。
    【香月悦子】遥をピアニストにすることに妙にこだわってる感じ。
    【香月研三】遥の叔父。漫画家志望だがうまくいかずプータロー。三十代独身。
    【香月玄太郎】遥の祖父。たいへんな資産家。脳梗塞で今は車椅子生活だが七十過ぎだがとても大きい声で怒鳴ることができる。模型作りが趣味。
    【香月徹也】遥の父。こつこつ真面目に働く普通の銀行員。支店長代理。その銀行は最近資金運用の失敗などで破綻を噂されている。口癖は「なんとかなるさ」でそれは遥にも継承されている。
    【香月遥】→遥
    【小柳友希/こやなぎ・ゆき】→友希
    【コンサート】《コンサートは音を聴くのではなく浴びに来る場所なんだと思った。》ドビュッシーp.273
    【榊間/さかきま】中警察署の刑事。
    【笹平】岬が懇意にしているスタイリスト。遠慮なくものを言う。
    【下諏訪美鈴】気性が激しく体格のいい女性。ピアノ。「ドビュッシー」では凄いショパンを弾いた。愛知音大の学生で「ラフマニノフ」にも登場。ニックネームは「プチ子・ヘミング」。親族に著名な音楽家がいる。岬洋介に言わせると「何をそんなに怯えているんだろう」。この巻では「ドビュッシー」で負けた後の彼女の成長も描かれる。
    【上手になる】《やっぱりまずは好きになることじゃないかな。どんなに頑張っても、人間は嫌いなものにありったけの情熱なんて注げられないから。》by岬洋介、ドビュッシーp.14
    【庄野】愛知音大学生課の授業料納付係。
    【新条】形成外科医師。曖昧な物言いはしない。
    【須垣谷/すがきや】教授。父親が愛知県警の副本部長。
    【涼宮美登里/すずみや・みどり】旭丘西高音楽科の生徒。遥にからむ。
    【ストラディバリウス】ヴァイオリンの最終形態を作った人物。およびこの人物が製作したヴァイオリンのこと。この楽器はそれ以降変化しておらずすべてがこのコピーとなる。製作した千二百挺のうち半分が現存するとされる。ヴィオラやチェロも少数だが製作している。
    【柘植彰良/つげ・あきら】愛知音大の理事長・学長。「稀代のラフマニノフ弾き」と呼ばれる名ピアニスト。交響楽団の指揮者もしていたが七十を越えそれは後進に譲った。
    【柘植初音】→初音
    【柘植良平】彰良の息子。初音の父。ピアニストだったが凡庸。今は家を出て音楽関係の出版社にいるとのウワサ。
    【綴喜みち子】玄太郎の介護士。通い。家政婦としても一流で今は香月家全体が彼女に依存している。酢豚の味は店に出せるレベル。
    【時坂恵/ときさか・めぐみ】旭丘西高音楽科の生徒。遥にからむ。
    【とんかつ屋の親父】晶がアルバイトしている店の社長。支店も幾つか出し成功している。晶の仕事ぶりを認めており社員にならないかと誘ってくれた。《けれど少しも嬉しくなかった。何故なら誉めてほしい才能じゃないからだ。期待して欲しいところじゃないからだ。》「ラフマニノフ」p.52
    【初音】柘植初音。愛知音大の学生。チェロ。晶の見立てでは努力すれば音楽で食っていけるだろうと思われる。いいとこのお嬢様。正確には愛知音大学長の孫娘。いちおう一人暮らしだが音大生専門の防音設備の部屋でバカ高く親が家賃を出している「電車七駅分の自立心」。シューマンの「トロイメライ」が好んで演奏する精神安定剤。ジャンルは異なるが音楽家として岬洋介をライバル視している。
    【遥】「ドビュッシー」の主人公。語り手。音楽家への推薦が決まった十五歳。
    【表情】《不幸な顔は作り易く、幸福な顔には努力が必要なのだ。》ドビュッシーp.76
    【岬洋介】王子さまのような新進気鋭のピアニスト。三十八歳独身。研三のお眼鏡にかない広小路のマンションへの入居が決まった。愛知音大臨時講師。《ただ、僕はこの悪足掻きってのが好きでね。》ドビュッシーp.258
    【宮里】テレビのワイドショーで売り出し中のリポーター。
    【家主】香月家のあるあたりではマンションの家主も多く、直接面接で入居者を選ぶ。そのせいで不審者もいないし治安維持に役立っている。
    【友希】愛知音大ヴィルトゥオーソ学科の学生。晶の友人。クラリネット。元気でめげない系のようだが就職の難しさにさすがにくじけそうだ。
    【幼稚な遊び】遥とルシアがやった「幼稚な遊び」というのはなんだろう? おそらくはああいうことで間違いないだろう。
    【ルシア】遥の従姉妹。インドネシア在住。遥の付き添いで鬼塚のコーチを受けているが萎縮してうまくいかない。本来は決して低い技量ではないが極度の人見知りなので。遥と相性抜群で好みとかいろいろ一緒なのだが性格だけは正反対で飽きがこない。インドネシア大震災の津波で両親を喪い水面が苦手らしい。

  • タイトルからして『さよならドビュッシー』の関連本だろうと、期待して読み始めました。
    岬先生シリーズ第二弾。彼が務める音楽大学で起こった、チェロ紛失事件から話は動き出します。
    今回は、ピアノではなく、ヴァイオリン科の学生が主人公。
    厳重に監視された部屋からストラディバリウスが忽然と姿を消すという密室犯罪。

    学生たちは、互いの不信にさいなまれながら、来たるべき演奏会へ向けて練習を重ねていきます。
    互いの音を共鳴させてハーモニーとしていく作業が必要な交響楽がなかなか形にならずにいるうちに、更なる謎の事件が発生。
    事件は混沌を極めます。

    前作でも感じましたが、やはり著者は、実際に演奏に携わる音楽経験者なのだろうと思います。
    愛好家レベルでは知り得ないような、細かいことまで把握している専門的情報量の多さ。
    知識はともかく、演奏に関する表現が多彩で、憧れと絶望に満ちたみずみずしさに圧倒されるばかり。
    音楽への深いこだわりがないと、とても作りえない作品です。

    演奏者の歩く時の体重のかけ方で、ヴァイオリニストの健康状態を見抜くなんて、なかなか考えつかないのではないでしょうか。

    ひとしきり流行った『のだめ』は、おもしろいもののギャグ要素が強かったため、この作品に登場する音大生のリアルさが好ましく感じました。
    音楽の道を目指す卵たち。
    その道は険しく、才能に恵まれた彼らながら、辿るのは呪われた人生かもしれないという不安に常に怯えています。

    著者の作品をこれまで2冊読み、おおよそ犯人傾向が読めてきたため、実はこの犯人は、かなり初めの時点から見当がついていました。
    犯人となる位置の人物配置傾向がなんとなく似ています。意外すぎて意外ではない人物が黒幕となるパターン。
    それでも、犯行動機まではさすがにわからなかったため、巧みに張り巡らされた伏線を後で知って、やはり巧みな構成力だと思います。

    第一弾も本作も、タイトルは最後のフレーズに込められている、ほろにがい内容を含んだもの。
    クラシック音楽という雅な世界ではありながら、商店街のとんかつ屋のおやじさんが粋で格好いいですし、ラストシーンでは『明日のジョー』を思い出しました。

    小さな引っ掛かりをすべて回収する点も、この作家の好きなところ。
    ただ、気になっていた初音の父親の件への言及はなく、本編と関係ない人物だったと最後に気がつきました。

    音楽好きにはお勧めのシリーズです。
    登場したなかで聴いたことのない曲目を、全て聴いてみたくなりました。

  • 胸のすく話ではなかったな。
    楽曲に対する表現は前作から引き継がれ、息をのむようなものだったけれど。

    幸いにして(?)私は突出した才能などない凡人だから、
    この作品に登場するような、
    持ってしまった才能ゆえにそのほかのものすべてを犠牲にしてもかまわないという感覚が理解できない。

  • 前作「さよならドビュッシー」に続いて音楽もの。

    それなりには面白かったし、前作よりは嘘くささが少なかった気はするが、相変わらずのくどい説明、しらじらしい会話など鼻につく文章が多くて、どうもあまり好きになれない。
    密室の謎もどんでん返しも読み始めてすぐ予想できた通りの結末で、前作ほどのインパクトはなかったが、前よりは音楽の蘊蓄が少なくて読みやすかった。
    それでも演奏の描写はだんだんウンザリしてきてナナメ読みしがちになり、クライマックスの演奏シーンはほとんど眺めるだけという感じに。
    あっという間に読了したのも、そのナナメ読みが多かったからかも。

    私はどうも、この著者の文章が苦手らしい。

  • 読み手からすると、犯人は少し意外かなとおもえたので、ミステリーとしては及第点かな?ただ、音楽表現が説明っぽいと感じた(音楽の素養がないせいか?)

  • 岬洋介シリーズ第2作。音大を舞台にストラディバリウスの盗難、貴重なピアノの破壊事件が発生、定期演奏会の開催に暗雲が漂う。苦学生のチェロ弾き城戸晶、稀代のピアニストで音大学長柘植彰良、そしてその孫娘初音をめぐってストーリーが進む。引き込まれる音楽エンターテインメント、秀逸な謎解き、ちりばめられた人生訓と人間ドラマ…。シリーズ制覇したい!

  • さよならドビュッシーに続く2作目。今回はバイオリニストを目指す音大生が主人公。

    前作に引き続き、音楽の表現が素晴らしいと思う。
    かなりのページ数を割いているが(というかこれがメイン?)、音楽に全く詳しくない私でも、雰囲気でどんどん読み進んでしまう。
    音楽に詳しい人が読んだらもっと生々しく感じるのかなと思うと羨ましい。少し勉強してみようかな。

    強いて言えば、探偵役のキャラクターが前作よりは薄い気もする。なんでもできる器用な人、みたいな印象。
    次回作はそのあたりが深掘りされるといいな。


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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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