知られざる鉄の科学 人類とともに時代を創った鉄のすべてを解き明かす (サイエンス・アイ新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797381498

作品紹介・あらすじ

鉄筋・鉄骨の構造物や磁性による記録媒体などにも姿を変えて、鉄は私たちの社会をあらゆる場面で支えています。
鉄と人類の関係は、太古の昔にさかのぼります。地上の多くで鉄鉱石の鉱床が発見されたからですが、そんなありふれた鉱物でありながら、硬さや性質を自在に引きだせる万能金属の側面が、鉄を金属の王様の地位に押し上げ、不動のものにしたのです。
そうした鉄の秘密を、まるごと解き明かします。

感想・レビュー・書評

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  • なんで鉄の本を読んだのか。自分でも全く分からないのですが、知られざる鉄の世界と書かれると「確かに鉄の事考えたことないなあ」としみじみ思ったことがきっかけでしょうか。
    正直化学式の部分とかはあくびをかみ殺して頑張って読みましたが、それ以外の部分は興味津々で読みました。物質として人間界を発展させてきたまさに恩人、いや恩鉄。さらに壮大な事に、生き物が生きる事が出来る星になった理由には、鉄が酸化するという作用が絶大に働いたことが分かって目からうろこがボロボロボロボロ落ちました。
    そもそも酸の海に鉄が反応して塩水の海になり、酸素過多で生き物が生きる事が出来ない大気が、地層の鉄が酸化する事によって、余分な酸素が消費され現在の大気が出来上がったなんて本当に胸が熱くなります。いいやつだなあ鉄。鉄が無いと今の生態系は無かったんですねえ・・・。
    あと知ってました?日本刀の反りはわざわざ反り変えさせているわけでは無く、製法で勝手にあの反りが生まれるらしいです。とっても不思議。

  • 2018.3.7 amazon 500

  • とても要領よく鉱物としての「鉄」の全貌がまとめられています。

     とくに鉱山資源としての鉱石の種類(赤鉄鉱とか)が参考になりました。

     あと地球は「鉄の星」で、Feという元素の性質に合わせて生命が進化している。これには驚きを隠せません。

     こういう基本文献を読んでおきますと他の文献を読むときに効率が良くなりますね。

  • 化学式の部分は理解できていないが、鉄の性質や活用など、幅広く触れられていておもしろかった。

    ■鉄の種類 
    炭素含有量が多いと、硬くてもろい。
     銑鉄:溶鉱炉でつくられた鉄で、2~6%の炭素を含む。
     鋳鉄:銑鉄に比べてケイ素が多く、マンガンはスクナ。
    炭素含有量が少ないと、鉄の純度が高く、柔らかく粘り強い。
    銑鉄を転炉で加工して炭素分を燃やし、炭素成分を少なくする。
     鋼、鉄鋼:炭素量2%以下。
     
    ■製鉄
    古代
    鉄鉱石を木炭といっしょに加熱すると、鉄鉱石(酸化鉄)の酸素が木炭の炭素と反応し二酸化炭素となって除去される。これで銑鉄相当が得られ、ハンマーで叩いて不純物を火花として叩き出し、純度を上げる。

    中世
    高炉で石炭を使って銑鉄をつくり、鋳物にした。
    コークス、石灰石、砕いた鉄鉱石を層になるように入れていき、熱風を吹き込んでコークスを燃やし、鉄鉱石を燃焼、融解させて鉄とスラグに分ける。鉄を取り出すのに炉を冷やす必要が無くか連続操業できるようになった。
    コークス(炭素C)が鉄鉱石中の酸素と反応し、一酸化炭素になる。高温の一酸化炭素はさらに鉱石中の酸素と反応し、二酸化炭素となる。こうして酸化鉄(Fe2O3)から酸素を除き、鉄Feにする。

    近代
    反射炉で銑鉄から炭素を取り除く。反射炉は熱源の炭素と銑鉄が接触しないので、炭素が二酸化炭素となって取り除かれると、純度があがり融点が高くなって粘りが出た。
    ここで板を挿し込んでこねまわし、得た鉄を錬鉄という。炭素分は0.1%程度。
    錬鉄から鋼を得るには、炭素を取り除くために転炉が使われる。転炉に銑鉄を入れ、底の管から空気を吹き込むと、空気中の酸素が銑鉄中の炭素と反応して燃焼し、一酸化炭素や二酸化炭素となって酸素を除く。この反応は燃焼のため、転炉は加熱の必要がない。

    日本のたたら製鉄は、磁鉄鉱である砂鉄を用いた。
    間接製鉄法は、還元工程(酸素を除く)と徐炭工程(炭素を除く)を分離して行う。
    直接製鉄法、けら押しとも呼ばれる、は鉄鉱石から直接鋼を得る技術で、中世では日本以外にはなかった。現代でも高度な職人技で詳細は明らかになっていない。

    ■合金
    高融点のタングステンなどを、鉄との合金にすると、耐熱合金となる。
    ジュラルミンやマグネシウム合金は、航空機や自動車の車体に使われる。

    工具鋼は高硬度鋼という合金。
    合金工具鋼:炭素工具鋼にほかの金属を添加したもの。
    高速度工具鋼:最も硬いとされる鋼で、添加物の量が合金工具鋼より高く硬い反面、もろいので欠けやすい。
    超硬合金:鉄合金ではなく、炭化タングステンに炭化チタンや炭化タンタルを添加したもの。

    ■結晶状態
    温度によって結晶構造が変わると性質も変わる。

    焼き入れ:炭素鋼を、炭素を追い出す時間を与えないほど急速に冷却すると、マルテンサイトという状態になり、非常に硬くなる。
    焼きなまし:焼き入れした鉄を加熱しゆっくり冷やすと、炭素を追い出してパーライトという状態になり、軟らかくなる。

    他にも、日本刀やダマスカス鋼、惑星誕生の過程、人体における鉄の役割など、魅力的な話題がたくさんあった。

  • 図や絵や写真が多く分かりやすい。

  • 請求記号 564/Sa 25

  • 鉄についてのあらゆることを学ぶ簡単に学ぶことができました

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著者プロフィール

齋藤 勝裕(さいとう かつひろ)
1945年5月3日生まれ。1974年、東北大学大学院理学研究科博士課程修了、現在は名古屋工業大学名誉教授。理学博士。専門分野は有機化学、物理化学、光化学、超分子化学。
主な著書として、「絶対わかる化学シリーズ」全18冊(講談社)、「わかる化学シリーズ」全16冊(東京化学同人)、「わかる× わかった! 化学シリーズ」全14冊(オーム社)、『マンガでわかる有機化学』『料理の科学』(以上、SB クリエイティブ)、『「量子化学」のことが一冊でまるごとわかる』『「発酵」のことが一冊でまるごとわかる』『「食品の科学」が一冊でまるごとわかる』『「毒と薬」のことが一冊でまるごとわかる』『身のまわりの「危険物の科学」が一冊でまるごとわかる』(以上、ベレ出版)など200冊以上。

「2023年 『「原子力」のことが一冊でまるごとわかる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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