量子力学で生命の謎を解く

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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797384369

感想・レビュー・書評

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  • 量子力学的な効果が生命現象に関与している、ひいては生命がマクロな量子力学的現象だと信じるに足る証拠をわかりやすく説明しており、非常に面白く、刺激的だ。

  • 返却期限がきたので一旦返す.4章まで読んだが,量子力学の基本構想を丁寧に説明してあるの「量子力学の中心的な謎」(P116)が良い.細胞の中はミクロの世界なので,ニュートン力学では説明できない現象があることは予想できたが,ここまで詳しく考えている科学者の存在に驚いた.

  • 難しかったが科学読み物として面白かった。生物学に量子力学が関わるというのは今まで自分になかった視点で、分子生物学の理解に厚みを持たせてくれた。適応的遺伝子変異と量子トンネル効果による遺伝子変異については、一つの仮説として面白いと思った。つまり、遺伝子がたくさん使われる環境ではDNAがRNAに多く転写され、その際に量子トンネル効果が起こりやすくそれによる変異が起こりやすくなる。それが環境に適応する変異を生み出すと。コマドリの磁場感覚についてはこの本のメインと言えるが、量子もつれ状態にあるラジカルが磁場の影響を受けやすいことを利用し磁場を感知するということであった。意識・心、生命誕生の章は今ひとつであったが、そこはまだ未解決な部分が大きいということだろう。

  • 「生物と量子力学の関連」というテーマはとても興味ある内容だが、素人を意識しすぎかエッセイのようで、話が冗長。

  • 前から謎だと(少なくとも私は勝手に)思っていた、量子力学と生命のメカニズムとのミッシングリンクをバリバリと解説してくれている本。いやあ、こういう本を探していた!

    我々の眼に見える間尺にあった物理現象のほとんどはニュートン力学で説明でき、その中にある秩序や平衡性は熱力学が作用している。そしてそれら物理現象の最小単位である原子や量子の振る舞いの法則が量子力学であり、生命は実にこの3階層をすべて貫き通す形で運営がなされているらしい。

    大半の生命現象はニュートン力学と熱力学で説明ができてしまうわけだが、それでも生命にはそれでは説明がつかない未解明な部分がある。量子力学が作用する生命現象は、生命力そもののである酵素の働きや光合成、あるいは生物が匂いを嗅ぎ取る仕組みや、渡り鳥や魚が長距離移動をする際に使う磁気感覚、そしてまだ未証明ではあるが、遺伝や生命の起源、あるいは精神活動にまで及ぶらしい。

    具体的には量子力学がもつ不気味な作用である、量子のもつれ効果(生物の磁気感覚、光合成)やトンネル効果(酵素の作用や、生物の嗅覚、遺伝)を利用して生命はその基礎的活動を成しえているらしい。

    ファインマンは「作ることができないものは、理解したたことにはならない」と言ったらしいが、現時点で人類は新たな生命を作り出せていない。なので本当の意味で量子力学と生命との関係を解明したとは言えない状態なのだろうが、この本の中でも触れられているように、原子細胞を作り出す試みは科学の最先端で続けられており、その際にはこういった量子生命学の発展を必ず経て人工生命は作り出されることになるのだろう。今後の発展が楽しみな科学分野である。

  • 光合成などの生命の謎を量子力学で説明できる!ということに感動。今まで腑に落ちなかった疑問点が了解できたことにも感動。

  • 量子力学から生物学の謎を解くという取り組みは大変に興味深い。
    仮説であると断っている部分も多いが、妥当性は決して低くないと思う。
    学術的な良心に基づいた、この分野の入門書だ。日本人でも量子生物学の研究者はいるのだろうか。
    2014年に原著が出ているが、2013年までの論文が引用されている。引用文献リストも末尾に付されている。

    量子力学と言っても、トンネル効果、波動の重ね合わせ、量子もつれ、スピン、そして、コヒーレント状態など基本的な概念の適用で説明される事象ばかりであり、それらの概念も本書で丁寧に説明されている。渡り鳥などの磁気コンパスや光合成、魚や昆虫などの鋭い嗅覚、遺伝子の忠実な複製、遺伝子の突然変異への疑問などの解明(7章まで)は成功していると思うが、8章・心、9章・生命の起源はあくまでもアイデアに過ぎないが面白さはあった。

    個人的には、生物学では生命の始まる可能性が限りなく0に近いという説明が多く難問であったのが、量子力学的観点(量子コンピュータの設計概念の元になっている、重ね合わせの原理)の適用(第9章 生命の起源)で、見事、筋道が通ったことに特に驚きを感じた。

    生物学的なマクロのスケールにミクロのスケールの量子力学が適用されうるかについては、適度なノイズが必要、という仮説の提示があった。

  • 量子もつれ

    いったん一緒になった粒子同士は、互いにどれだけ遠くに引き離されても、原理的にずっと結びついている(同じ量子状態の一部をなしている)為に瞬時にコミュニケーションが取れる。これを非局所的に結びついているという。



    量子の世界で、粒子が同時に二つの事をし、壁をすり抜けたり、不気味なつながりを持ったりと奇妙な振る舞いができるのは、誰にも見られていない時だけ。ひとたび観測されると、身の回りに見える物体と同じように振る舞うようになる。



    ハキリアリは体重の30倍の重さを運ぶ事ができ、アギトアリは顎を0.13ミリ秒で速度ゼロから時速230キロまで加速させる。F1カーの4万倍早い。電気ウナギは600ボルトの電気を発生させる。



    人間の死の前後で体重を計ると、魂の重さは約21グラム。



    シュレーディンガーの波動方程式は、特定の瞬間における電子の正確な位置を示すのではなく、もし観測した場合にその電子がそれぞれの位置に見つかる確率を表すもの。



    生化学反応は本来あまりに遅い。だが、我々の細胞の中にある酵素は、細胞内の何兆個という生体分子を絶えず何兆個という別の生体分子へ変換する事で我々を生かし続ける「代謝」というプロセスを1兆倍加速させている。



    クマは犬の7倍以上の嗅覚を持ち、20キロ離れた場所にある動物の死骸を嗅ぎ取る。蛾は10キロ離れた交尾相手を見つける。



    ゲーデルの不完全性定理

    複雑な論理体系には必ず根本的な限界があり、その法則を適用させて作る事のできる真の命題の中には、もともとそれを作る時に使ったのと同じ法則では証明できないものがある。



    イオンチャンネル

    脳の中で情報を運ぶ活動電位(神経信号)の伝達に携わる、神経情報処理の中心的役割。長さは1.2ナノメートル(10億分の1メートル)、幅はその半分以下なので、イオンは一列になってしか通れないが、1秒間に1億個出入りしている。また、選択性が高く、カルシウムを細胞内に入れる役割を果たしているイオンチャンネルは、たとえカルシウムイオンより小さいナトリウムイオンでも、1万個あたり1個ほどしか通さない。



    イオンはチャンネルを通過する際に、非局在化して広がり、粒子というよりもコヒーレントな波動になる。また、極めて高い振動数で振動するので共鳴が起こり、周囲のタンパク質にエネルギーが移動する為、イオンの運動エネルギーを半分ほどに下げ、冷却される事でデコヒーレンスが食い止められ、イオンの非局在量子状態が維持されて、チャンネルを通した量子輸送が促進される。



    エネルギーと質量を等号で結びつけるアインシュタインの方程式E=MC2 は、エネルギーと物質が互いに交換可能である事を明らかにした。



    科学三大謎

    宇宙の起源、生命の起源、意識の起源

    これらは量子力学で解明できるかもしれない。



    スタンリーミラーは、瓶の中に、水、気体、メタン、水素、アンモニア、水蒸気を入れ、その中で電気スパークを発生させたところ、タンパク質の構成部品であるアミノ酸がかなりの量生成された。



    北欧のコマドリは、量子もつれ状態の針を備えたコンパスに導かれて大西洋を渡る。一回毎の羽ばたきは、筋肉繊維の収縮によって駆動され、そのエネルギーは呼吸酵素の中で電子と陽子が量子トンネル効果を起こす事で供給される。匂い分子が漂い、コマドリの鼻孔内の嗅覚受容体に捕らえられ、量子トンネル効果によって神経信号が発せられ、それが量子コヒーレント状態にあるイオンチャンネルを介して脳に伝えられ、近くに柑橘類の花が咲いている事を知る。

  • 量子力学は一般的に絶対零度で立ち現れる筈だが動植物の生命活動に量子化学が大きく関わってくる事を示唆する驚愕の著書。

    生物の細胞内はドロドロの生暖かい状況であり直観的には熱力学的支配と考えられる。19世紀までは生命体は複雑な反応を行う化学工場と考えられていた。ただ余りにも複雑な反応を統制している厳選がわからなかった事を「死」とは何を意味するのかは熱力学ではわからない。

    シュレディンガーは1943年に生命とは量子力学に依存しているに違いないと予言していた。賢いな。
    様々な研究、基礎知識が散りばめられており、生命の維持は熱力学のマクロのノイズを利用し量子反応のコヒーレンスを維持しているらしく、またそのノイズをうまく生かすには我々の体温が最適な状態であるという驚愕の事実を伝え、様々な示唆と謎を残したままこの本は終了する。

    ファイマン先生の仰るとおり「作れないものは理解した事にはならない」のだろうし、これからも注目していきたい分野。個人的にはKindleでも購入しても良いと思える良書中の良書

  • 非常に分かりやすい比喩を用いて量子生命学について書かれている。とは言っても内容を理解するのは結構大変で、集中して読みながら、不明なところは他の本やネットで調べていかないとついていけない。もっともそれは私が文系だからかもしれない。 これからさき、何度か読み直すとより理解が進んでいくような気がする。

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